スバリ岳BC    2752m 長野・富山県        
      

2013517日(金)

 先日立山で遊んだ際に、黒部平から眺めた針ノ木岳からスバリ岳、赤沢岳にかけての稜線は、屏風の如く聳えて圧巻の迫力があった。昨年はこの山域の盟主、針ノ木岳の頂きに立っているので、今回はその隣のスバリ岳に登ることにした。この山は地味だが、日本百高山の80番目の山でもある。

 それともう一山。余裕があれば、スキーの機動力を活かして蓮華岳にも足を伸ばして大沢右俣を滑ると欲張った計画を立ててみた。その結果は。。。己の体力を過信した完全な計画倒れ。スバリ岳だけで力尽き、蓮華岳にはたどり着けなかった。体調が余り思わしくなかったせいか、グサグサの腐れ雪にラッセルを強いられ消耗が激しかったためか、はたまた寄る年波には勝てなかったということか、いずれにせよ少し悔いの残る山歩きとなってしまった。

 今日は長丁場なので早出をしようと午前
5時前に扇沢に到着。平日とあって無料駐車場は閑散としている。いつものように朝食をとりながら身支度を整えていると、隣に若者が軽トラで乗り付けてきた。彼も針ノ木岳を目指すとのこと。てきぱきと支度をしてスキーを担ぎ先に出発していった。

 後を追って私も車を後にする。足元はスニーカーで軽快だが、スキーとステップインしたブーツも背負っているので肩にした荷がずっしりと重い。



              登山届けを出して出発                       青い空に白銀の峰が眩しい


 6
15分、登山口のポストに登山届を投函して歩き始める。最初のうちは登山道を歩いて見たが、残雪がある上、頭上の枝にスキーが引っかかって始末に悪い。遠回りになるのを承知で、林道を歩くことにする。

 昨年は右岸沿いに登行したので、今回は夏道のある左岸を試してみた。夏道の登山道にはトレースも無く、あったとしても汚れた残雪でわかりづらい。確信を持って歩けたのは最初のうちだけ、しばらく進むうちにルートを見失ってしまった。


         そのうちブッシュに捕まる羽目に                   滑るつもりだった大沢右俣はきれい


 やっかいなのは頭上の枝。背負った板が引っかかって何ども仰け反る。そのうち密度の濃い藪に行く手を阻まれるようになってきた。スニーカーも限界だ。融けた雪が浸水してきたのでブーツに履き替える。

 不思議なことに
GPSを見る限り、ドンピシャで夏道の上にいるはずなのに、目の届く範囲に藪の切れ目は無い。右往左往して無駄に体力と時間をロス。埒があかないので藪を漕いで見晴らしの良い枝沢に降りてみた。見当をつけて少し下ると果たして夏道らしき切通があった。


蓮華岳とその稜線、大沢小屋が見えてきた


 やれやれと安心したのも束の間、残雪でまたもや道をロスト。行ったり来たりしながらようやく大沢小屋に到着した。結局
4km弱の道程に2時間もかけてしまったことになる。素直に右岸を行けば良かったと後悔するも後の祭り。

 何はともあれ、これでようやく背中の重荷から開放される。シール歩行に切り替えて針ノ木雪渓の登行開始。最初のうちは緩傾斜で雪も程よく締まって歩きやすい。しかし雄大な雪渓だけに、いつまで経っても景色は代わり映えしない。


            人の気配のない大沢小屋                          やっと雪渓が歩ける


 我慢して歩いて行くと左にドッグレッグする手前、沢幅が狭くなった辺りで累々とデブリが出来きた。前日のものと思われるシュプールは巧妙に荒れた雪面を避けている。やがて雪渓の奥が見渡せるようになってくると、ずっと先に単独を発見。どうやらツボ足の登山者のようだ。


             デブリが出て来た                     振り返ると意外に登ってきているのに気がつく


 気温もかなり上がっているようで額の汗が止まらない。ようやく
2200m地点。針ノ木峠との分岐だ。単独氏は針ノ木岳に向かって直登している。私はマヤクボのコルへ向かって右に舵を切る。


針ノ木岳


 上部はかなり急になっているので進退極まる前にと、早いうちにアイゼン歩行に切り替えた。ここからが苦難の始まりだった。東面で太陽の光を真っ向から受けているせいか、雪面がグサグサに緩んで一歩々々が足首から脛までもぐってしまう。斜度もどんどんきつくなってきて、汗が額から途切れることなくポタポタと滴り落ちる。

 コルよりも山頂により近い雪渓上部を目指したので、傾斜はどんどんきつくなって膝を前に出すと雪面につきそうだ。
50度くらいはありそうな感じ。

 暑いし、ガス欠だしで、もうヘロヘロ状態。いよいよ辛くなったので雪渓歩きを断念して最寄りの岩稜に逃げた。這松を漕いでスバリ岳に通じる夏道に出ると、スキーを担いだ若者がちょうど登ってきた。彼はスバリ岳への山頂には向かわず、すぐ上の雪渓最上部からボーダーの仲間と共にマヤクボ沢を滑り降りていった。私の方はあくまでもピークハントが主目的なので痩せた稜線をしばらく歩き続ける。



滑降直前のスキーヤーとボーダー、後で私もここからドロップした


 11
50分、雪壁を乗り越えて2752mのスバリ岳山頂に立った。360度遮るもののない頂きだ。立山や薬師岳等、先日散々遊ばせてもらった山々の眺めが素晴らしい。予定した時刻からは大幅にビハインド。その上消耗も激しいので躊躇することなく蓮華岳は断念することに決めた。


立山、剱岳をバックにしたスバリ岳



              黒部湖をバックに                                針ノ木岳



           後立山連峰へと続く稜線                           蓮華岳、次回こそ


 再び先ほどの雪渓最上部へと戻る。このドロップポイントは上部の傾斜は緩いがその下が急に落ち込んでいるのでちょっと怖い。
1235分滑降開始。かなりの急斜面、それでも何とかターンが繋げられそうだが、疲れた足にはしんどい。一旦コル方向に逃げてから少し傾斜の緩くなるマヤクボ沢の中央部を滑り降りた。


上から続く正面のシュプールが私


 雪質はザラメを通り越して重湿雪。標高が下がるほどにスキーの取り回しが重くなってきた。それでもやはりスキーは楽だし、早い。何度か立ち止まって息継ぎをしながら、どんどん下って行く。デブリは、トラバースで逃げたり、荒れた雪面を無理やり越えて反対側のきれいな斜面を滑ったり、だましだまし下って行く。


           デブリ帯をやり過ごし、                               大沢の堰堤


 あっという間に大沢小屋まで降りてきた。右岸をトラバースして堰堤を越えた後はひたすら、篭川沿いのトラバース続きで太腿の試練。雪面の散乱物も多く、地雷を踏まないように気をつけながら雪の切れるところまで下降してお楽しみは終わり。ここで再びスニーカーに履き替えて、テクテクと扇沢を目指して歩く。


            トラバースを終えて、、、                      スニーカーに替えて林道歩き


 途中猿の群れに遭遇、彼らに見送られながら歩き続け、午後
2時に車に帰着した。今日は久々に消耗して計画未遂に終わったが、中身の濃い、それなりに充実した山歩き&スキーが楽しめたので良しとしよう。蓮華岳の大沢が滑れなかったのは心残りだが。。。



行動時間  8時間50

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