白砂山  群馬、長野、新潟県 2140m  二百名山 
 

2011615

 狭心症の治療を受けて一週間目の再検診、心電図と血液検査の後、主治医から説明があった。手術経過は順調であり、平常通りの生活に戻ってよいとの有難い診断結果であった。しかも水分をきちんと補充してさえすれば、登山をしても構わないのだと。ブラボー!こんなに早く山歩きが再開できるとは本当に嬉しい限りだ。

 自分へのご褒美ではないが、病院から
ICI石井スポーツへ直行し、どうしても足に合わず毎度辛い思いをしている登山靴を買い換えることにした。いつも自己流の判断で、かつ安価な靴を選んでいたのだが、痛い靴はもう懲り懲り。今回は謙虚にベテラン店員さんに相談に乗ってもらうことにした。店員さん曰く、足指の痛みを訴える人は、例外なく大き過ぎる靴を履いているとのこと。確かにこれまで、サイズにゆとりのある、やや大きめの靴を好んで買い求めていたのだった。このゆとりが災いして靴の中で足が動くことが、痛みの原因だと指摘された。私の場合、いつも左足にダメージが出るが、それは左足のサイズが右足より小さいためらしい。実際に計測した結果、そうであることがはっきりした。店員さんの奨めに従い、今度は足先から足首までしっかり編み上げるタイプにした。少しきつい位に足にぴったりフィットする靴と、土踏まずを持ち上げて足裏をがっちり固定する中敷を購入した。

 そして、その翌日は梅雨の貴重な晴れ間。ドクターの
OKが出たことでもあるし、速攻で山歩きを再開することに。とは言え新装なったマイハートと足回りに不安が全く無いわけではない。比較的標高差が少なく行程の楽そうな白砂山をお試しで登ることに決めた。

 久しぶりの山歩きが嬉しくて夜中の
1時には目が覚めてしまった。まるで子供の遠足のようだ。ちょっと早いと思ったが2時前には自宅を出発、朝5時過ぎに野反湖のダム近くの駐車場に到着した。他県ナンバーの車が2台あったが、釣り客らしい。

 車内で朝食を済ませ
5時半に車を後にする。最初は心臓に負荷をかけないようにゆっくりしたペースで歩く。良かった。胸の苦しさや違和感は全く感じられない。少し早目のペースで歩いて見たが、さほどの息切れもせず、治療効果を実感できたのだった。白樺林の新緑を楽しみながら高度を上げていく。しばらくすると野反湖が眼下に望めるようになってきた。背後には立派な山容が次第に大きく聳えてきたが、これは岩菅山だろうか。樹林帯が続くので展望はあまりよろしくない。地蔵山はいつの間にか通り過ぎてしまった。


            駐車場わきの登山口                         新緑のなかをゆっくり登る



             ハンノキ沢出会い                           岩菅山が次第にズームアップ



                水場への案内                             野反湖を振り返る


 右手方向から八間山からの尾根が迫ってきて合流したところが堂岩山だ。山頂には、ぼろぼろになった標識があった。この先から展望は大きく開け、行く手には白砂山が聳えている。しかし、ここから見えているピークが山頂かと思ったがそうではなかった。実際の頂きはまだもう少し先にある。稜線にはちょうど見ごろの石楠花が咲き乱れていた。シラネアオイやイワイカガミなども、そこかしこに咲いていて、いかにも初夏の山らしい。足元から空に目を転じると予報に反して天気は高曇りである。すっきりした青空でないのが残念だが、それでも眺望は素晴らしい。それに直射日光で暑い思いもせずに済むので助かる。朝が早いせいか稜線上の登山道は、両脇からたっぷり朝露を含んだ笹に覆われている。おかげで下半身がびしょ濡れになってしまった。白砂山の頂には出発から
2時間50分かけて到着。

 ここは期待していた以上の素晴らしい大展望台だった。地図を片手に特徴のある苗場山を起点にして峰々の同定を試みてみる。苗場山の左にあって一番近い山は、これといって特徴の無い佐武流山、少し遠くには均整のとれた美しいピークを持つ鳥甲山、その左には迫力ある岩菅山が見える。ロープウェイの山頂駅らしき人工物がある山は草津白根山だろう。北東方向には、谷川連邦や巻機山などを望むことができる。岩菅山の背後にある雪山は妙高方面だろうか。


            まだ雪が残っていた                           堂岩山の山頂標識



白石山への稜線



 八間山への分岐                   稜線上のシャクナゲ


最後のひと登り                     無残な頂上標識


苗場山と佐武流山


岩菅山と背後に聳える妙高連峰?


 山座同定を楽しんだ後は課題の下山だ。靴の紐をしっかり縛りなおして再び稜線を戻る。わずかな時間しか経過していないのに笹はすっかり乾いていて、今度はズボンを濡らさずに済んだ。堂岩山のすぐ手前が、八間山への分岐点だ。八間山への道は往路と違って明るく開けているので気持ちが良い。振り返れば、白砂山が斜め横から見るアングルに変化していて山容全体を見渡すことができた。ここで本日初めてハイカーとすれ違った。私同様、単独の親父ハイカーだ。胸に大きな一眼レフをぶる下げていた。

 一旦下りきったところは標高約
1800m、ここから標高1935mの八間山へと登り返していく。また一頻り汗をかいて山頂到着。ここも素晴らしい展望台が。八間山の頂には声高く話をしている中高年ハイカーが数名いて、これまでの静寂が嘘のようだ。皆さん写真撮影にも余念がない。聞いてみると白砂山まで足を伸ばす人はいないようだ。野反湖湖畔と八間山を結ぶ道は、手頃なハイキングコースになっているらしい。山頂直下にある分岐から「キャンプ場」方面へと下る。素晴らしい新緑を思う存分堪能しつつ緩やかに下山を続け、駐車場には1210分に帰着した。


           シラネアオイ                 のんびりした八間山への道


白石山を振り返る



        八間山への稜線                     八間山より白砂山


草津白根山



新緑と野反湖


 今回の靴選びは大成功だったようだ。いつも悩まされている足指の痛みは全く無かった。それに息切れがなかったせいか、酸素が十分に補充されて足の疲労感も少ない。これまでの私は言って見れば、燃料パイプの詰まったエンジンとサイズの合わないタイヤを履いたポンコツ車のようなものだった。体のあちこちに無理な負担をかけながら気息奄々、山道を登り下りしていたのだ。とは言え、今日はかなり楽ちんなコースだったので、本当にチューンアップできたと思うのは早計かもしれない。ともあれ、がたのきた私の体でも、まだまだ山歩きをやれそうだと少し安堵するとともに、再び大自然の中に身を置くことのできる幸運と医療の進歩に感謝したのだった。

行動時間  6時間40分
歩行時間   6
時間

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