茂倉岳   群馬・新潟県 1978m          
 

2019年10月2日(火)

 まだ登頂を果たしていない山は、文字通り山ほどあるが、谷川岳や丹沢など比較的近場の山域は殆ど歩き尽くしたと思っていた。しかし、地図を隅から隅まで改めて眺めてみれば、主稜線から外れた地味なピークやアプローチに難があるコースは手付かずのまま残っていることに気づく。

 先日、謙信ゆかりの道を歩いた際、眼下に見えたうねうねと下る蓬新道もそんな道。土樽起点のコースは、どこも思わず敬遠したくなるような長い道程なのだ。今回はそんなタフな道にチャレンジ。紅葉狩りがてら茂倉新道から、茂倉岳、武能岳を経由し、蓬新道へと周回してみることとした。

 土樽PAの近くにある登山者駐車場は今回で二度目。前回、駐車場に帰着したとき100台収容という広大なスペースに置かれていたのはポツンと私の車だけ。今回も同様、先着の車は一台も無く、帰着時に辛うじてもう一台駐車していただけという寂しさだ。私のような物好きを除き、登山客の多くは機械力のおかげでお手軽に山頂を踏める土合に流れてしまうのだろう。

 5時35分スタート。のっけから胸を突く急登、しかも粘土質の滑りやすい道だ。呼吸を乱さないペースを維持して登って行く。今回私の手首には増税前の駆け込みで購入した新たなガジェット、最近流行りの活動量計が色々とモニターしてくれている。


滑りやすい急坂が続く


 時折心拍をチェックすると何と130から150の間を前後し、時には150を越えていることもある。150拍は計算上、私の年齢では最大心拍数。運動強度100%だ。最適燃費の推奨心拍数は110以下だが、それでは余りにスローペース。呼吸はさほど乱れていないので、当初のペースを維持することにした。

 茂倉新道は、ともかくこれでもかと急坂が延々と続く。関越の走行音が遠のくにつれ、樹木の間から谷川岳主脈の峰々の頂が次第に存在感を増してくるのが救いだ。


谷川岳が元気をくれる



紅葉がぼちぼちと


 矢場ノ頭まで来るとさしもの急登も一段落。森林限界を抜け出た稜線漫歩となる。避難小屋を過ぎれば山頂は手の届く距離だ。9時5分、茂倉岳山頂に到着。相前後して中年のトレラン氏が登ってきた。彼は土樽から蓬峠を経由してきた由。平標山まで主脈縦走するとのことで、休む間もなく一ノ倉岳へと向かって行った。私も軽く燃料補給をしただけで先へと進む。


急登が一段落 進行方向がちょうど逆光



これが見たかった






茂倉岳避難小屋




一ノ倉岳から谷川岳方面


 稜線の西側は、色鮮やかな紅葉と緑のパッチワークが美しい。栗駒山など、東北の山の全山紅葉も素晴らしいが、斑模様の紅葉も捨てがたい良さがある。



武能岳を望む






茂倉岳を振り返る



武能岳山頂には大勢のハイカー


 10時35分、武能岳に到着。先行の団体さんが狭い頂を占拠していたので、少し先まで進み、そこで小休止。行動食で二度目のエネルギー補充を行う。武能岳からは気持ちの良い草原状の道。30分ほどかけて蓬峠まで下った。


蓬峠へ



 ここからは愈々未知の道。蓬新道は山腹の左を延々と巻くトラバース道だった。左下りの片流れが長く続くのが実に足に堪える。それに加えて耐えがたい暑さ。救いは小沢をいくつも横切って行くので、水場がそこかしこにあること。帽子を水に浸して被ると頭もすっきり、足取りも軽くなる。


蓬新道は片流れのトラバースが延々と続く



東俣沢出合いの渡渉点



秋色深まる林道歩き 越えてきた峰を振り返る


 東俣沢出合いを渡渉してほどなく林道に出た。駐車場到着は13時45分。今日は紅葉を堪能できたし、貴重な心拍データも得られ満足の一日だった。


行動時間 8時間10分


全身持久力の考察

 運動強度を把握する上で重要な最大心拍数の計算式(220-年齢)は良く知られているが、この理論的根拠は余り明確ではないらしい。数多くの標本の散布データから近似した計算式は、男性の場合、「最大心拍数=210-0.7*年齢」とした方ががより正確との説がある。この式によれば私の最大心拍数は160とやや高めとなる。

 散布図を眺めると、同じ年齢でも個人差が極めて大きいことがうかがえる。例えば下図に示す通り、同じ70歳でも上は180、下は140と大きな開きがある。要は自分がこのどこに位置しているかがポイントとなるのだ。

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出典 Journal of the American College of Cardiology

 自分の正確な最大心拍数が知りたければ、負荷をかけて心拍数の限界を測定することになるが、それほど追い込むのは年寄りにはどだい無理な話。しかし今回の茂倉岳で分かったことは、実感的にも余裕を残した状態で心拍数が150拍前後を記録したこと。つまり私のリアルな最大心拍数は計算上よりも上、つまり近似式の上側にありそうだということ。

 またもう一つの全身持久力の指標として最大酸素摂取量VO2Maxというものもある。これも本格的に計測するとなると大ごとだが、心拍数から簡易的に計算する方法もある。

 最大酸素摂取量(VO2max) = 15 ☓ 最大心拍数 ÷ 安静時心拍数(ml/Kg/min)

 この指標も最大心拍数が変数になっており、かつ分母は安静時心拍数。この数値が低い、所謂スポーツ心臓であればVO2Maxはダブルの効果で増大することになる。私の場合、安静時心拍数が53前後と低い方なので、VO2Maxは凡そ42と年齢不相応にかなり酸素摂取能力が高いという結果になった。ちなみに60歳代の男性平均値は33とのこと。

 これだけで判断するのは早計だろうが、古希を過ぎ、身体のあちこちにガタが生じていても元気に山歩きを続けていられる理由の一つかも知れない。ヒトの安静時心拍数は正規分布を示し,全体の中央値は 68拍 /分,これをどれほど下回れるかは、後天的な要素があるにしても遺伝的な側面が大きいらしい。ステントを一本埋め込んだにも関わらず、健気に働き続ける強い心臓を与えてくれた亡き両親に感謝せねばとこの歳になって改めて思う。


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