2017年5月14日(日)
日本百高山完全制覇まで余すところ7座。今年中に何とか全山クリアしたいと思っている。その皮切りは、これら7座のうち、最も標高の高い立山の龍王岳。群馬のKさんをお誘いすると、二つ返事で同行して頂けることになった。但し、龍王岳北面ルンゼ滑降、雄山から御前谷、黒部湖まで標高差1500mの滑降というカウンタープロポーザル付き。相変わらず、楽なBCはさせてくれないお方なのだ。
抜ける様な青空の扇沢
午前7時30分、扇沢始発の関電トロリーバスで黒部ダムへと向かう。慌ただしくダムを横断し、ケーブルカーからロープウェイへと乗り継ぐ。ゴンドラでは右端に陣取り、御前谷からタンボ平への尾根乗越地点をつぶさに観察した。藪だらけだった昨年とは比べ物にならないほど雪が付いていたので一安心。
大勢の観光客やスキーヤーでごった返す室堂で早速身支度を整える。9時10分、ハイクアップ開始。室堂から龍王岳への夏道は、浄土山経由か、一ノ越から稜線伝いの2ルートあるが、残雪期の今、コース取りは自由なので、祓堂から沢地形の中を一直線に龍王岳を目指すことにした。
雄山を正面にハイクアップするKさん
雲一つない青空の下、広大な雪原には大勢のスキーヤーや登山者が、まるで砂糖山に群がる蟻のごとく頂きを目指している。私もその中の一匹だ。
一ノ越へ向かう人達 まるで蟻の行列のよう
祓堂から龍王岳へ向かう
標高2700mを越えたところで沢地形を抜け、稜線に出た。私は股関節に優しくないトラバースを嫌って浄土山南峰に寄り道。南峰をトラバースしたKさんは、一足先に龍王岳との鞍部に着いていた。
鞍部から見上げる北面ルンゼはまるで崖のようだ。斜度は40度以上とか。不安と緊張感が高まる。上から見下ろして私の実力を越えるようなら潔く回れ右、御山谷カールを滑るだけに甘んじることにしよう、、、と弱気の虫が頭をもたげてくる。
龍王岳 北面ルンゼは崖のよう
龍王岳は道の無い山と聞いていたが、雪の消えた岩稜には明瞭な登山道があった。ここをシートラで登る。兼用靴はまるで不自由なギブス状態。毎度のことながら石だらけの道は歩き難い。スタートしてから1時間50分で標高2832mの龍王岳山頂に到着。これで残る百高山の一つが目出度くクリアできた。残るはあと6座。
登山道には雪が無い
無残に割れた山頂標識
記念写真を撮ったら愈々滑降準備。山頂からルンゼを恐る恐る見下ろすと急斜面には違いないが、不思議なもので何とか行けそうな気がしてくる。上から目線効果で、どうやら弱気の虫は退散したらしい。
上から見ると大したことない これなら行けそう
山頂に二本突き上げている雪渓のうち、スキーヤーズライトのルンゼを滑降することになった。まずKさんの模範演技。山頂から一旦雪渓最上部の右端に移動してから滑降開始。Kさんは、ジャンプターンを繰り返しながら見る見る視界から遠ざかっていった。
雪の状態を慎重に確認する切り込み隊長のKさん
滑降開始
安全地帯まで滑り降りたのを見届け、私も続く。斜度はきついが、雪質は適度に締ったザラメで滑りやすい。スラフの発生も無い。おかげで何とかターンを繋ぎながら御山谷カールの上部へと無事滑り降りることができた。
山頂からドロップする私
同上
ここからカールへ滑り込むが、底まで降りずに途中から舵を左に切ってトラバース気味に稜線へと向かった。途中でシール登行に切り替え、僅かな登りで一ノ越に到着。
御山谷カールを滑るKさん
御山谷カールを滑る私
山頂を見上げると例年通り、登山道には殆ど雪が付いていない。一ノ越から雄山への標高差300mは、いきなり標高2400mに連れてこられ、高度順応が十分に出来ていない体にとっては辛い登りだ。それに耐えがたいほど、歩き難い兼用靴。息が乱れない程度のゆっくりしたペースで1時間かけ雄山山頂に立った。
一ノ越を後に雄山山頂を目指す
社務所が見えてきた
少々遅れ気味のKさんを待つ間、まだ未体験の山崎カールの様子を観察する。広大なバーンを何人かのスキーヤーやボーダーが気持ちよさそうに滑り降りて行った。この時間の西面は、適度に雪面が緩んでいるようだ。
山崎カールを見下ろす
御前谷には既にシュプール
剣岳方面
山頂の社に参拝を済ませ、二度目の滑降準備。1時40分、山頂を後にする。御前谷には既に何本かシュプールが刻まれていたため、無垢の右側斜面に移動する。陽光をたっぷり浴びた東面は相当に腐っており、新雪でもないのにスキーがずぶずぶと深く潜ってしまう程。おまけに私のスキーカットで湿雪雪崩が発生し、どこまでも盛大に落ちて行った。
御前谷を俯瞰
右側から御前谷に滑り込む
龍王岳をバックに滑る私
雪はグサグサ
自分の起こしたデブリの横を滑る私
重過ぎる雪にターンは大仕事。常に雪崩を警戒しながら滑り降りるのも煩わしい。昨シーズンが余りに快適だっただけに、この天と地ほどの落差はとても同じ谷とは思えない。加えて、広い谷中、至る所デブリだらけ。時にはモナカもあったりして、大腿四頭筋が悲鳴を上げている。快適とは程遠い滑りだが、いつも好条件に恵まれる訳ではない、時と場合によって山スキーとはこんなものと達観し耐えるしかない。
雪面はデブリで荒れている
2180mの支尾根越えポイントまで下った後は、トラバースが延々と続く。タンボ平を隔てる支尾根に立つ送電線鉄塔がようやく見えてきたところで、先行者は急斜面を登り返している。せっかくなので、このトレースを有り難く使わせてもらうことにする。昨年はもう一つ先の支尾根までトラバースを続けたが、その方が登り返しは短くて済むようだ。
支尾根越えポイントへ滑り込む
最上段のトラバースが正解
登り返し地点からタンボ平へはブッシュも疎ら、雪面も良く締まったザラメでようやく滑りを楽しめた。タンボ平に降り立つと、今度は一面の縦縞。洗濯板の上に載せられ、再び太腿の試練の始まりだ。
タンボ平を俯瞰
タンボ平へ滑り込むKさん
タンボ平へ滑り込む私
位置確認をこまめにしながらダムへと向かう
黒部平駅を左に見送ると、今度は濃密な藪に突入。雪面には落ちた枝が無数に散乱しているので踏まないように慎重に下って行く。雪が途切れて若干の登り返しを強いられたりと、最後まで気が抜けない。黒部湖畔の歩道に出てからはシートラ。午後3時30分、黒部ダムを渡り切ったところで今回の百高山ハントBCは無事終了した。
行動時間 6時間20分
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