蓮華岳BC  長野・富山県 2799m       
   

20164月20日(水)

 アルペンルートが開通したので、3年越し宿題の蓮華大沢を滑りに扇沢へと向かった。春の針ノ木雪渓はこれで4回目となる。過去3回はいずれも5月中旬。しかし寡雪の今年は雪がもちそうになく、例年よりひと月も早い訪問となった。

 午前
65分、スキーを背にして無料駐車場を後にする。登山届けを提出し、林道をショートカットする登山道に入るとすぐに雪道となった。再び林道に出ると一旦雪が消えるが、それもせいぜい数百メートル。夏道との分岐からすぐに雪が連続するようになる。


           登山口からすぐに雪道                        夏道の分岐から先は雪が続く


 放射冷却のせいか、雪面はよく締まっており、シートラーゲンでさくさくと進む。籠川の右岸を
50分ほど歩いて大沢との出合いに着いた。大沢の上部を観察すると、少なくとも見える範囲の雪面はデブリも無くきれいなものだ。斜面には沢を直登する二人の姿が見えた。


大沢出合い



針ノ木雪渓の様子 もう割れている


 標高
1800m辺りで陽も当たりだし、少し雪が緩んできたのでシール登行に切り替えた。歩き始めから2時間20分でマヤクボ沢との分岐に到着。シールのままでも行けそうだったが、雪面が若干硬いので念のためアイゼンに換装。ところが前回越後駒ヶ岳では良好だったCampTec対応アイゼンがまたもや不調に。10歩も歩かないうちに外れてしまい、それも何故か左足だけ。何度セットし直しても同じで完全にお手上げとなる。


デブリ帯



爺ヶ岳を振り返る



針ノ木峠への登り



峠から槍穂高を展望


 仕方なく左足は諦め、右足アイゼンのみのキックステップで針ノ木峠を登り切った。針ノ木峠から蓮華岳へはこれまで以上に急な雪壁を登らねばならない。アイゼンの前方ストッパーがブーツのこばにがっちり嵌るようにガムテープで応急処置し、これで何とかクリア。この
Tecアイゼンには本当に泣かされる。シビアな状況だったら命にかかわることなので今回限りでお払い箱にするつもりだ。


蓮華岳へと続く稜線の急登



針ノ木岳とスバリ岳



針ノ木峠を振り返る 左手の針ノ木谷滑降は次の宿題


 なだらかな稜線に出た後は、
360度の大展望を満喫しながらの稜線漫歩。蓮華岳到着は1120分。扇沢から5時間15分かかった。山頂で休んでいるとボーダーのカップルが大沢を詰めて登って来た。朝方、大沢出合いから見た連中だ。大沢の様子を聞くと「ノドの部分には雪塊があるが大したことは無い。それより雪が緩んでいないのが心配」とのこと。


              稜線に雪は少ない



蓮華岳 大沢を登るボーダー二人の姿が見える



蓮華岳山頂到着


 時刻は正午前。しばらく待機すれば多少は緩むかも知れない。しかし、せっかち男の哀しさ、じっと待つのは耐えられないのだ。針ノ木谷側に残る雪渓をつないで山頂から滑降し大沢右俣のドロップポイントへ移動。まずは斜滑降で小手調べを行う。


山頂から左手の雪渓を回り込んでドロップポイントへ移動


 沢に滑り込むと、案の定、硬い雪面にガリガリとエッジが悲鳴を上げる。落ち口辺りでも相当な急斜面、下部はさらなる斜度で落ち込んでいて先が見えない。転んだらまず止まらないだろうし、どこまで落ちていくかもわからない。絶対に転倒しないことを最優先にし、大回りで慎重に高度を下げていく。


転ばないよう慎重に高度を下げる



テカテカ、カチンコチンに凍てついた斜面


 沢幅が狭くなる頃、ようやく少し雪が緩んできた。デブリの成れの果ての雪塊がごろごろしている狭いノドを何とか通過。その下は傾斜も雪も緩くなり、ようやく張り詰めた緊張感から解放され気持ちの良いザラメ滑降を楽しめた。大沢小屋が見えてくると間もなく針ノ木雪渓に合流。後は藪を縫いながら林道まで滑り降りた。車への帰着は午後1時5分。


ノドを過ぎてようやくスキーが楽しめるようになった



同上


 何とか無事に蓮華大沢を終えることができたが、山スキーの奥深さを再認識させられた日だった。特に雪質の読み。先週の弓折岳の際と下界の気温は大差なく、高気圧後面の似たような気圧配置なのでザラメ間違いなしと予想したが、山はそう甘くは無かった。南と北斜面の違い、放射冷却の影響、前回の弓折岳よりも約
300m高い標高差といった要素を考慮すれば、ハードな雪質は想定できたのかも知れないが。。。実際に登ってみなければわからない面もあり本当に難しい。

 ちなみに大沢右俣の斜度を地図上の三角測量で計算してみると、ドロップポイントから針ノ木雪渓まで平均斜度が
23度。特に斜度のきつい標高2100m辺りまでは33度という結果を得た。斜度的にはせいぜいゲレンデの上級者コースレベルだが、山スキーにおける実際の難易度は雪質次第なので単純比較はできない。

 それにしても、この年になるとチャレンジングな状況を前にして出てくるのはアドレナリンではなくて冷や汗だけ。そんな緊張感は余り味わいたくないものだ。


行動時間  
7時間



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