大烏帽子山BC   1820m 新潟・群馬県            
 


2020年3月7日(土)

 昨年同時期に宝川温泉から朝日岳を往復している。その際、ナルミズ沢右股の源流域に真っ白でピラミダルなフォルムがひときわ印象的な頂きがあった。それが大烏帽子山。登山道も無い、積雪期限定の山。しかも中央分水嶺の奥深くに位置しており、上州、越後のどちらからもアクセスは容易ではない。

 そんな大烏帽子山に機会あれば是非とも訪れたいと思っていた。しかし、この暖冬下、アプローチとして利用できる布引尾根やナルミズ沢の様子がわからない。人柱になるガッツもテクも無いので躊躇していると、折よくヤマレコに参考記録がアップされ、藪や沢割れはそれ程でもないとのポジティブレポ。このファーストペンギンさんに感謝しつつ、相棒のKさんと共に待望のピークハントに向かうこととなった。

 例によってKさんの車に便乗させてもらい、まだ夜が明けやらぬ4時前に宝川温泉に到着。温泉管理区域外の路肩スペースに駐車する。周囲の積雪の状況から見て前日の降雪は予想以上。臨機応変の対応が出来るよう板はファットとスーパーファットの両方を積んできたが、激ラッセルに備えて後者を携えて行くことにした。

 4時45分、ヘッデンを灯して長い林道歩きのスタート。水分をたっぷり含んだ重雪のブーツラッセルがのっけから始まる。10分刻みでKさんとラッセルを交代し、林道の道つくりに励むこと2時間20分。板幽沢を越え、ようやく布引尾根への取り付き点に着いた。


今年もベレー帽岩がお出迎え



足首ラッセルが続く



布引尾根に入ると濃い藪が登場


 この尾根は最初のうちは緩やかだが、高度に比例して斜度が増す。しかも雪不足の今年はそれ以上に藪密度が増してきたのがやっかいだ。先のレポによれば、「さほどでも無い」はずの藪が、私にとってはどう見てもジャングル同然の激藪。






濃淡はあるがずっと藪


 雪質も気温の上昇する下山時にはコントロール不能の悪雪と化すだろう。濃い藪、急斜面、悪雪の「下手虐め三点セット」を覚悟しておく必要がありそうだ。とは言え、まずはピークハントが先決。そんなネガティブ思考を頭の片隅に追いやり、無心にラッセルを続ける。

 10時40分、布引山手前のピークに到着。ここがナルミズ沢への下降点となる。スキーを滑降モードにしてお楽しみ第一ラウンドの開始。所々アイシーなのでエッジ抜けに注意しながら、重パウダーの滑走を楽しむ。スキーは早い。10分足らずで標高差250mを滑降し、ナルミズ沢へと降り立った。ここで大休止。


何度眺めても圧倒される景色



右奥のとんがったピークが大烏帽子山 遠い、、、



至仏山や燧ケ岳など尾瀬の山も一望の下



ナルミズ沢へ滑降するKさん



同私



これも私



シュプールを振り返る


 カロリー補給を行った後は、再びシールを貼って行軍再開。ハロでくすんだ陽光ながら周囲の照り返しは強烈、風の通らない谷合は焦熱地獄だ。そんな雪砂漠を汗水流しながら一歩一歩高みへと向かう。黙々と登り詰めたジャンクションピークとの鞍部に着くと一転して冷たい風の洗礼。これで気分もすっきり、最後のもう一登りの活力を与えてくれた。




朝日岳へと続く左股は地肌が露出



猫の耳が見えてきた



コルから眺めるジャンクションピークと朝日岳がど迫力



 目的のピークはすぐそこに迫っている。氷化した斜面にクトーを効かせながら慎重に登り上げ、念願の頂きに立った。時刻は午後1時10分。ここまで8時間25分の長い道程だった。


大烏帽子山に王手をかけるKさん



同私



Kさん山頂にて バックは巻機山へと続く峰々




 大展望をカメラと網膜に納めたら、愈々お楽しみ第二ラウンドの山頂滑降のスタート。狭い山頂で間違っても板を流さないよう慎重に滑降モードに換装する。

 Kさんご厚意でファーストトラックは私から。ガリガリは山頂付近だけ、そこを過ぎれば程ほどの中級斜面で、板が良く走る文句なしの雪だった。Kさんと写真を撮り合いながら滑り降り、登り返し地点まで20分もかからなかった。


カリカリの山頂からドロップする私



どんどん落ちる私



同上



同上



Kさん



同上



同上



同上



下降点へと戻るKさん



同じく私


 二回目の大休止で水分補給し行動再開。ここから布引尾根への登り返しはこれまで散々酷使してきた脚にはきつかった。少しでもラッセルの負担を減らそうと我々自らのシュプールをなぞってハイクアップ。標高差250mを1時間かけて登り返した。


重い板を履いてご苦労様でした



陰影の深くなった峰々に別れを告げる


 やれやれこれで登りは全て終了。後は愈々最終ラウンドのスキー滑降。雪はまだ死んでいない、重力に従って気楽に滑り降りるだけ、、、と思ったのはとんでもない早とちりだった。危惧していた通り、標高を落とすと陽光をたっぷり吸収した雪が牙をむいて待ち構えていたのだ。


この辺りは優しいモナカ



モナカを蹴散らすKさん


 容易にターンさせてくれない激重モナカ、そして極めつけは朝予感した激藪、急坂、悪雪の「下手虐め三点セット」だった。そんな悪条件でも何事も無いように藪を擦り抜けながら滑り降りて行くKさんの背中を追いながら必死の下降を続ける。私の使える技は横滑り、斜滑降&キックターン、階段下降、それにボーゲンだけ。脚は太腿を中心に完全に売り切れ、それでも登りと同量の汗をかいて何とか怪我もせず林道に降り立つことが出来た。


藪が濃くなってきた



何とか日暮れ前に宝川温泉に帰着


 その後も自動運転にはほど遠い、長い林道歩き。宝川温泉に帰り着いたのは夜の帳が落ち始めた午後6時だった。今回目的のピークハントを果たせたこと、歳不相応に重いPon2oonを履き、〆て13時間15分にも及ぶ完全燃焼型ロングツアーに耐えられたことは素直に嬉しい。健康寿命の尽きる時間的余裕も少し伸びたような気がする。但し、またやるかと問われたらご勘弁! 



Gear Pon2oon 159cm / Scarpa F1Tr


  

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