御嶽山  長野・岐阜県 3067m     百名山
  

2011519

 前回の大無間山で痛めた左膝は思ったよりもダメージが酷かった。平地の歩行も辛かったが、特に階段の上り下りの際にするどい痛みが走って耐えがたかった。当然翌週の山歩きはパス。しばらく安静にしていたせいか、何とか痛みは治まって普通に歩けるまで回復した。全治2週間といったところだろうか。やれやれである。まだ無理をしない方が良いのだが、明日は「全国的に五月晴れ」との予報に、いてもたってもいられなくなってしまった。リハビリ山行に選んだ先は御嶽山。幸い数日前に七合目の田の原までアクセス道路が開通したので、剣ヶ峰までは標高差が1000mに満たない半日コースだ。

 例によって深夜に東京の自宅を出発。月がこうこうと照るなかを中央道、国道
19号線とひた走り、田の原には午前5時過ぎに到着した。御嶽観光センター前の広い駐車場はガラガラで車は三台だけ。そのうちの一台は東京ナンバーで、中年のご夫妻が登山靴を履くなど出発準備をしていた。空を見渡すと夜はすっかり明けて予報通りの快晴なのだが、全体的に霞がかかっていて遠方の視界は無い。自分で握った不細工なおむすびで腹ごしらえし、身支度を始める。今回の一番の課題は登山靴。前回の大無間山で下ろしたての靴でえらく苦労したことが未だに尾を引いている。迷った末、今回は磨り減ってはいるものの、足に馴染んで負担の少ない「お古」を履くことにした。新しい靴を履いて再び膝にダメージを受けたら再起不能になりそうだからだ。


              登山口の大鳥居                             残雪の参道を歩く


 
5時半に車を後にした。御嶽山を正面に臨む大鳥居をくぐって山に向かって一直線に伸びる参道を進む。歩き始めてすぐに日焼け止め対策を忘れていたことに気付いた。立ち止まってUVカットのクリームを顔に塗りたくっていると、そこへ御嶽教の修験者が足取りも軽くやってきた。この御仁、白の結袈裟をまとって金剛杖をついているところは勇ましいのだが、頭巾のかわりに正ちゃん帽、草鞋ではなく登山靴、それにサングラスといった何ともちぐはぐな出立ちなのだ。聞けば還暦を迎えたばかりとのことで私と同年輩だった。この行者様は、流石に修行を積んでいるだけあって足が速い。あっという間に姿が見えなくなってしまった。後を追っていくと要所要所で鳴らしている鐘音だけが伝わってくる。


             さすが鳥居だらけの山                        雪の斜面をのんびり歩く



       登山口が七合目なのですぐに八合目に到着             避難小屋のキャッチコピーが気に入った


 駐車場から御嶽山を見上げる限り、南斜面であるし、尾根道には雪はそれほど付いていないように見えたが甘かった。結構雪が残っているのだ。幸い早朝なので雪は硬く締まっている。傾斜はそれほど急ではないが、ゆっくりしたペースで歩いてもやたらに息が切れる。明らかに酸素が足りない。なにしろ登山口の標高が
2180mもあるのだ。心配していた左膝は鈍痛があるものの、耐えられないほどではない。七合目辺りの森林限界を抜けると尾根筋の雪は融けていて石だらけの道になる。八合目、九合目の石室避難小屋を過ぎると王滝山頂上へと続くやや急な雪渓を登るようになった。王滝から剣ヶ峰までは標高差130mほど。様々な御嶽神社縁のモニュメントが立ち並ぶ八丁ダルミから最後の一登りとなる。この辺りは独立峰だけあっていつも強風が吹き荒れるところらしいが、今日はいたって穏やかである。剣ヶ峰直下で先ほどの行者様が駆け下ってきた。それも携帯で何やら話をしながらなので、こんな行者もありかと思わず笑ってしまう。八合目で引き返すつもりが、雪が少なかったので頂上まで行ってしまったそうな。

 


王滝直下の雪渓、スキーのシュプールがいくつもあった



                 九合目                           赤い肉冠を頂いたライチョウのオス



              王滝頂上山荘                        鳥居の向こうに御嶽山山頂が見える



             噴出するガス(水蒸気?)                         頂上まであと一息


 剣ヶ峰には940分に着いた。田の原から2時間10分である。3時間はかかると見ていたので膝のリハビリ登山としては上々だ。頂上からは直下の一ノ池、二ノ池や継子岳や摩利支天山など同じ山塊の至近距離の山々を望むことができる。残念ながら、遠方の山は乗鞍岳がうっすらと見えているだけだ。せっかくの晴天なのにちょっと残念。神社の裏手に回ると地獄谷が眼下にある。山腹から火山ガスが噴出しているし、地獄の名に相応しい赤茶けて荒涼とした風景には、改めてこの山は火山なのだと実感させられる。


継子岳の背後には乗鞍岳がうっすらと



一の池と二の池



         山頂の御嶽神社                   その名の通りの地獄谷

 山頂にしばらく滞在し、コンビニ調理パンの軽いランチをとった後、下山にかかった。八丁ダルミに差し掛かったところで早朝お会いしたご夫妻とすれ違い挨拶を交わす。その後も続々とハイカー達が登ってくる。せっかくアイゼンを担いでので王滝から雪渓沿いに下まで一気に下ろうかとも考えたが、スキーならともかく歩いて下りるのでは興が無い。結局雪渓は諦めて来た道をそのままピストンすることにした。途中の雪渓は尻セードで快適に滑り降りる。駐車場帰着は9時半。心配していた膝は無事復活したことを確認できたし、眺望は得られなかったものの穏やかな3000mの高山を楽しめて満足いく山歩きだった。期待していた日帰り温泉はどこも開いていなかったので断念、その代わりゆっくりと車を流し、御岳湖沿いの美しい新録をしっかり目に焼き付けてから帰宅の途に着いた。



          王滝との鞍部にあるたくさんの神仏                     これは何の意味?



     すれ違うハイカーはすっかり夏姿               残雪の参道を下る


存在感のある山容に別れを告げる


行動時間             4時間
実歩行時間
          3時間30分

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