小川山  瑞牆山  2418m、2230m 山梨・長野県      百名山
 

2019年7月26日(金)

 奥秩父の標高2400mを越える山の中で、まだその頂きを踏んでいないのは、小川山と奥千丈岳の二座。どちらも主稜線から外れ、山頂は樹木で覆われ展望がきかないという地味な山。特に小川山は山名からして平凡、しかもド派手な奇岩巨岩が売りの百名山、瑞牆山がすぐ隣に聳えているので益々影が薄い。

 今回の山歩きでは、廻目平をベースに、この不遇な小川山とその対極にある瑞牆山を結んでみることとした。問題は小川山から瑞牆山への長大なアプローチ。瑞牆山の南側をぐるりと大きく迂回せねばならないのだ。しかし調べてみれば良くしたもので、瑞牆山の東尾根には地図には記載の無い踏み跡があるらしい。これを活用すればショートカットして大幅に行程短縮が図れるはず、、、と毎度能天気な皮算用をしてみた。後で泣きを見るとも知らずに。。。

 廻目平には午前4時過ぎに到着。日本のヨセミテと称されるだけに欧州の城塞にも似た岩稜が周囲を取り囲み、青々した芝生の広がるキャンプ場は最高の立地にある。しかし何かと手のかかるテント泊が億劫になりつつある私には無縁の世界。さっさと朝食と支度を済ませ、5時きっかりに車を後にした。


 歩き始めたものの、この地は初めてなので勝手が分からず、のっけからキャンプ施設の周りを右往左往。朝の貴重な時間をロスして、ようやく登山口にたどり着いた。カモシカ登山道に入ると、道は総じて良く管理されている。歩き易いし、危険個所には梯子やロープが設置されていた。それに金峰山から連なる主稜線を展望する格好のビューポイントもあるのだ。




金峰山 五丈岩も遠望



岩場が出て来ると山頂間近



 2時間40分で小川山に到着。樹木に囲まれ眺望も無い素っ気ない山頂だ。そこかしこにある石楠花の満開時期であれば、さぞかし見応えがあるだろうが、遅きに失した今、それは言っても詮無き事。未踏の頂きにフットプリントを残せたことだけで良しとしよう。

 小川山からは八丁平へと向かう尾根ルートに入る。ここは山と高原地図上、破線となっているが、しっかりした踏み跡がついており全く不安は無い。しかも苔交じりのフカフカした登山道なので膝にも優しい。


ガスってきた それはそれで幻想的



 瑞牆山から派生する東尾根との分岐を見過ごさないようにGPSで小まめに位置確認をしながら進む。東尾根との合流地点には目印らしきものはある(以下の写真)。そこから西方向に薄い踏み跡が分岐していたのですぐそれと分かった。


これが分岐点の目印



踏み跡と赤いテープがあるが、、、



こうなってしまい道をしばしばロスト


 ともすれば見失いがちな薄い踏み跡と赤いマーキングを頼りに進んで行く。それでも、どちらもロストしてしまうこともしばしば。道を探し求めて足場の悪い中、何度も右往左往を強いられる。それに辺り一帯はすっかりガスに包まれ陰鬱な雰囲気だ。心中の不安を抑え込み、細かなアップダウンを繰り返しながら、先へ先へと進む。

 瑞牆山が近くなるにつれ露岩と倒木が多くなり、乗り越えるのに一苦労するようになった。手足を総動員して進むうち、現れた極めつけは急斜面の倒木登り。幹に跨り枝を掴みながら攀じ登った。古希の爺にはハード過ぎるアスレチックだ。


ここを登らされた 写真では水平に見えるが実際には急勾配


 やがて一般道と合流すると、そこは別世界。しっかり整備された登山道と鎖に導かれて露岩を登りつめると瑞牆山の山頂だった。しかも大勢のハイカーで賑わう喧噪の山。さして広くも無い山頂では身の置き所にも困る程だ。出会う人もいない静謐な小川山とは何という違いだろう。


ハイカーで賑わ瑞牆山山頂


 しかし、どんな山でも感動を与えてくれるものだ。山頂に立つタイミングに合わせてガスの幕がするすると開き大展望が目前に広がってくれたのだ。奇岩の景観はもとより、小川山や踏破してきた尾根が一望のもとにある。唯一残念なのは金峰山方面。ガスが中々晴れてくれないのがもどかしい。


小川山



金峰山方面のガスは中々取れない



 ランチも済ませ、そろそろ帰路に就くことにする。当初は東尾根をピストンするつもりだったが、アスレチックには辟易していたので予定変更、柳坂、八丁平への南回りの一般ルートを取ることにした。

 暫くは岩場の激下り。ここは10年前、初登頂した瑞牆山からの帰りに酷い膝痛に泣かされたところだ。三々五々登ってくるハイカーと挨拶を交わしながら、天鳥川の渡渉点に下山。ここから尾根に登り返したところが、八丁平と富士見平へと向かう登山道の分岐点だ。


八丁平方面に向かう分岐点


 八丁平へは更に標高差200mの登り返し。それでも東尾根のアスレチックをもう一度やることを考えたら遥かにマシだ。瑞牆山を南側から仰ぎ見る絶好のフォトジェニック・ポイントなどもあり、破線ルートながらとても楽しい道だ。疲れも忘れ気持ちよく歩を進めた。


瑞牆山を仰ぎ見る




伐採小屋跡は庭園のよう


 八丁平からは大日小屋方面に向かう。暫く鬱蒼とした林の中を進むと、廻目平への下降点があった。ここから砂洗川沿いに一頻り下ると、金峰山の尾根コースが合流し林道歩きとなる。単調な林道を小一時間歩き、午後1時45分、廻目平の駐車場に無事帰着した。


砂洗川の美しいナメ



最後は林道歩き


 今日も良い汗を流せたと満ち足りた気分で着替えをしていると、サイレンを鳴らしたパトカーや消防車(最近は消防が救急の活動を支援することになっているらしい)が続々と到着。上空にはヘリが飛び回り、何やらものものしい雰囲気になってきた。金峰山荘で事情を聴くと、屋根岩でクライマーの死亡事故があったとのこと。私も年甲斐も無く昨年から沢登りを解禁したこともあり、こうした緊急車両のお世話にならないよう、慎重と万全を期そうと誓いを新たにしたのだった。


行動時間 8時間45分


Map
 Track Weather  Map
  トップ                              山歩き 
inserted by FC2 system