女峰山   2483m 栃木県         二百名山  
 


2020年11月6日(木)

 山歩きを再開して早や10年。その時々の天候や気分に任せて国内外あちこちの山をさ迷い歩いてきたが、最近の傾向を顧みると繰り返し同じ山、同じコースを歩いていることが多い。そんなワンパターンを続けていれば、いつしか山を歩く喜びや感動が色褪せてしまいそうだ。

 マンネリ化を避けるには、自分にとって未踏の山やコースを開拓するか、または新たなジャンルにチャレンジするしかない。後者については、還暦を過ぎてから山スキーや、山を絡めたロードバイク、果ては無謀にも沢登りなどにも手を染めてきた。しかし、人生最終章のカウントダウン真っ只中、流石にこうした体力酷使系アウトドアスポーツには限界を感じ始めている。やはり、体力に応じた範囲で前者を究めていくしかないのだろう。これからは今まで目もくれなかった低山や未体験ルートの深堀に注力していこうと思う。

 前置きが長くなった。そんな訳で今回は新たなルートにチャレンジということで、霧降高原から女峰山を目指してみることにした。この山には、かつて志津乗越からアプローチしているので、反対側から頂を目指すことになる。

 例によって夜明け前にスキー場跡地の駐車場に到着。この日は高気圧に覆われ、晴天が約束されているものの、放射冷却の影響で殆ど零度と外気温はかなり低い。

 午前5時45分、厚手のウェアとグローブを着けて車を後にする。まずはのっけから試練。スキー場跡地は自然園になっており、上部へはリフトの代わりに階段を上らねばならない。その数何と1455段。462段の土合駅など可愛いものだ。しかも今回は、スノーシーズンのトレーニングも兼ねているので足元は重く嵩張る冬靴。ゆっくり歩いても息が乱れ、額からは汗が滴る。そんな中、暗闇の中でヘッドランプに照らされた霜がキラキラと美しく、まるで宝石を散りばめたようで、辛い階段登りを癒してくれる。


こんなに段数の階段はかつて経験したことが無い


 高度差200m少々、30分に及ぶ階段との格闘を終え、標高は1500mを越えた。振り返れば、眼下にはこれまたキラキラと別の宝石、市街地の夜景が広がっている。


階段を登り終えたときには夜明けで夜景にならなかった


 ホテルの回転ドアのような害獣防止ゲートを通過すると、やっと山歩きらしくなった。小丸山へは大きく育った霜を踏みしめながらの登高。気温の上昇する帰路には、泥濘と化すことは間違いない。


回転ドア式獣害ゲート(下山時撮影)


 歩を進めるにつれ、前日の積雪が辺りを覆うようになってきた。雪の感触を確かめながらノンストップで黙々と歩き続け、出発から1時間50分で赤薙山に着いた。


 赤薙山からは幾つもの起伏を越えながら標高を上げていくことになる。フラットな区間もあるので通常であれば、お気楽な稜線漫歩となるはずが、この日は絶不調。頭がややクラクラし、足の運びも乱れがち。荒い息遣いにも関わらず、酸素が十分に取り込めない、まるで富士山の九合目辺りで経験する高山症状だ。

 少しでも登りに差し掛かると息も絶え絶えガックリとペースダウンしてしまう。特に一里ヶ曽根の独標を越えてからの急登が辛かった。ゆっくりでもコンスタントに歩き続け、立ち止まることはしないのが、いつもの私の登山スタイル。それがこの日は何度も足を休め、息を整えねばならなかった。


女峰山が垣間見える 随分と遠い、、、



男体山には殆ど雪がが付いていない



この積雪は帰路殆ど消えてしまった



少し近づいてきた



積雪量は標高を上げても殆ど増えなかった



山頂直下は壁


 こうした亀の歩みを続け、10時10分、青息吐息で女峰山山頂に辿り着いた。要した時間は5時間20分と腹積もりを下回る不本意な結果。登山は競技スポーツではないし、本来それほどタイムを意識する必要は無い。しかし、古希を過ぎてからいつも思うこと、「安全登山の前提となる持久力の維持」に赤信号が点灯したのではと不安になる。


バックは男体山



日光白根山



栃木県北部の山々


 カロリー補給をし、360度の大展望を満喫すると、そんな凹んだ気分も上向いてきた。20分ほど休憩し下山開始。山頂直下の凍てついた岩場をクライミングダウンで慎重に下る。ここは固定ロープが雪や氷に埋もれたら、難易度が一気に上がりそうな難所だ。


山頂直下のロープ場


 標高が下がるにつれ、頭のモヤモヤや足のふらつきは解消し、ようやくいつもの歩きが出来るようになった。登り返しの急坂でも息が上がることはなくなった。赤薙山で小休止しただけであとは休まず下山を続け、2時25分、案の定泥濘でズボンの裾を泥だらけにして駐車場に帰着した。


霧降高原を俯瞰



振り返りお山に別れを告げ、、、



階段地獄を下る


 結局今回の不調の原因は何だったのだろう。最大酸素摂取量VO2Maxは年齢とともに減少し、70歳を越えると20台の凡そ半分、60代と比較しても15%近くも下回ってしまうらしい。そんなデータを目の当たりにすると、やはり冒頭に述べたように酸素濃度の高い低山に目を向けるのは自然の流れなのかも知れない。


行動時間 9時間50分



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