2012年5月7日
今回は結果から言うと散々の敗退だった。零下20度の季節はずれの寒気のせいで、山頂周辺はカチンカチンに凍結。シールもクトーも利かず、朝日岳の途中で30mほど滑落する始末。気持ちもすっかり萎えて剣ヶ峰は断念。登りも下りもアイスバーンに全く歯が立たず、山スキー一年生大苦戦の巻きだった。
連休の後半は豪雨があったり、竜巻や突風が吹いたりして大荒れだった。それにお定まりの高速の大渋滞もあり、自宅でのんびり過ごす。GW開けの7日は一転して晴れとの予報、日帰りで乗鞍岳を目指すことにした。
深夜に自宅を出発、乗鞍高原スキー場の三本滝には午前6時前に着いた。早速バスの時刻表をチェックすると一番早い便が8時20分発とのこと。2時間半も待たされるのはかなわない。スキー場の雪は上へ繋がっているようだし、バス代の節約にもなるので、ここから歩くことにする。ちょうど松本ナンバーの人が出発していったので後を追うようにハイクアップ開始。
三本滝前のスキー場にはまだ雪があった ここから先は一般車進入禁止
登路は総じて適度な斜度で歩き易い。一部急な個所もあったが、そこ以外は快適そうなゲレンデだ。生憎と天気は下り坂のようで、遠くの山々は霞み、見上げる空は次第にグレーになってきた。エコーラインがちょうど樹林限界の境目に位置していて、道路を越えると遮るものの無い吹き晒しの広大な雪原だ。強く吹き付けてくる風が冷たい。グローブを冬用に替えてウインドブレーカーを着る。
三本滝の駐車場を下に見る リフト最終降り場
狭くて急な斜面もあるが、、、 総じて快適そうな緩斜面
乗鞍岳が姿を現した
ここまで付かず離れずに来た松本の人は蚕玉岳方向へ向かって行った。私は当初の計画通り、肩の小屋から朝日岳をトラバースするつもりだ。とは言え肩の小屋に寄る必要は無いので、朝日岳目指して真っすぐ向かう。どこもかしこも一旦融けた雪が再凍結したカリカリのアイスバーンだらけ。シールはもちろん、頼みにしていたクトーもほとんど役に立たない。
先を行く松本ナンバー氏 吹き晒しの雪原に突入
しばらくは雪の状態の良さそうな所を拾って歩いていたが、登るほどにテラテラ光る雪面ばかりで、どうやらスキー歩行は限界。そろそろアイゼンに履き替えないと危ないなと思った瞬間、ズルッと片足が滑りバランスが崩れて転倒。あっという間に頭を下にして落ちて行く。この姿勢ではスキーのエッジで制動することが出来ない。手にあるにはストックだけ。グリップを何度も硬い雪面に突き立てているうちにブレーキがかかってようやく止まってくれた。帰宅後カシミールで調べると2750m地点、約30mの滑落だった。下には岩も出ていないし、斜度も緩むので大事にはならなかったろうが、すっかり気持ちの方が萎えてしまった。
肩の小屋口を下に見ながら進む 行く手はアイスバーンだらけ
自分の腕前(足前?)では、このカリカリの斜面は無理と思い知らされたので、傾斜の比較的緩やかな肩の小屋方面へ出ようと西に向かってトラバースしていった。クライミングサポートを立てずにクトーを利かすと何とかなる。
慎重に歩を進め、あちこち岩が露出している稜線付近に辿りついた。摩利支天岳との鞍部に近いこの辺りは西風が強烈だった。これでは雪が飛ばされてしまう訳だ。少し平な場所を見つけて、兼用靴にアイゼンを装着。ザックに板をA字型に背負い歩きだすが、強風に煽られてまともに歩けない。残念だが、これ以上の前進は諦めよう。しかし、ここから引き返すのも癪なので、せめて朝日岳だけでもと空身で往復することにする。
朝日岳へは右上の露岩地帯を登った
雪面は最悪の状況だ。連休中のシュプールが、そのままカチカチに凍りついて凸凹だらけ。これではスキーを担ぎあげてもとても滑ることは出来そうにない。山頂に着くと剣ヶ峰が目の前に聳えていた。標高差50m程度なので空身のまま行くことも出来たが、今日は朝日岳で十分だ。慎重に下ってザックとスキーのデポ地へと戻った。
滑降準備を整え、滑り出すといきなり転倒してしまった。エッジも利かないようなアイスバーンで私にはとてもスキーを操縦できない。それに氷の上なので痛いのなんの。肩の小屋口目指して腰引けまくりで恐る恐る下る。慣れない雪質に何度も転んだ。位ヶ原から登って来たギャラリーが見守る中、己の下手さ加減が情けない。
肩の小屋口を目指して滑る 気持ち良さそうな斜面、雪質が良ければ最高なのだが、、、
それでも下るにつれ雪質は良くなり、何とかスキーらしくなってきた。肩の小屋口に到着。ここには同年輩のスキーヤーが二人休憩していた。アイスバーンと強風に嫌気がさしたので、ここから下山する由。小屋前で風を避けながら軽く食事をとった後、お二人と一緒に滑降を続ける。雪質は次第に快適なザラメに変化してきて、ようやくダウンヒルを楽しむことができた。最後の斜面を気持ちよく滑り終えて駐車場へ帰着した。
完全燃焼とは行かなかったが、色々貴重な経験がつめたのは何よりと負け惜しみの総括でした。
肩の小屋口から滑り降りる 気持ちの良いダウンヒル
降りるほどに天気が良くなってきた、日向ぼっこをしている人も
行動時間 5時間30分(登行 4時間、下降 1時間30分)
後記
何事も経験なので、毎回何かしら新たな試みをやるようにしている。今回は手に入れたばかりのクトーの試運転だ。緩傾斜では、ガシガシと雪面を捉えることが出来てなかなか具合が良い。ところが、一番アイゼンの欲しい急傾斜の場面では、使い勝手が悪かった。クトーをヒールリフターのバーに固定する方式なので、サポートを立てる程に歯の食い込みが浅くなるからだ。実際に使ってみた結果は、上述の通り滑落してしまったわけで、「少なくとも私の技量ではうまく使いこなせなかった」というのが今回の結論だ。
いつも参考にさせて頂いている山スキーのエキスパート氏のHPによれば、氷化斜面用の特製クトーに下駄を履かせ、サポートを立ててもしっかり雪面に食い込めるよう工夫している由。経験や技量だけでなく頭も使わないと。。。
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