西岳  長野県 2398m   

  

20101227

 今年最後の山は八ヶ岳と決めていた。出来れば赤岳鉱泉に泊って硫黄岳と赤岳を二日間かけて登りたかったが、予報によれば二日目が荒れるらしい。仕方がないのでこれまで機会の無かった西岳に日帰りすることにした。午前6時半に富士見高原GCに到着。車の温度計は零下7度を指している。この分だと山頂付近は15度近くになっているかもしれない。一昨日には降雪があったことでもあり、いつもは一本ストックなのだが、もう一本追加して、ダブルストックで行くことにした。

 
645分に車を後にした。薄ら雪化粧をした山道には、週末に歩いたらしい数人の足跡がついている。何度か林道を横切るにつれて雪が深くなってきた。トレースがしっかりついているので楽だ。林道に黄色のテントが一張見えた。この持ち主は足跡からして編笠山に向かったらしい。展望の無い樹林帯のなかを黙々と登っていくと、次第にスノーモンスター達が現れてきた。雪質は完全にパウダー状態なので踏み跡といえども深くもぐってしまう。樹高が低くなってくると背後には南アルプス方面が、右手には編笠山が見えてきた。どちらも上部がガスに覆われている。上空は抜けるような青空なのに残念だ。西岳の頂きには10時に着いた。赤岳方面は樹林で遮られているので甲府盆地方面しか見えない。富士見町と言うだけあって富士山の眺望は素晴らしい。しかし、八ヶ岳の主峰を見ることなく、このまま下山しては不完全燃焼になってしまいそうだ。源治新道方面にもトレースが伸びているのでこれに乗って編笠山に足を伸ばすことにする。しかし、これが自分の悪い癖で、前回の白根山でも同じ気軽な気持ちでえらい苦労をしてしまったのだ。


         トレースのしっかりした道                       次第にモンスターが成長



        頂上まであと一息                               編笠山はガスのなか



展望が甲府側だけの西岳山頂



 
ザックを下ろすこともなく西岳を後にし、モンスターに囲まれながら一旦緩やかに下っていく。雪はさらに深くなってきた。吹き溜まりではトレースも消されて膝までもぐってしまう。どうも天気も芳しくないようだ。先ほどの青空は欠片も見えない、灰色一色になってしまった。人の気配のない青年小屋を通り過ぎて編笠山への登りにかかる。体当たりしてくるような凄まじい風でトレースは完全にかき消されている。岩を覆うエビのしっぽでペンキマークも所々にしか見えない。山頂近くなると吹き溜まりでは太腿まで埋まるようになった。傾斜も急なので喘ぎ登る。編笠山には西岳から2時間かけて到着した。頂上には信じられない程のスピードでガスが流れ、期待していた展望のテの字も無かった。見る価値があったとすれば、それは山頂標識だ。エビがごまんと付着し立派に成長していた。


        スノーモンスター達                                青年小屋



編笠山 成長した立派なエビのしっぽ



この方向に八ヶ岳主峰が見えるはずなのだが。。。



 
風上にはとても顔を向けられないが、西方向に進路をとっているのでそうも言っていられない。風にあおられた雪つぶてが顔を直撃するので痛くて仕方ない。結局この頂きも素通りして下山にかかる。頂上直下の石のごろごろした地帯は特に風が強かった。体が振られるので、とても立って歩けない。それこそ石に這いつくばるようにして下る。ようやく樹林帯に辿りつきほっと一息ついた。1年前にラッセルで苦しめられた道にはトレースがしっかりつけられているので今回は楽チンだ。次第に陽が差すようになったのどかな雪道を下り続け午後220分に駐車場に帰着した。今回出会った人はゼロ。見かけたのは鹿一頭だけだ。最初から最後までつぼ足で通し、背負ったアイゼンもスノーシューも使うことは無かった。それでも風の洗礼があったので冬山の厳しさの一端を味わうことができたと言えるかも知れない。好き好んで何でこんな労苦を自らに強いているのか自分でもわからないが、不思議と達成感と満足感に浸ることができたのだ。加齢でβエンドルフィン(脳内モルヒネ)が涸れない限りは、来年もまたこうした馬鹿を続けることになるのだろう。




樹林帯まで下りたら展望が開けた(正面は富士山)



山を降りたら晴れてきた(中央高速八ヶ岳SAより撮影)




行動時間  7時間40分
歩行時間  7時間30分(殆ど歩きづめ)

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