2010年12月19日
白根山には今回で3回目になる。前回は2回とも紅葉の季節だったので冬は初めてだ。登山口は色々あるが、いつものように頂上へ最短の菅沼登山口から歩き始めることにした。今月24日に国道120号線の金精峠、湯元間が閉鎖されるので私にとっては今年のラストチャンスになる。自宅を出る頃には寒さはあまり感じなかったのだが、夜明け前に戦場ヶ原に差し掛かった辺りで、車の外気温計はなんとマイナス12.5度を指した。この調子だと山の上では零下20度くらいかも知れない。寒さ対策をよほどしっかりしなければ。湯元を過ぎる辺りから凍てついた雪道となった。今冬からスタッドレスを履いているのでそれほど不安は無いが、スピードを落として慎重に運転する。一面の雪に覆われた菅沼登山口には、車がすでに10数台とまっていた。外気温をチェックすると不思議なことに更に高地にある菅沼ではマイナス8度と逆に寒さが緩んでしまった。放射冷却によって戦場ヶ原付近だけに、局地的に気温の低下が生じたのだろうか。いずれにしても雪は相当に締まっていそうだ。最初からアイゼンを付けることにした。
6時40分に身支度を整えて出発。隣の車から直前に歩き始めた単独の人についていく。トレースがしっかりついているのでとても歩きやすい。すぐ後ろには二人組みが追いついてきたので即製の4人パーティの格好になってしまった。しばらく樹林帯のなかを登るうち、後ろを歩く私が鬱陶しくなったようだ。単独氏から道を譲られたので先にいかせてもらった。弥陀ヶ池近くで別の二人組みに追いついたが彼らとは、抜きつ抜かれつしながら頂上まで一緒だった。弥陀ヶ池に着いたとたん、文字通り白銀に輝く白根山がどーんと登場した。何時見ても素晴らしく存在感のある山だ。
出発準備に余念のない登山者達 いよいよ登山口
トレースがしっかりついている たくさんのクリスマスツリー
弥陀ヶ池から白根山 鞍部へ
ここから右手に伸びるトレースを追って最後の登りにかかる。これから先の雪質が分からないが念のため、途中でストックをピッケルに持ち替えた。ここから先は吹き溜まりとクラストした雪面が交互に現れてきた。てらてらしたクラストにはアイゼンが心地よく利いてくれる。次第に傾斜がきつくなってきたところで何人か上から降りてきた。避難小屋泊まりだろうか、それとも幕営だろうか、結構な大荷物を背負っている。夏道通りに行こうとするのだが、よくわからず結局先行者のトレースを追ってしまう。トレースは雪の急斜面を一気に直登している。滑るとただでは済まないのでピッケルを深く突き刺し、支点を確保しつつ慎重に登った。9時20分に山頂に着いた。360度の大展望は何度見ても感動させられる。一番初めに目に飛び込んでくるのは特徴ある双耳峰の燧ケ岳など尾瀬の山々。反対側にはミニチュアサイズの富士山も見える。風が冷たいので風下の岩陰でテルモスからホット蜂蜜ドリンクと餡ドーナッツを食す。
燧ケ岳をバックに
至仏岳、武尊山方面
中禅寺湖をバックに
さて帰路はどうしたものか。時間も早いことであるし、往路をそのまま辿るのはつまらない。山頂に先着していたワカンを背負った単独氏も迷っていたが、五色沼を経由するとのこと。あまり深く考えることもなく私もそうすることにした。これが安易な判断だったとは後で思い知ることになるのだが。。。山頂には続々と人が上がってきて騒がしくなったので避難小屋に向けて下降を開始。トレースはあるのだが、南東を向いているせいか雪質が重い。膝まで嵌りながら思った以上の重労働になったことを後悔する。先行していた単独氏が日向ぼっこしているのを横目に見ながら先へと進む。
五色沼へ向けての下り 重い雪質で疲れる
避難小屋に着くと、トレースは前白根山方面に向かっていて五色沼方面は全く踏み跡がない。弥陀ヶ池まで無雪期であれば半時間程度の距離だが、つぼ足でラッセルするのはしんどいなと再び考えなしに前白根山へ向けて歩きだした。前白根山から白根山を正面から眺めてみたいという軽い気持ちもあった。深い雪に足をとられながら前白根山へ、白根山の雄大な眺めを心行くまで楽しみながらクラストした尾根道を五色山へと進む。ここで湯元から登ってきた3人のパーティに出会った。
避難小屋 五色沼方面はノートレース
前白根山への登り
前白根山から白根山を見る 五色山
白根山の雄姿
お気楽モードはここまで、五色沼を眼下に見下ろしながら弥陀ヶ池へ向けて歩きだすと、完全にトレースが無くなってしまった。先行者はどうやら金精峠か湯元方面に降りたらしい。もし湯元だとしたら、菅沼までの長い道程を一人でラッセルしなければならない。それは論外だ。ラッセルが嫌でトレースを追いかけてきたのに、結局ラッセルをする羽目になってしまった。座禅山に向かって緩やかに下っていくが、気温が上がったせいか表面はクラストしていても体を支えてはくれない。膝や時には太腿まで嵌りながらの牛歩の歩みになってしまった。既に午後の日差しになってきている。GPSによれば夏道はこのまま先に伸びているが、この調子で弥陀ヶ池までラッセルを続けるのはしんどい。五色沼まで下ってしまうことに決めた。急斜面を尻セード交えて雪まみれになりながら下り湖畔に出た。ありがたいことに先ほどの単独氏のつけてくれたワカンのトレースにつぼ足のふみ跡もある。ラッセルを嫌ったばかりにとんだ重労働をしてしまい、最後は人のトレース頼みとは情けない。それにしてもよほど消耗したのだろう。弥陀ヶ池まで高度差100mの僅かな登りでもなかなか足が上がらない。その先の弥陀ヶ池分岐から菅沼3kmまでも何と長かったことか。おまけに冬靴が足に合わずつま先の痛みにも悩まされるようになった。大枚投じた冬靴なのに泣けてくる。雪山はもう懲り懲りだとぶつぶつ呟きながら下り続け、午後3時、冬の短い日が山間に隠れる頃、ようや車にたどり着いた。既に大方の車は去った後だった。
今回はなまじ無雪期を知っているだけにコースの状況を甘く見すぎてしまったこと、万一に備えてスノーシューを持参しなかったこと、それに余りに場当たり的で思慮に欠けていたと猛省。最高の天気が持続したから良かったものの、吹雪にでもなれば万事休すだったかも知れない。そんなこんなで這うように自宅に帰り着いたのだが、一夜明けて元気を取り戻すと次の雪山をどこにしようか等と考えていた。やはり馬鹿は死ななきゃ治らないのだ。
行動時間 8時間20分
歩行時間 8時間
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