猫又山BC  富山県 2378m       
   

2019年5月3日(金)

 先週の会津駒ヶ岳や燧ケ岳といったメジャーどころとは比較にならないほど、訪れる人も少なく静かな猫又山。名前からして「猫の妖怪」とおどろおどろしいし、その長大なアプローチは容易に人寄せ付けない。そんな山だからこそ、一度は歩いてみたいとかねがね思っていた。特に登路となる猫又谷は興味深い。広大かつ麓から一直線に稜線に向かって突き上げる他では余り例を見ないユニークな谷なのだ。

 今回も、ご一緒してもらうのはいつもの相棒Kさん。自宅から魚津までは往復800km越え。長時間運転の疲労を考慮すると、とても日帰りできる距離の山ではない。それを可能にしてくれたのは、例によってKさんの有難い送迎サービス。同氏のお陰で登頂はもとより日付が変わる前に帰宅でき、翌日の家族サービスをさぼることなく目出度く果たすことができた。

 スタート地点は南又谷を少し上流に遡った辺り。長丁場となるかも知れない林道歩きに備えて、足回りは軽登山靴だ。午前5時25分、板とブーツを括り付けた重いザックを背負い歩き始める。



 魚津のパワースポット、洞杉を過ぎると程なく林道の雪が断続するようになった。片貝南又発電所の先で登山靴を路傍にデポ、兼用靴での登高に切り替えた。さらにその先、雪が完全に繋がったことを見計らってスキーを履いた。



片貝南又発電所

 

 杉の落ち葉交じりの雪道をKさんと語らいながらシール登高。そうこうしていると次第に谷が開け、遥か高みの稜線が見通せるようになってきた。



稜線が見えてきた


 標高1000m前後にあるハザードは人工物。その一は堰堤下のスノーブリッジ。まだ厚みがあったので通過に支障は無かったものの、崩落は時間の問題だろう。


スノーブリッジを渡る


 その二は、標高1050m辺りで立ち塞がった大きな堰堤。一週間前の記録によれば左岸沿いに難なくトラバースできたらしいが、今や下部の石垣がすっかり露出している。Kさんは立ち木や根曲竹につかまりながら堰堤上部を高巻き、この難所を突破。私も後に続くが、帽子を落としそうになったり、スキーが立ち木に絡まったりで随分と手こずってしまった。これで約30分のロス。ちなみに帰路では空身で堰堤脇を高巻いて下り、ロープで板やザックの受け渡しをする作戦に変更。これでスムーズに突破することが出来た。



堰堤に差し掛かる



堰堤を高巻く私

 左手から合流する釜谷を過ぎると愈々猫又谷となる。写真で見た通り、ともかく何処までも一直線で遮るものが無いスケールの大きな谷だ。その上部に目を凝らすと先行者の姿が見えた。最も先行している2名は芥子粒ほどにしか見えない。その後には2名のスキーヤーが続いている。

 


釜谷出合い

 所々にデブリやその痕跡の雪塊があるが、総じて雪面はフラットで滑り易そうだ。堰堤でもたついている間に単独スキーヤーが追い付いてきた。聞けば地元魚津の方。同氏はデブリランドと化した阿部木谷を敬遠して猫又谷を登ることにした由。そうとも知らず、この谷をたまたま選んだ我々は幸運だったようだ。

 


一直線に伸びる猫又谷



こんな物騒なところにテントが一張り この住民とは途中ですれ違った



真新しいデブリ



前日のものらしきシュプール



魚津の方が追い付いてきた


 

 谷の斜度は二次曲線。標高が上がるつれ加速度的に斜度がきつくなる。シール登高が苦しくなってきたところで早めにアイゼンに替えた。気温上昇で雪面が緩み、一歩一歩が足首まで埋まる湿雪ラッセル。急斜面なので中々のハードワークだ。稜線直下は一層勾配が急になる。ここは先達が刻んだステップで随分と助けられた。



先行する三名 コルが見えてからが長い



コル直下のデブリ



コルへの急登


 11時40分、稜線に到着。剣岳の雄姿が一気に御開帳。後立山連峰の峰々もその背後に鎮座している。残念ながら剣岳の上部は雲の中、最後まで全貌を拝むことが出来なかったが、それでも普段眺める機会の無い富山県側からのパノラミック・ビューは感動ものだった。



山頂に雲がかかった剣岳



山頂までは、まだ先が長い



ツボ足のまま山頂を目指す



急斜面は四駆で直登


 コルで一休みした後、ハイクアップを再開する。更に200mの標高差を登り上げ、12時35分、念願の猫又山山頂に立った。ここまでの所要時間は7時間10分。頂には先行していたスキーヤー二人と魚津の方が滑降準備に余念がない。彼等は我々の登頂と相前後して滑降して行った。釜谷山方面に目をやるとツボ足のトレースが伸びている。おそらく一番先行していた二人のものだろう。





釜谷山、その先には毛勝山



後立山連峰



剣岳は最後までご機嫌斜め


 景色を十分堪能したところで、午後1時ちょうど、我々もドロップイン。文句なしの極上のザラメは最高のお味。舌鼓を打ちながらあっと言う間にコルへと下山。コルからも気持ちの良い熟成ザラメが続く。途中にあったデブリとクレバスを除けば何処までも快適スロープだ。


五龍岳へ向かってドロップイン



快適ザラメを飛ばすKさん



同上



私もドロップイン



剣岳に向かって滑降



コルへの急斜面



再びコルへ


 Kさんと写真を撮り合いながらどんどん高度を下げて行く。途中登ってきた登山者とお喋りしながらも、45分足らずで先ほどの剣呑な堰堤まで下ってきた。堰堤を高巻いてクリアした後も快適な滑りが続く。林道も自動運転で雪が切れるまで労せず滑り降りることができた。


コル直下を滑降するKさん



同上



同私



どこまでも続くスロープ





かなり下ってきた



テントの方に撮ってもらった



猫又山に別れを告げ、、、



板とブーツを背に下る


 発電所の手前で軽登山靴に換装。背にした板とブーツは重いが、心地よい疲労と充足感に包まれ、スタート地点へとのんびりと下ったのだった。道端で摘む山の恵みというおまけ付きで。


行動時間  10時間5分


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