那須岳  栃木・福島県 1917m    百名山 

  
 

201043

以前より積雪期の那須岳に是非チャレンジしてみたいと思っていた。アクセスも良くてお手軽にアルペン的山容を楽しめる上、蜂の茶屋周辺での「想像を絶する」という烈風にも大いに興味をそそられた。その一方で厳冬期を選ぶことには、二の足を踏む気持ちもあった。茶臼岳をもって百名山の那須岳制覇と解釈する向きもあるようだが、この山域の最高峰は三本槍岳であるし、やはりこの頂を踏まずして那須岳を終えたことにはならないだろう。しかし、積雪の多い厳冬期に茶臼、朝日、三本槍の三山を日帰りするのはちょっと厳しそうだし、泊りがけも面倒だ。前置きが長くなったが、こうした理由から春先の今の時期を選んで憧れの那須に向かった。

 自宅を朝3時前に出発、東北自動車道をひた走る。宇都宮を過ぎた辺りから、横風による速度規制の表示が目に付くようになってきた。平地でこれだけ風が強いと蜂の茶屋では一体どういう状況になるのであろうか。那須ICから那須湯元、ロープウエイと進み峠の茶屋のPに車を停めた。時刻は午前5時半、広い駐車場にあるのはポツンと自分の車だけ。身支度している間も車が強風に揺さぶられ、先が思いやられるが、意を決し6時前に歩き出した。登山指導所に立ち寄り登山計画書を提出、よく締まった雪の斜面から石と氷がミックスした登山道を快調に登る。幸い心配していた風も大したことはないようだ。



           蜂の茶屋への登り                            茶臼岳を見上げる



  歩き始めて1時間足らずで蜂の茶屋が間近に迫るところまで来た。周りを見渡すと左手に雪渓がある。茶臼岳へはここを直登した方が早そうだ。毎度のことだが、こうした横着をするとろくなことが無い。しばらく雪渓を登るが、雪面は一旦融けた雪が氷と化してキックステップが殆ど利かない。そのうち傾斜がどんどんきつくなって足元が危うくなってきた。アイゼンを履くのも面倒なので雪渓の際の石伝いにコースを進むことにする。ショートカットのつもりが、結局余計に時間がかかってしまった。右手に火山ガス噴出口が間近に迫るが、道はそちらとは反対側のロープウエイ側に回りこんでいる。出発から1時間15分で茶臼岳の頂上に立った。



             茶臼岳頂上                              旭岳方面を望む



            三本槍岳には雪がある                         朝日岳は夏山そのもの


 
低い標高にも関らずアルペン的風貌の朝日岳が眼前に聳えている。雪を頂いた日光や福島県の山々が展望されるが、情けないことになじみの無い山ばかりでどれ一つとして同定できない。

 茶臼岳は本日の通過点、頂を早々に後にして次の目標地へと向かう。お鉢巡りをして蜂の茶屋へ。この頃には風はさらに収まっていて拍子抜けする。茶屋を過ぎると事前の調査で最も気掛かりであった雪渓のトラバースにかかる。トレースらしきものは微かに残されているが、ここしばらく登山者が入っていなかったようだ。踏み跡ほとんどが融けて、ただの急斜面になっている。アイゼンを付けるべきか迷ったが、つぼ足で行くことにする。ピッケルを斜面に深く打ち込んでホールドをしっかり確保した上で、登山靴を雪に蹴りこんでステップをつくりながら一歩一歩慎重に進む。雪面は固く、なかなかフラットなスタンスが作れない。滑落したら絶対に止まらないだろう。下を見れば圧倒される高度感。つぼ足で無理するのは止めて途中の草付きでアイゼンを付けた。爪同士をひっかけないように注意しながらトラバースを続け、この難場を渡りきった。その後は、雪と岩交じりの道が続く。アイゼンは邪魔なので外してザックに取り付ける。

剣が峰から朝日岳の肩に着いたが、朝日往復はパス、帰路に寄ることにして先を急いだ。熊見曽根の標識のあるピークを越えると雪で覆われた三本槍岳のたおやかなピークが一段と迫って来る。しばらく雪の斜面を下ると北温泉分岐に着いた。この辺りにトレースは全く見当たらない。歩きやすそうなところを選んだが、ちょっと北寄りに行き過ぎたかも知れない。一旦登ってまた下る。広大な雪の斜面なのでどこでも歩くことができる。まだ朝の早い時間なので雪も締まっていて快適だ。正面に迫った斜面を登っていくが、ピークとは反対側に行ってしまい、頂上近くになってハイ松漕ぎをする羽目になった。歩き始めから4時間で三本槍岳の頂に立った。正面には旭岳や甲子山(かっしと読むらしい)は殆ど岩肌が見えないほど真っ白に雪をまとっている。どうやらこの三本槍辺りを境に気象が違うようだ。茶臼岳は太平洋側とするならば、旭岳以北は裏日本と言ったところか。地図を見ると旭岳山頂に行く登山道は無いが、この時期であれば深い笹に悩まされることもなく縦走できるかも知れない。





             三本槍岳を見上げる                        かなりガスが上がってきた




那須岳最高峰


しばらく眺望を楽しんだ後、下りにかかる。今度は夏道沿いに進む。ここで本日初めての登山者とすれ違った。更にその先で二人目に会ったが、その後は朝日岳まで誰とも会うことが無かった。三本槍岳に足を伸ばす人はどうやらそれ程多くはないらしい。北温泉分岐が近づく頃、気温が上がったせいか雪面を頻繁に踏み抜くようになった。茶臼岳方面にはガスがかかり始めており、朝日岳も見え隠れしている。朝日岳の肩からピークへはひと登り。頂上には登山者数名が居た。騒々しい頂上を早々に後にして下山にかかるが、この辺りから次々と登山者と行き交うようになった。気温はどんどん上昇して道のぬかるみも酷い。往路とは様変わりで雪渓のトラバースもしっかり踏まれてフラットな道になっている。今度はアイゼン無しでも全く不安はない。同じ場所でもちょっとタイミングが違うとこれほど変わるものか。蜂の茶屋を素通りした後、ぬかるみに足を取られながら往路を下る。12時半に駐車場に帰着した。





                                                    朝日岳山頂



         朝日岳を眺める(蜂の茶屋から下山途中)


実は今回は仕入れたばかりの新兵器を持参してみた。ガーミン社のGPSである。しかしあろうことか、前日に電池を入れたばかりなのに茶臼岳で電池切れになってしまった。電池が古かったのか、操作習得のため電源を入れっぱなしで遊びすぎたせいかも知れない。まだこのおもちゃをフル活用できるようになるには時間がかかりそうだ。


行動時間                         6時間35
歩行時間
                         6時間
標準コースタイム            6時間5


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