中妻山(通称)BC               
 


2014年2月22日(土)


 今週末は概ね晴れ間が期待できそうなので、1ヶ月ぶりに北信の山々で遊ぶことにした。ただ、気象予報によると、午前中は弱い冬型が残りそうなのが気がかり。このため、天気が冴えない場合は無難な佐渡山へ、その後天候が回復するようなら黒姫山外輪山まで登り返して南西斜面を滑るという計画を立てた。ところが大橋林道分岐点に着いてみれば、予想に反してこれ以上無いと言う程のピーカンだった。

 駐車スペースには先着の車が
4台。その主は既に出発したようでもぬけの殻だ。車の中で朝食にパクついていると長野ナンバーの車が入ってきた。運転していたのは中年男性。出発準備に余念のない彼と話をすると、先行トレース次第ではあるが、中妻山か乙妻山へ向かうとのこと。ちなみに中妻山とは高妻山と乙妻山の間にある2297mピークの通称だ。天気も最高だし、佐渡山でお茶を濁すのは勿体無い。私も偵察がてら高妻、乙妻方面に足を伸ばして見ることにした。

 但し、もし一人ラッセルを強いられるようなら、もともと予定した佐渡山に転進、午後
1時を回って山頂に到達できないようなら引き返すと、一応Plan-Bのルールを決めて出発した。時刻は午前720分。


           大橋の駐車スペース                          U字溝の一本道が続く


 大橋林道には立派なトレースがついていた。それも
U字状に深くて、まるでボブスレーコースのようだ。黒姫山登山道への分岐を過ぎると林道とお別れ。トレースは小尾根へと続き、勾配もきつくなってきた。この辺りで先に出発していた長野の方に追いついた。


           黒姫山登山道との分岐                              さらに奥へ


 きつい登りも一段落し、フラットになると間もなく佐渡山のコルに到着。ここから一旦シールオフして氷沢川へと滑降てする。まだ陽の射さない西面とあって重いパウダーながら、
150mほどを気持ちよく滑り降りた。沢筋に下りたところで長野の方と再び合流。シールを貼って一緒に歩き出す。彼は長野市在住とのことでこの山域にとても詳しい。歩きながら色々と薀蓄を披露して頂いた。


            小尾根を登る長野の方                              佐渡山コル


 中妻山からは二つの尾根が派生しているが、先行トレースは南側の尾根(はしご尾根と言うらしい)を登っているので、迷わず追随する。

 傾斜が増すにつれ、長野の方が遅れだしたので先行させてもらう。歩きながら滑走予定斜面の地形を観察すると、尾根の北東面には気持ちよさそうな疎林のスロープが広がっている。問題はその下にある
V字谷を下ることになること。沢床は緩い傾斜ながら、両岸が迫っているので要注意だ。一見きれいに見えるが、よく見ると新雪を被ってマイルドになったデブリと思しき凸凹もある。


正面がはしご尾根、右の沢を滑降する予定


 高度が上がると所々クラストした斜面が出て来たのでクトーを装着した。樹林帯を抜けて細尾根に出ると遥か上方に休憩中の先行パーティ数名を視認。
1912mピークでガス欠対策の行動食を補給した以外は休まず先を急ぐ。最後の登りとなる無木立の斜面に差し掛かると、雪は一段と深くなりトレースの深さは膝まである。ノートレースでは早々にギブアップしていただろう。


                高妻山                                 森林限界を抜ける 


 先行パーティに感謝しつつ一歩また一歩と高みを目指す。ようやく先ほどのパーティが休んでいた個所に到着。辺りにはピットチェックの跡が残されていた。

 ここから勾配はが一段と増してきた。新雪の下には堅いアイスバーンが隠れていたりしてシール登行が苦しい。先行パーティはどうやらここでシートラーゲンに切り替えている。私も右へならえでスキーをザックにくくりつけて歩く。足跡を忠実に追っていても、ツボ足ではクラストを突き抜けて太腿まで潜ってしまうところもあって楽ではない。


             雪はさらに深く、、、                             振り返れば黒姫山も


 そのうち先行パーティの皆さんがドロップし始めた。気持ちよさそうにシュプールを描きながら三々五々滑り降りていくのを横目に喘ぎ登っていると、急登もそろそろ最終段階。傾斜が緩んでくるとピークは目前。再びシール登行に切り替えて、
1225分中妻山の頂きに立った。


中妻山山頂、背景は北アルプス



               高妻山                                      乙妻山


 乙妻山は目と鼻の先、
30分もかからず行けそうだ。一方、反対側の高妻山へと続く稜線は、かなり痩せているのでスキーのままでは無理だろう。どちらもいつか機会があればということで今回は割愛する。

 360
度の大パノラマを網膜とファインダーにしっかり焼き付けたので、思い残すことなし。12時40分、滑降開始。山頂近辺はクラストやモナカがあったりして失望させられたが、下るにつれ丁度良い具合にフカフカとなってきた。所々で底付きがあるものの、広大な一枚バーンでパウダーを思い切り満喫できた。


滑降開始


 一旦
1912mピーク辺りまで滑り降りたところで下山コースの選択が迫られた。先行パーティのうち、どうやら二人はピークから直接沢床へ降りているが、その他はトラバース気味に尾根沿いを下っている。今日は気温も低く雪も安定しているようなので、余り深く考えることもなく沢ルートを選択。尾根の途中から沢へと滑り込んだ。

 急傾斜ながらやや重のパウダーで底付きもなく快適な斜面。ところが息継ぎで立ち止まった私のすぐ横を、自分がスキーカットした個所から流れ出た幅
5mほどのスラフがダーッと落ちて行った。長さにして20mほどだろうか。表層なので足はすくわれても大事には至らなかったろうが、心臓に悪いことこの上ない。やはり尾根伝いにもう少し下るべきだった。


            沢へ向かって滑降                                流れるスラフ



沢コース中盤



沢コース終盤、安全圏へ


 滑り降りた沢床自体は緩傾斜ながら、両側は急斜面で先細りという典型的地形の罠。この
V字谷を一目散に通過し、安全圏の氷沢川の出合まで滑り降りて一息ついた。そこでは先行パーティの皆さんも休憩中。丁重にラッセル感謝の念を伝えて一足先に下山する。

 再びシールを貼って佐渡山コルへ
150mの登り返し。コルでシールを剥がしていると、先ほどの長野の方が追い付いてきた。中妻登頂は諦めて1912mピーク辺りからドロップしたとのこと。どうやらコルへの登り返しの途中で追い越してしまったらしい。

 コルからは雪質も悪くなるし、細尾根なのであまり滑りは楽しめない。最後は林道をボブスレー滑走して大橋に帰着した。今日は思い掛けず、素晴らしい好天の下、満足度の高い
BCをエンジョイできた。しかし、経験の浅い私ごときヘボスキーヤーがリスクの高い地形を他に人もいない状況で滑降したのは大いなる反省点。それでなくとも危険満載の単独での山スキー、もっとリスクミニマムを心掛けねば。。。


行動時間 7時間


  
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