2018年7月10日(火)
先日、三浦豪太氏の講演を聞く機会があった。主なテーマは父親の雄一郎氏を如何に計画的にサポートし、エベレストに登頂せしめたかということなのだが、体力低下一途の高齢者が登山にどう向き合うかという観点から大いに参考になった。
興味深かったのは、雄一郎氏が80歳という高齢にも関わらず、20歳台という驚異的な筋力を保持していたこと。しかしその反面、肺活量や酸素摂取量など心肺機能は年相応であったこと。さらに百歳を目前にした祖父の敬三氏も若々しい筋力とは裏腹に、聴覚の衰えからバランス感覚などはやはり年相応であったこと。
つまり「加齢によりあちこちの身体機能の低下は避けられないが、筋力を強化することで運動能力はある程度補うことができる」ということらしい。筋肉の質も重要で有酸素運動だけでは遅筋に偏るため、適切な筋トレで瞬発力のある速筋を鍛えることも重要とのこと。週二回山を歩くのが理想的だが、それが無理ならスクワットが最も効果的とか。
という訳で早速感化された私も山トレ。向かう先は丹沢と並んでアクセスの良い八ヶ岳だ。今回は赤岳山荘を起点に、阿弥陀岳からスタートして赤岳、横岳、硫黄岳を周回するつもり。新調したばかりのトレッキングシューズの試し履きにも、変化のあるコースなのでお誂え向きだろう。
午前4時50分、駐車場を後にする。通いなれた南沢へ。意気込みとは裏腹に、軽い上り坂なのに今一つ調子が出ない。アンクルウエイトを付けたように足が重いし息が切れる。情けなくもメタボ体形の同年配のおやじハイカーにも置いて行かれてしまう有様。結局最後までペースは上がらないまま、行者小屋に到着。ここで一旦小休止し、阿弥陀岳へと向かう。
癒しの空間 その一
盟主赤岳
行者小屋から阿弥陀岳に向かう
中岳とのコルまでは緩やかな上り坂、ここから山頂ヘは一転して梯子や鎖続きの辛い登りとなる。7時55分、阿弥陀岳山頂到着。360度の展望は素晴らしいが、先が長いので行動食を摂ったら即刻下山を開始。夏山は午前中が勝負。早くも赤岳から横岳にかけての稜線は東側から押し寄せた雲に飲み込まれつつあるので気が気ではない。
癒しの空間 その二
逆光の中で大同心が角のよう
中岳とのコルより権現岳 バックは南アルプス
阿弥陀岳山頂までもう一息
阿弥陀岳山頂
ガスが押し寄せてきた
結構な急斜面を下る
中岳の途中から阿弥陀岳を振り返る
スタートしてから4時間経過。相変わらず調子が出ない。足に憑りついた見えないアンクルウエイトは重くなるばかり。赤岳への急登に何とか耐え、9時40分に山頂到着。ガスが辺り一帯を覆い隠し、視界はゼロだ。ここで二回目の行動食。いくら不調でもハンガーノックの追い打ちだけは避けないといけない。
中岳から赤岳を望む
赤岳山頂直下
すっかりガスに包まれた頂上小屋
一休みした後、重い腰を上げて次の目標、横岳へと歩を進める。視界が全く無いので登山道脇に咲く可憐な高山植物だけが慰めだ。中でもそこかしこに咲き乱れる紫のチシマギキョウがちょうど見頃を迎えていて見事だった。横岳周辺だけに咲くというツクモグサにはご対面できなかった。高山植物マニアでは無いが、ちょっと残念。
そこかしこに咲くチシマギキョウ
地味な横岳山頂を過ぎると長い下り坂。ロープで仕切られた登山道の両脇にはピンクの可憐な花を咲かせたコマクサが群生していた。それにしても、何を好き好んでこんな荒涼とした砂礫地に根を生やすのだろう。
コマクサも見頃
硫黄岳山荘は素通りし硫黄岳へ直行する。体調は相変わらず芳しくない。緩い上り坂にも関わらず足の運びは我ながら情けない程緩慢だ。12時10分、どこが山頂か分からないほど広々した頂に到着。ここで帰路に備えて本日三回目の行動食を摂る。身体が重いのは食い過ぎのせいかもと思いつつ。。。
硫黄岳山荘が見えてきた
硫黄岳へ向かう
10分ほど休んで下山開始。ここからは新調したトレッキングシューズを重点的にチェックすることになる。特にザレた斜面、濡れた岩、苔むした石、木の根っこ等がポイント。先代の他社製シューズはソールが擦り減ってスリップ多発。飯豊であわや滑落の憂き目にもあっている。今回のものは新しいせいもあるのだろうが、どんな路面に対しても格段にグリップが良かった。どうやら良い買い物をしたようだ。
硫黄岳より下山
北沢の様子 前日の雨のせいか水量が多い
終了間際に奇妙な体験。北沢沿いの林道を歩いていると、中年男性の単独ハイカーが登ってきて「美濃戸山荘へはこの道で良いのでしょうか?」と宣う。林道歩きが中々終わらないので、不安になって途中から引き返してきた由。GPSを示して「この通り間違いないですよ」と安心してもらった。もし私に出会わなかったら、この方はどうするつもりだったのだろうか。
行動時間 9時間50分
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