南駒ヶ岳   長野県 2841m          二百名山
 越百山  長野県 2613m 三百名山 
 

20121024

 木曽側からアクセスする中央アルプスは気軽に行くにはちょっと遠い。自宅から登山口まで片道300km近くあるので日帰りするにはそれなりの覚悟が要るのだ。それでも、どうしても歩いておきたい周回コースがある。伊南川ダムから北沢尾根を登り南駒ヶ岳から越百山を縦走、遠見尾根を下って起点に戻るというもの。空木岳から眺めた南駒ヶ岳のどっしりした姿はとても印象的だったし、越百山は響きのいいネーミングに惹かれる。さらにその中間にある仙涯嶺は日本百高山のひとつ。ロングコースではあるが、一粒で三度美味しいミニ縦走が楽しめるのだ。

 夜半に自宅を出発。伊奈川ダムの少し上流にある登山口には
5時半頃に着いた。先着の車は2台。どちらも無人のようだ。いつものように朝食と身支度を済ませて550分に歩き出す。朝の遅い谷間ながら、既にヘッドランプが要らない程度には明るくなっている。

 林道のゲートの右側に設けられた歩行者通路を抜けて今朝沢橋を渡った。その正面には空木岳方面に向かう林道との分岐がある。



          今朝沢橋のゲート(下山時撮影)                    紅葉を楽しみながらの林道歩き


 30
分ほどで越百山の登山口、私にとっては下山口となる福栃平に着いた。この分岐を尻目に更に林道歩きを続ける。明るくなるほどに谷間や周囲の山々が色付いてきた。黄色主体の中に鮮烈な赤の交じる見事な紅葉に単調な林道歩きが癒される。


              越百山への分岐                               渓谷の紅葉


 ゲートから小一時間ほどで北沢尾根への取り付き点に到着。梯子を登って登山道に入った。路は暫く山腹を沢沿いに進み、その後急登となって一気に尾根へと向かっていく。尾根筋に出ると途端に見晴らしが良くなって真っ白に冠雪した御嶽山が目に入った。昨日の寒冷前線通過で相当量の積雪があったようだ。おそらくこちらの中央アルプスも同じような状況だろう。冬山装備は何一つ担いでこなかったが大丈夫だろうか。


            南駒ケ岳への登山口                             冠雪した御嶽山


 標高が
2000m辺りに達したところで、山脈の西にあって朝の遅い北沢尾根にもようやく陽光がさしてきた。暫くすると登山道に薄らと新雪が見られるようになってきた。その量は次第に増えて、標高2500m辺りでは山はすっかり冬化粧となった。ここから眺める空木岳や南駒ヶ岳は真っ白だ。


           次第に雪道となり、、、                         真っ白な空木岳が見えてきた


 2600m
辺りから背丈ほどもあるハイマツ帯となった。ここから思いもかけないハードワークが始まった。重い湿雪がどっさり乗った絡み合った枝をかき分けて押し進まねばならない。これがとんでもない重労働だ。感覚的には新雪のラッセル。ハイマツとの格闘ですぐに体中雪まみれになってしまった。手袋もびしょ濡れで氷漬け状態。寒さに弱い私の指先はもう感覚が無い。


南駒ヶ岳の全貌が姿を現した



空木岳



       ハイマツの枝ですっかり覆われた登山道           枝が密生した上に雪があるので道がどこかわからない


 岩稜帯に入るとハイマツ漕ぎからは開放されたものの、今度は雪にコーティングされて滑りやすい岩とルートファインディングに手こずることになった。岩稜の小ピークの上で道を見失い何度か行きつ戻りつした。


            岩稜帯はもうすぐ                            雪でコーティングされた岩


 樹林帯までは我ながら快調に飛ばしてきたが、これらの抵抗勢力にパワーを削がれてガックリとペースダウン。
4時間程度で山頂に立てそうだなどとの甘い期待は吹き飛んで、山頂到着は1050分、丁度5時間かかってしまった。しかし苦しいハイマツ・ラッセルのご褒美は最高だった。天下一品の大展望だ。


           山頂に到着(バックは空木から木曽駒方面)


 空木岳から木曽駒へと連なる中央アルプスの峰々、その遠く背後には槍穂が姿を見せている。伊那谷の向こうには南アルプスは屏風のごとくオールスターが勢ぞろい。塩見岳の右横には、すっかり雪を纏った富士山が顔を覗かせている。真下に目をやれば、百間ナギに飲み込まれそうな危うい場所に摺鉢窪避難小屋の赤い屋根が見えている。


南アルプスと富士山、ヘリが飛来して上空でホバリング



      木曽駒と宝剣岳(ピークがちょこんと見える)              百間ナギと摺鉢窪避難小屋の赤屋根



これから向かう越百山への縦走路(水滴がレンズについてしまった)


 キリがないので、そろそろ頂上を後にしよう。これから先はハイマツ地獄は無さそうだし、全体的に下り加減なので気が楽だ。気持ちの良い稜線をどんどん下って鞍部から登り返すと仙涯嶺山頂直下のちょっとした広場に着いた。ここで本日始めて登山者と出会った。同年輩の単独だ。彼は
4時過ぎに今朝沢橋のゲートを出発して、今日は摺鉢窪の避難小屋泊りとのこと。北沢尾根のハイマツ漕ぎが酷いことを伝えると、北沢尾根の下山は止めて、空木岳経由でうさぎ平へ向かう由。もう一人名古屋から来た若い人が越百山をピストンしたとも言っていた。これで駐車場にあった2台の車のオーナーが判明したわけだ。


             仙涯嶺はもうすぐ                               南駒ヶ岳を振り返る


 彼に別れを告げ、次のピークへと向かう。再び下って緩やかに登り返し、越百山山頂に到着。ここから安平路山へと連なる山々が展望できるが、この辺りの山々は無案内でどれが何やらさっぱり。そのさらに遠くにあるどっしりした山は、おそらく恵那山とやっと見当がつく程度だ。


                越百山山頂                             中アルプス南部を展望


 ここで時刻は既に午後
1時を回ってしまった。秋の日は釣瓶落とし。あまりのんびりしていると暗くなってしまう。何枚かシャッターを切っただけで下山を開始する。


              越百小屋を見下ろす                            南駒ヶ岳の見納め


 登山道は雪で滑りやすいが、北沢尾根とは比較にならないほど歩きやすい。次第に右足のふくらはぎの疼痛がひどくなってきた。恐る恐る患部を見るとかなり腫れてきている。自転車で転んで打撲した際の内出血が完治していないらしい。

 越百小屋を通り過ぎる。まだ営業しているのか、オーナーらしき御仁が屋根を修理していた。小屋裏の登り返しは疲れた足には堪える。

 いつの間にか雪が消えると、今度は紅葉が目を楽しませてくれるようになった。やがて沢音が近くなり、下のコルから一気に下って林道へと出た。カメラ片手に素晴らしい紅葉を愛でながらのんびり歩き、4時20分、今朝沢橋のゲートに帰着した。






行動時間  10時間30
歩行時間  9時間50

Map
 Track Weather  Map 
  トップ                              山歩き 
inserted by FC2 system