万太郎山BC  1956m 群馬・新潟県              
 


2016
3月5日(土)


 BCを志すからには一度はチャレンジしたいと夢見ていた谷川岳から赤谷川源頭、そして万太郎山から毛渡沢へと下るロングコース。今年は雪不足が懸念される上、ロープウェイ始発が8時半では日没後の下山になる恐れがあるということで半ば諦めていた。それが、思いもかけない幸運と熟達のBC師匠に恵まれ、図らずも実現することができた。

 実はこの日、群馬の
Kさんと芝倉沢滑降を予定していたのだが、早朝ロープウェイ乗り場に来てみると、スキー大会のため臨時に午前7時から運転を開始するとの嬉しいサプライズ。急遽予定を変更し、万太郎を目指すことになった。

 ロープウェイ山頂駅に着いてみると、これまたラッキーなことにリフトも稼働中。労せずして標高
1500m近い天神峠まで高度を稼ぐことができた。


天神峠からの素晴しい眺め


 
735分に行動開始。リフト降り場からスキーを履いて天神尾根を少し下る。ここが実質的な出発点だ。早速シールを貼ってはみたものの、雪面が硬いのでシートラーゲンに変更し、スキーを担ぐ。


         スキー滑降で少し下り、、、                         板を担いでハイクアップ開始


 足回りには、今回初めて
CampTec対応アイゼンを使ってみることにした。超軽量、かつ着脱が簡単なところが気に入っていたのだが、歩き始めて5分もしない内に片足が外れてしまった。その後何度かセットしなおすものの、結果は同じ。結局、Kさんにつま先と踵間の連結ベルトの長さを調整してもらい、ようやくまともに使えるようになった。自宅でのリハーサルが不十分だったのかも。このトラブルで貴重な時間を15分も浪費してしまった。


            熊穴沢ノ頭の急斜面                        後はひたすら登り続けるだけ


 熊穴沢ノ頭の急斜面を慎重に下った後は、肩ノ小屋に向かって一気に登り上げる。すっかり春めいた陽気に高度差
400mの登行に大汗をかかされた。肩ノ小屋直下まで来たところで、シールオフしスキーを履く。主稜線を登る大勢の登山者やボーダーを尻目にヒツゴウ沢源頭をトラバース。これまでとは打って変わって全く人気のない万太郎、仙ノ倉山へと続く稜線へと向かう。


トラバース開始



稜線を滑るKさん



万太郎谷は藪と笹だらけ


 万太郎谷を見下ろしながら狭い稜線を滑るのは高度感もあるのでえらく緊張を強いらる。自分一人だったら絶対にアイゼン歩行を選択するシチュエーションだ。
Kさんの「万一転倒したらウイペットで即止めて下さい」の声に内心怖気づく。

 1764m
ピーク辺りでスキーを背にシートラーゲンに切り替えたものの、ダブルウイペットをフル稼働させての急登に気は休まらない。11時を少々回った頃、オジカ沢ノ頭に到着。この頂きから俯瞰する赤谷川源頭は幻想的、どこまでも白く、たおやかで聞きしに勝る非日常的景色だ。


オジカ沢ノ頭直下の急登


 ピークで再びスキーに替えてスキーヤーズライトの斜面をややトラバース気味に赤谷川に向かって滑り降りていく。雪質はネットリと重いが、ようやく緊張感から解放されスキーが楽しめた。沢が左へ大きくドッグレッグする変曲点まで滑り降りたところで大休止。エネルギー補充をして万太郎山への約
500mの登り返しに備えた。


幻想的な赤谷沢源頭



滑降開始



赤谷沢源頭を滑るKさん



オジカ沢ノ頭を振り返る


 シールを貼って登行再開。南東に延びる尾根を登って行く。
Kさんはブンリン特製の直付けクトー、3Dアセントにものを言わせ、急斜面をぐいぐいと直登。私はジグを切りながらのマイペース登行だ。


           ボトム ここから登り返し                              笹原が露出


 上部へ行くほどに笹が目立ち始め、残る僅かな雪を踏んでシール登行する有様。今後降雪が無ければ早晩、遅くとも今月中には一面の笹原と化してしまうだろう。


            谷川岳は遥か彼方                       万太郎山の南東斜面は笹原がほぼ露出


 午後
140分に万太郎山山頂に到着。まだまだ先が長いのでゆっくりもしていられない。シールオフして滑降準備。仙ノ倉山へと続く稜線を50mほど滑り降り、広大な一枚バーンに思い思いのシュプールを描きながら毛渡沢へと落ちていく。


毛渡沢へ向けて万太郎山山頂から滑降



            仙ノ倉山を正面に、、、                            どんどん落ちる



さらに落ちる


 午後になり気温が上昇したせいか、重い雪のコントロールに苦労しながらも、大自然の中で存分に滑降をエンジョイできた。しかし標高が
1400mを切る辺りまで降りると様相は一変。樹林帯の急斜面は見渡す限りのデブリランドと化している。そこかしこで巨大な雪玉がゴロゴロと自然落下し、自重に耐えきれないのか、落下中からバラバラと崩壊している。これがデブリの正体らしい。

 そんなことに気を取られる余裕もあればこそ、雪質は悪化の一途をたどり私の足前ではもはやターンもままならない状態になってきた。一度は無理な方向転換を試みて前方宙返り。危うく立木に激突しそうになり
Kさんをハラハラさせてしまった。


毛渡沢のこの有様


 かくして延々と斜滑降、キックターンを繰り返し、藪との格闘を経て何とか毛渡沢に降り立つことができた。そこで見たものは、この時期には有り得ない完全な沢割れ。スノーブリッジなどは影も形もなく、すっかり地肌の露出した沢には滔々と水が流れている。シッケイ沢出会いを過ぎても同様の状況で、昨年のシッケイ沢下降時に見た光景とは何という様変わりだろうか。

 スキーを漕ぎながら右岸を下っていくが、途中の枝沢も沢割れしているのでスノーブリッジを求めて高巻きをせざるを得ない。その都度階段登行を強いられ、かかる労力は半端ない。


渡渉するKさん


 そろそろ左岸に渡らねばという頃、渡渉点を探し求めていると石伝い渡れそうな恰好な浅瀬があった。渡り切る寸前に足を滑らせてドボンし片足のブーツが浸水してしまったが、何とか無事に対岸へと渡ることができた。

 その後も枝沢を越えるのに一苦労。お粗末なことに私はスノーブリッジから転落してもう片足のブーツにも浸水させてしまった。これで両足ともブーツの中はじゃぶじゃぶ状態だ。

 群馬大ヒュッテでやれやれとしたのも束の間、その先も雪切れでスキーの着脱が忙しい。私の場合、シール無のヒールフリー歩行に慣れていないので、ちょっとした登りでも難渋しスキーを外すので尚更だ。

 極め付けは関越高速道の橋脚をくぐってからの土樽駅への長い上り坂。目指す登り電車の時刻が迫っているので疲労困憊の足に鞭打ち必死に歩いた。何とか
188分発の普通列車には滑り込みセーフでやれやれ。

 天神平から
10時間半の長丁場、ともかく懸命に歩き、滑り、転んではまた立ち上がるという、朝ドラではないが、九転び十起きの完全燃焼した一日でした。K師匠には随分と足を引っ張り、また多々ご心配をかけました。お陰様で大願成就。改めて心より感謝です。


行動時間  
10時間30


  
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