巻機山BC   新潟・群馬県 1967m            百名山
 

2018年12月23日(日)

 3年ぶり5度目となる巻機山での山スキー。頂上付近はホワイトアウトの中で刺さったストックが抜けないような肉厚モナカに足を取られ、やっと標高を下げても激藪とグズグズの重雪に大苦戦を強いられた。

 寡雪の巻機山を甘く見過ぎていた反省もさること、パウダーやザラメ滑降だけが山スキーではないと己を戒め、活を入れる良い機会となった。それにしても、こうした難題を軽々クリアするBC歴30年のKさんのテクニックには感服するばかり。山スキーはスキルと経験がものをいう世界、実に奥が深いと改めて痛感させられた1日だった。

 まだ夜の明けやらぬ5時過ぎに291号線の冬期登山口に到着。過去の記憶に照らすと、これが同じ登山口かと疑う程積雪が少ない。例年背丈を越える壁を攀じ登らなければ雪原に出られなかったのに今回はせいぜい腰程度の高さだ。恥ずかしながら、この時点でこれが何を意味するのか正確には理解していなかった私。その極楽トンボぶりを後で嫌というほど思い知ることになる。


ハイクアップ開始


 5時50分にハイクアップ開始。雪面は堅いが板を踏み込むと表面が割れて沈み込む。所謂モナカだが、気温が上昇すれば問題ないだろうと、なおも能天気な私。前日のものと思しきスノーシューのトレースを追って二子沢川沿いを緩やかに登っていく。

 9月に遡行した米子沢を渡ると桜坂。ここから井戸尾根に取りつく。積雪豊富であれば、どこを歩いても自由なのだが、今シーズンはまだ雪に埋もれていない濃い藪に阻まれるので夏道を歩くしかない。尾根筋に出ると、前方には井戸の壁が黒々と聳えている。この不気味な色合いは藪が密生している証左だ。


桜坂を通過 左に天狗岩が見える



夏道をシール登高


 唯一通行可能な夏道を何とかシール登高で凌いでいくと、スノーシューのトレースは突如消え失せてしまった。どうやらここから引き返したらしい。トレースが無くともプチ・ラッセルで大した労苦ではない。

 やがて斜度が緩くなりブナ林となった。ここは樹間も広くスキーになりそうだが、問題は激藪の井戸壁。どう対処しようかと持ち前の能天気にも暗雲がかかり始めた。。。


ブナ林を登るKさん


 標高1300mを越える辺りからは、井戸壁に輪をかけて先が見通せない程、濃い藪が密生するようになる。果てしない藪地獄を抜けると、ニセ巻機の広大なスロープが広がっていた。


藪を抜けるKさん



天狗岩 バックの稜線に雪庇はまだついていない



ニセ巻機が姿を現した


 急登が始まる前にクトーを装着。この頃になるとヤマテンの予報通り稜線には濃いガスがかかり始めた。クラストした急斜面にクトーを効かせながら慎重に標高を稼いでいく。


ブッシュはまだ埋まっていない


 10時50分、ニセ巻機山頂に到着。ここからはクトーを外し、ヒールを固定。シールのまま避難小屋へ滑降した。半ば雪に埋もれた避難小屋前で大休止。行動食を取り最後の登りに備える。


避難小屋へ下降



避難小屋の様子


 巻機山へはもう一登り。しかし天候は益々悪化の一途。ガスに加え風も強まってきた。御機屋の頂に立つと吹き付ける強風に立っているのもやっと。予定していた標高最高点まで足を延ばすことは断念し、ここから滑降することにした。一応御機屋が山頂とされていることでもあり、ピークハントの目的は達せられたとしても良いだろう。


怪鳥モンスターのお出迎え


 風を避けるため、北側の樹林帯の中でシールオフし滑降準備を整える。11時45分、滑降開始。その3秒後には雪の上に這いつくばっていた。ホワイトアウトで空間識を失っている上、ウインドパックされた雪面に足を取られてしまったのだ。これがこの日の試練の始まり。その後も何度かコケながら避難小屋へと滑り降りた。むしろ転げ落ちたというべきか。


山頂で滑降準備をする私



視界が一瞬開けた隙に一気に滑降するKさん



モナカに難儀する私


 再びシールでニセ巻機へと登り上げ第2ラウンド開始。この急斜面は流石に転げ落ちる訳にはいかないのでガスの合間を縫って慎重に滑り降りる。モナカの滑り方を思い出して少し調子も出て来た。しかし、それも藪地獄に突入するまで。少しでも疎の箇所を求めてウロウロし、顔に枝のビンタを何発も食らいながら高度を下げていく。


ニセ巻機から滑降スタートするKさん



華麗にジャンプターンをきめるKさん



ブッシュを縫って滑降



ニセ巻機を滑る私



藪地獄を前に途方に暮れる



覚悟を決めて藪と格闘する私


 藪地獄の後は、藪の無いブナ林で多少の癒し。そして愈々最大の難関、井戸の壁だ。狭い登山道以外は藪に阻まれ、殆どスキーにならない。かと言って幅2メールのV字状の急斜面を滑降する技術は私には無いので、行けるところまで行って潔くスキーを担ぐことにした。どうやら後続のスキーヤーやボーダーがいたらしい。彼等もギブアップした模様で、シートラーゲンで下った足跡が残っていた。


ブナ林でやっとスキーが楽しめた



登山道は狭く雪はグサグサ


 しかし、スキーが絡まる頭上の枝との格闘や、重い湿雪に膝まで嵌りながらの下降もスキーと変わらぬ苦行だった。たまらず斜度が緩んだところで再びスキーを履くことに。登山道を滑るが、ボーゲンを多用したため瀕死の太腿は踏ん張りがきかず、コケなくても良いところで何度もコケてしまい、桜坂までが実に長かった。

 ともあれ、ホワイトアウト、悪雪、激藪という3点セットの悪条件の中でケガもせず下山できたのは行幸だった。最後は二子沢川沿いをボブスレーで下り登山口に帰着。時刻は15時25分。その直後から予報通り雨が降り出した。


行動時間 9時間35分


Equipment  Voile Supercharger Woman 164cm /Scarpa F1Evo


  
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