巻機山BC  群馬・新潟県 1967m             百名山
 


2015
3月7日(土)


 年に一度は訪れている巻機山。季節を問わず、期待に応えてくれるお気に入りの山だが、今年の織姫様はいつになくご機嫌斜めだったようだ。ホワイトアウトで登頂は断念。上部はガリガリのアイスバーン、下部はモナカやストップスノーでスキー滑降もままならない試練の一日だった。

 午前
7時に清水集落手前の駐車スペースに到着。そこには横浜と新潟ナンバーの車が2台。その主は既に出発している様子。720分、私も車を後にする。今年から設置されたポストに登山届を提出し、高さ5mはあろうかという壁を登って雪原へと出た。


       雪壁の高さは驚くほど 右は登山ポスト         雪原を行く


 朝の冷え込みで雪面はカリカリ。二子沢川、米子沢と渡り、深い雪の下にある桜坂を通過し、井戸尾根へと取りついた。クラストした急斜面はシールだけでは少々心もとない。クトーをフル活用して登っていると先行する
2人の姿が見えて来た。シールが滑ってかなり苦戦しているようだ。


早朝は稜線が見えていたのだが、、、



             桜坂は深い雪の下               井戸尾根に取り付く


 彼らより一足先に尾根筋に登り上げた。この先最初の難関、井戸の壁が待ち構えている。途中までシール&クトーで頑張ったものの、いよいよ急斜面にさしかかるともういけない。スキーを背負ってつぼ足で歩き始めるが、陽の当たり始めたところは表面のクラストを突き抜けて太股まで潜ってしまう。仕方が無いので日陰を求めて横移動、これで少し歩き易くなった。それでも深く潜る時があるので、人間
4駆よろしく四つん這いになって荷重分散を図った。


               尾根筋に出た                井戸の壁を登り始める


 標高差約
300mの辛い急登を凌ぐと米子沢を望む開けた稜線へと出た。沢筋を観察するとデブリも出ていないし、割れてもいない。きれいなものだ。状況が許せば米子沢を滑降してみよう(とこの時は呑気に考えていた)。


米子沢の様子


 景色を眺めながら一息ついていると単独のスキーヤーが追いついてきた。話をすると彼も米子沢を考えている由。休憩に入った彼を後に登行を続ける。


上越のマッターホルン 大源田山のピークが見える


 一頻り樹林帯を登ると、無木立の大
バーンが目の前に広がった。次の難関、ニセ巻機だ。先行する一人がスキーを担いで登っているのが見える。雪面は至る所テラテラと光っているので無理は禁物、私もシートラーゲンに切り替えることにした。


                稜線を行く                 やがてニセ巻機のバーンが登場


 アイゼンを装着していると、先ほどのスキーヤーが追いついてきた。彼は比較的柔らかそうな雪のついている右側の斜面をシール登行するとのことだ。

 スキーを背負って歩き出すと強い風に煽られてかなり振られてしまう。バランスを崩さないようストックでしっかり身体を確保しながら登って行く。やっかいなのは一見カチカチの雪面。モナカの皮のようなもので片足に全体重を乗せると、ズボッと突き抜けてしまう。何とも始末が悪い。


ニセ巻機への登り



           割引岳方面は晴れている             ニセ巻機まであと一息


 足元ばかりに注意が集中して気がつかなかったが、いつの間にか山頂付近にガスに覆われていた。ニセ巻機の山頂には先行していたスキーヤーが様子見で停滞中。天気が今一つなので引き返すかどうか逡巡しているらしい。

 私は能天気にもそのうちガスは晴れるだろうと根拠のない期待を抱きつつ前進を継続。シールのまま避難小屋方向へと滑り降りた。ガスはいよいよ濃くなり左手の樹林モンスターが辛うじて視界に入る程度。


           ニセ巻機のピーク                  モンスターが辛うじて見えている


 巻機山への登りにかかると天も地もわからないほどホワイトアウト状態となってきた。高みへと登っているうちは斜度で方向感が得られるから良いが、フラットになると途端に感覚がおかしくなってしまう。

 頻繁に
GPSをチェックしながら、暫く前進を続けたが、天候は一向に回復しそうにない。時刻は既に午後1時を回ってしまった。残念ながらタイムアップ。山頂を目前に悔しいが撤退することにした。

 シールを剥がして滑りだすが、雪面はカチカチのアイスバーン。それにホワイトアウトの中で空間識を失調しているので他愛なくこけてしまう。殆ど横滑りのままで避難小屋方向に向かった。下りきったところで再びシールオンして登り返す。ニセ巻機近くまで来て自分のトレースを見つけた時は正直ホッとした。


      ニセ巻機を降りるとやっと視界が回復           井戸の壁はデブリが散乱


 ニセ巻機ピークからは、視界がゼロに近いのでワンターン毎にストップし進行方向を慎重に見定めながら滑り降りた。下部まで来てようやく視界が回復。これでスキーになると思いきや、超重雪やモナカで滑りにくいことこの上ない。追い打ちをかけるように林間コースに入ってからはストップスノーに苛まれる。

 井戸の壁はデブリだらけになっていて、時折直径
1mほどの雪玉が転げ落ちてくる。自重で崩壊してしまうのでそれ以上巨大化はしないものの、こんな雪塊に体当たりされたら只では済みそうにない。

 雪玉に肝を冷やしたり、曲がらず、滑らないスキーに拷問とも言える滑降を
1時間。何とか午後3時前に登山口に帰り着いた。残っていたのは私と先ほどのスキーヤーの車だけ。既に帰り支度を終えていた彼曰く、ホワイトアウトと雪質に苦闘しながらも、GPSを頼りに山頂から米子沢を滑降したとのこと。あれだけ視界が閉ざされている中でよく初志貫徹できたものだ。


行動時間  
7時間40


  
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