巻機山BC               百名山
 


2014年3月4日(火)


 待ちに待った本州付近をすっぽり覆う移動性高気圧。翌日からまた山は荒れること必至なので、このピンポイントの快晴を利用しない手はない。1月以来ご無沙汰の上越で、かつ登っただけ滑る山という基準で選んだ行き先は、過去4回訪れて何故かとても相性のいい巻機山。今回も嬉しいサプライズがあったりして、お山は私の期待に十二分に応えてくれた。

 午前
7時を回る頃、清水集落手前にあるいつもの冬季登山口に一番乗りで路駐。車中で朝食にパクついていると、後続の車がやって来た。車の主は団塊世代の方。お話しをすると、何と私の拙い本頁をご覧になっておられる由。嬉しいやら恥ずかしいやら。お名前をお聞きするとイニシャルはOさん。確かEva父さんのブログに登場する方ではないかと思ってお聞きすると案の定だった。

 そうこうしているうちに、当の
Eva父さんが登場。先日東谷山で大変お世話になった後、いずれどこかで再びお目にかかれるとは思ってはいたが、これほど早く再会の機会が巡って来るとは。おまけにご一緒しませんかと声を掛けて頂いたので、またまたご厚意に甘えることとなった。


           支度しているEva父さん、Oさん                      ここからハイクアップ開始


 
730分、3人パーティの先頭を切って歩き出す。雪原には、さらさらの新雪が20cmほど積もっていて、以前のトレースがうっすら残っている程度。プチラッセルを続けて行くと、沢に架かる橋の辺りでトレースが一条合流してきた。どうやら清水方面から入った単独の先行者がいるらしい。


           青空の下に白銀の峰                            桜坂の様子(下山時撮影)


 深い雪の下にある無雪期駐車場の桜坂を過ぎ、井戸尾根へと取り付く。先行者がつけたトレースに大いに助けられていたが、それも井戸の壁の途中まで。単独氏は壁半ばにしてシール登行を諦め、ツボ足に切り替えて直登している。


            井戸尾根に取り付く                             正面は井戸の壁


 我々はシールを継続。ところが、ジグザグの斜め登行を強いられる急斜面。私のスキー(技術?)では、新雪の下にある固くクラストした層に歯が立たず、直付けクトーをもってしても何度も横滑りしてしまう。見かねた
EVA父さん、Oさんのアシスト宜しきを得て、ようやく井戸の壁をシールのままで登りきることができた。積雪シーズン3度目にして初めての快挙だ。


米子沢の様子(デブリ見当たらずきれいなもの)



谷川岳方面(とんがったピークは上越のマッターホルンこと、大源太山)


 その後、夏道を忠実に辿る先行者のトレースを外れ、
3人でラッセルを交替しつつ最短距離を行く。樹林限界を出ると遮るもののないのっぺりした大雪原。ここを過ぎると、いよいよ前巻機の急登が控えている。私はクラストした急斜面をシール登行する自信はないので早々とギブアップ宣言、スキーを背負って登ることにした。


              樹林帯最後の登り                             前巻機が目前


 
Eva父さんは少し上部へ上がって偵察していたが、結局シールは無理と判断。お二人もアイゼン登行に切り替えることになった。私はと言えば、早々とアイゼンを履いたものの、歩きだした途端ヒドンクラックに胸まで嵌ってしまい、抜け出すのに一苦労する始末。

 お二人を追って登り出すと、風と太陽に鍛えられた斜面は想像以上にカチカチだった。場所によってはアイゼンの歯の先端がやっと食い込むほどに固く氷化している。帰途滑降時にこのアイスバーンが少しでも緩んでくれることを祈るばかり。

 標高差
200mの辛い急登を終えて、正午少し前に前(にせ)巻機山の山頂に立った。目の前には一年ぶりにお目にかかった「本物」の織姫様のたおやかで優美なお姿。しかし今年の織姫様は鎧をまとっているようで、そこかしこアイスバーンだらけだ。


          Eva父さん 前巻機山頂にて                        ちょっとお疲れ気味のOさん


 避難小屋へシールのまま滑り降りようとして、いきなりアイスバーンに足をすくわれて転けてしまった。雪のある場所を選んで何とか鞍部へと滑り込みやれやれと一息。ここから最後の
200mの登り。


            巻機山への最後の登り                              山頂は目前


 山腹を少し巻き気味に登って午後1時に巻機山山頂に立った。どこかですれ違うのではと思っていた単独の先行者は牛ヶ岳方面を歩いていた。少々霞ががってしまったものの、山頂からの
360度の眺めは絶品。流石にEva父さん、Oさんはこの山域を熟知されていて、谷川、越後、尾瀬の山々の同定はお手の物だ。私には見る角度が変わっただけで見慣れているはずの山もどれが何やら(_;)


             滑降準備をするお二人                           カッコつけた私


 穏やかな陽気だが、やはり標高
2000m近い山頂の風は冷たい。早々にシールオフして滑降モードに切り替える。一旦ガリガリにクラストした稜線を夏道に沿って戻り、米子沢の源頭に向けて滑り込んだ。最初にEva父さんのしなやかで華麗な滑り。次いでOさんが負けず劣らず美しい小回りを披露する。最後は私がブサイクなターンを刻んで3本の一筆書きが完成。お二人の一定周波数、一定振幅の見事なターンと比較すると技量の差は歴然。私のは酔っ払いの千鳥足だ。


左からEva父さん、Oさん、私の一筆書き


 源頭の日溜まりでランチを済ませた後は、再びシールを貼って前巻機へ登り返し。相変わらずガリガリの状態なので、滑り降りることができるのか、はたまた滑り落ちることになるのか心配だ。まず、
Eva父さんが、夏道を上から見て右側の雪を拾いながら滑り降りることに。新雪の層の下はアイスバーンなので、スキーカットされると新雪がそのままスラフと化してザーッと雪崩落ちている。


前巻機から下の台地へ滑り降りる


 間を置いて
Oさん、そして私。ターンもままならないのでキックターンを交えながら、何とか平坦部分まで無事降りることができた。私一人であれば、以前経験のある米子沢に近い斜面を選んでいたはずで、急斜面の途中で進退窮まっていたかも知れない。


安定した小回りで滑り降りてくるOさん


 この難所の後はしばらく重雪ながらツリーランの快適な滑りを楽しみながら尾根を下る。最後の難所は井戸の壁。サラサラだった新雪は既に重い湿った雪に変質し、スキーカットされた傍から剥げ落ちて雪崩れ、デブリランドと化している。私が不用意に雪面を切って流れ出したスラフに
Eva父さんが押し流されそうになり、木に掴まって逃れる場面も。


          デブリランドと化した井戸の壁


 かくして3人で
デブリの山を築いて尾根を降りた後は、雪原をボブスレー滑降して出発点へ。午後335分、無事帰着することができた。

 今回、期せずして
Eva父さん、Oさんという熟達の方々とご一緒させて頂き、私のBC史に残る最高の山スキーを楽しむことができた。この場を借りて厚く御礼申し上げたい。


行動時間 8時間5


  
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