巻機山BC  新潟・群馬県 1967m   百名山    
   

2012413

 巻機山は百名山のなかで最も好きな山の一つだ。上信越や日光の名峰の展望台としての好立地に加え、相性が良いのか、過去2回登っていずれも文句なしの快晴に恵まれた。山の姿形も気に入っている。苦労してニセ巻機の急坂を登りつめた時に目の前に広がるたおやかな山容がいかにも秀麗なのだ。

 ところが
3回目の今回はちょっと様子が違う。関越トンネルを抜けて新潟県に入ると、晴れの予報に反してどんよりした空模様。山は低く垂れこめた雲にすっかり覆われている。

 午前
6時過ぎに登山の起点となる291号線の道路脇に車を止めた。冬季は除雪されていない桜坂の駐車場が使えないからだ。先客は新潟ナンバーの車が一台。身支度を整えている間に、年配の登山者がつぼ足で出発していった。遅れること15分、道路脇に設置されたポストに登山者カードを入れて私も車を後にした。

 道路から雪原に踏み込むと、台風一過のように辺り一面に小枝や葉っぱが無数に散乱していた。こうした障害物を避けては通れないので板やシールが傷つきそうでちょっと心配。気温は車の温度計で
4Cと高く、雪は水分たっぷりの重いざらめになっている。


              雪面はゴミだらけ                              山は雲の中


 しばらく雪原のクロカンをやって、無雪期の出発点となる桜坂に到着。ここから井戸尾根へと向かう。夏道よりずっと左手から尾根に取り付いた。天気が好天する気配は無く、そのうちぽつぽつと雨が落ちて来る始末でモチベーションは低下の一途だ。

 暫くはジグを切りながらシール登行をしていたが、井戸の壁がいよいよ急になりギブアップ、ここでスキー板を背負ってつぼ足に切り替えた。足を前に出すと膝が雪面につく程の急傾斜であるし、グズグズの雪質なので脛から膝ラッセル状態になって中々捗らない。標高
900mから1150m辺りまでの250mの高度差に大汗をかいてしまった。


            桜坂はすっかり雪の下                           井戸の壁に苦戦


 勾配が緩くなったところで再びシールに替えて、次第に疎になってきたブナ林のなかを行く。時折右手の方角に米子頭山がガスの中から顔を覗かせてくれる。左手正面にはガスに煙る天狗岩も見えてきた。


                米子頭山方面                                天狗岩


 やがて樹林帯を抜けて、白一色のニセ巻機山への急登となる。この辺りからガスが一段と濃くなって視界は
10m、殆どホワイトアウト状態だ。所々にぱっくり口をあけた裂け目があるので滑降の際は十分に注意せねばとノートする。雪面は次第にウインドクラストしてカチカチの上、急斜面。転ばぬよう慎重にキックターンしながらジグザグに登行する。
 


          これなら快適にツリーランできそう                     ニセ巻機はいずこ?


 ニセ巻機の頂上に立つとあら不思議、天気が良い方向に急変、見る見るガスが晴れてきた。またもや巻機山が微笑んでくれたのだ。ガスの幕はどんどん引かれて割引岳や米子頭山などもお目見え、やはりこの山とは相性が良いのだ。歓迎に早く応えようと、シールは付けたままヒールだけ固定し避難小屋のある鞍部へ向けて滑り降りて行く。小屋は完全に雪に埋もれて影も形もない。


         ガスのニセ巻機山山頂                       ところがホンモノの巻機山は微笑んでくれた


 再びシール登行を続け、最後の一登りで
3度目の巻機山山頂に立った。1400mの高低差に5時間かかってしまった。先行していた登山者はもう牛ヶ岳方面から引き返して来た。私よりも年配とお見受けするが、脱帽する健脚ぶりだ。再び巻機山が与えてくれた大展望を楽しみたいが、冷たい風がもろに吹き付けて来るのでゆっくりしていられない。シールを剥がしたり、ヘルメットをかぶったりして滑降の準備を急ぐ。


くっきりと姿を現した割引岳



越後三山



米子頭山へと続く稜線と谷川岳



日光の山々


 正午ちょうどに下山開始。美しいバーンが広がる米子沢の上部を滑る誘惑にかられたが、まだ山スキー
1年生の身、もう少し修行を積んでからにしよう。山頂を割引岳方面にトラバースして行き、鞍部に向けて滑り降りた。スキーのエッジが適度に利いて気持ちよい。


ニセ巻機側から眺めた気持ち良さそうな米子沢源頭の斜面


 避難小屋の辺りは風が穏やかだったので、ここでランチタイム。春の陽だまりでしっかり栄養を補給した後、再びシールを貼ってニセ巻機へと登り返した。頂上でシールを外そうとしたところでハプニング。板から降りた途端、いきなりズボッと胸まで雪に嵌ってしまったのだ。春先の尾根筋には雪庇でも無いところに、こうしたシェルントのようなものが出来るのだろうか。

 穴から何とか這い出して、笹が頭を覗かせている安全地帯まで這って行った。やれやれ、これで一安心と胸を撫で下ろしたところにボーダー
3人組が登場。元気な若者達でこれから米子沢を滑るとのことだった。後で下山途中に眺めた米子沢はデブリの巣と化していたが、無事だったろうか。

 若者達と別れた後、シールを外して再び滑降モードにして
Go!私にはちょっと急斜面だが、板が引っ掛かったり、急にブレーキがかかることも無く、最高の滑りができた。


            雪庇の凄まじい天狗尾根                           快適なツリーラン


 ブナの疎林のツリーランも快適で、気がつけば井戸の壁まで一気に滑り降りてしまった。ここは壁と言うだけあって相当な急斜面で、かつ樹木の密度が濃いので私の腕ではターンをつなげることができない。斜滑降と横滑りで降りて行く。スキー板に切られた斜面の雪がスラフのごとくデロデロと流れ落ちて気味が悪い。

 傾斜が少し緩くなったところから積極的にターンを試みたものの、雪質がえらく重くて2回転倒した。いずれも雪の斜面で止められず、ずるずると深いツリーホールに滑り落ちてしまった。体より上にあるスキーを外して脱出するのに一苦労。それにしても今日はよくよく穴に嵌る日だ。


            米子沢はデブリだらけ                        ツリーホールに吸い込まれる


 桜坂まで降りて本日のお楽しみは無事終了、後は沢沿いにのんびりスケーティングしながら車に帰着した。ニセ巻機から
1時間弱しかかかっていない。やはりスキーは機動力が違う。

行動時間  6時間40

 

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