長野県 2296m | |
2011年5月31日 例年より早い入梅に加え、台風の襲来で土砂降りの週末になってしまった。結局、どこにも行けず仕舞い。最近はすっかり山の霊気、フィトンチッド中毒に罹っているらしい。週に一回はこの霊気を浴びないと窒息しそうになるのだ。雨模様の日が続く中、台風一過の晴れ間が期待できるとの嬉しい予報あり。このチャンスを逃したくないので、高い高速料金には目をつぶって平日の山歩きに出かけることにした。6月中旬から1000円据え置き料金が廃止になるそうなので、残るチャンスを有効に使えないのは悔しいが。 今回の行き先は以前から気になっていた中央アルプス北端の経ヶ岳だ。まだ膝の調子に不安があるので、前回の御嶽山同様、無理をしないリハビリモードで歩くこととする。いつものように夜半に自宅を出た。時折長距離トラックが行き交うだけのガラガラの中央高速を走り続け、諏訪湖辺りで夜明けを迎えた。空を見上げれば予報通りの晴れ模様だ。しかも秋の空のように澄み切って透明度が高い。左側には南アルプスの鋸岳や甲斐駒、右前方には中央アルプスの山並みがくっきりと展望できる。伊那ICで降りると、経ヶ岳の麓、仲仙寺までは26km、30分程度の僅かな行程だ。新築の山門のすぐ脇のスペースに車をとめた。他に車は一台もない。どうやら今日は貸切りの山歩きになりそうだ。 5時過ぎに出発。境内を抜けて右手にある小道に入った。周囲は鬱蒼とした杉林だ。途中分岐がいくつもあって迷う。適当に見当をつけながら進んでいくと経ヶ岳の標示が出てきた。笹の下草がややうるさいものの、登山道は緩やか、かつ一定の勾配を保っているし、昨日あれだけ雨が降ったにも関らず、泥濘も出来ておらずとても歩きやすい。「ピット」なる意味不明の案内が出てくるが、五合目の3ピットでおしまい。それ以降は出てこないが、あれは一体何だろう。四合目からは南箕輪村提供の合目表記された立派な案内板が現れる。五合目から傾斜がややきつくなって来るが、木々の間から木曽駒ヶ岳方面の眺めが疲れを癒してくれる。心配した膝の調子も悪くは無いようだ。道はいつしか山腹から尾根筋へと出た。涼しい風が吹き抜けて気持ち良い。やがて尾根はどんどん痩せて一つ目のピークに着いた。ここが七合目だ。標高1915m、まだ400m近い高度差が控えているのだ。行く手には八合目と九合目のピークが聳えている。
七合目からは鞍部に向かって下っていくが、すぐに登り返すようになる。しばらく急な登りに耐えると周囲の大きく開けた八合目に着く。ここは視界を遮る樹木が少ないため、眺望が素晴らしい。振り返れば伊那の市街地が眼下に広がっているし、その背後には南アルプスの山々が屏風のように連なっている。気温の上昇とともに、朝方の透明度の高い大気は湿気の多い夏空に変化したらしい。どこからともなく立ち上ってきたガスで時折視界が遮られてしまい残念だ。中央アルプスの雪を頂いた正面の山は茶臼山だろうか。一番高いのは木曽駒ヶ岳、尖がったピークは宝剣岳か。
八合目からは再び下って九合目へと登り返していく。この途中で二週間前に登った御嶽山が姿を現した。前回よりも残雪が増えているような感じだが、気のせいだろうか。それとも見る角度によるのだろうか。尾根を直登するように勾配は一段ときつくなるが、時折垣間見える景色に励まされながら、九合目のピークに着いた。ここは樹木があるので八合目ほどの眺望はない。九合目を過ぎると緩やかな登り道となる。木々の間から今度は北アルプスが見えてきた。槍穂高や表銀座の峰々がくっきりと見える。乗鞍岳を探したが枝に邪魔されて今一確認できなかった。経ヶ岳の頂には8時40分に到着。今回も独り占めの頂上だ。しかしあまりパッとしないゴールなのだ。木々に囲まれて殆ど展望はない上、唯一開けた木曽駒方面はすっかり白いベールに包まれている。
軽い食事をとった後は早々に引き上げることにする。紫外線が強くなったせいか、朝方よりも山麓の新緑がくっきりと美しい。ともかくカラマツの新緑が素晴らしいのだ。登りでは足元に注意が集中していたこともあるのだろう。この素晴らしい景観に目が行ってなかった。明るい日差しを浴びるほどにコントラストを増す若葉の緑には本当に目が洗われるようだ。歩き易い登山道と新緑のおかげであっという間に登山口近くまで下りてくることができた。往路を忠実にトラックバックしたつもりだったが、どこかで分岐の選択を誤ったらしい。見覚えの無い舗装道路に出てしまった。どうやら羽広観音に下ってしまった模様。仲仙寺へは巻き気味に行くところを、真直ぐ下りてしまったようだ。戻り道の舗装道路が途切れたので、民家の庭先を失礼してショートカットする。出発点の仲仙寺には11時半に帰着した。
今回は予想にたがわず、大展望独り占めの静かな山歩きであった。結局行き交ったハイカーは一人だけ。フィトンチッドを体一杯浴びて新緑の美しさを心行くまで満喫することが出来た。帰路、最寄りの「みはらしの湯」に寄ったところ残念ながら休館日、それではと伊那市内へと向かい、ゆっくり昼食をとってから帰宅の途についた。 行動時間 6時間20分 歩行時間 6時間(登り3時間半、下り2時間半)
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