櫛形山   山梨県 2052m       二百名山   
 

2018年10月28日(日)

 自宅から200Km圏内の未踏の日本二百名山としては、秩父の武甲山と南アルプスの東端にある櫛形山の二座を残している。いずれも難易度が低く、いつでも行けるという気安さが、かえって足を遠ざけていたのかも知れない。しかし、このところ長距離ドライブが次第に負担になってきたこともあり、やっと足を向けてみる気になった。今回訪れたのは櫛形山。アヤメの群落で知られる山だが、もう一つの魅力は豊かな自然を象徴する巨樹の林立する原生林だ。

 夜明け前に県民の森グリーンロッジ脇の駐車場に到着。朝食、トイレなどいつものルーティーンを済ませ、明るくなるのを待ってからスタートした。時刻は5時55分。歩き出してすぐに圧倒されるのは檜の巨木群。自然が育んだ原生林ではないにしても、この山の豊かな植生を予感させるには十分だ。


整備の行き届いた登山道


 中尾根登山道は一定勾配を保ちながらジグザグにつけられておりとても歩きやすい。標高1400mを越えたところで林道に出た。これは県営林道櫛形山線。南アルプス市、富士川町間を結んでいる。

 歩き出してから1時間半。後方からヒタヒタと早いペースで女性が追い付いてきた。トレランシューズで軽やかな足さばき。あっという間に後ろ姿が見えなくなってしまった。その後もトレランの若者が風のように抜き去って行った。自分もあと40歳若ければ、彼等のように山を走り回る喜びが味わえたかも知れない。残念ながらもはや古希の身、時すでに遅しだ。

 標高が上がると、何とも奇抜なデザインに造形された樹齢不詳のカラマツ、コメツガやシラビソのオンパレードとなった。人知を超えた自然の想像力と言うべきか、こうしたユニークな巨樹を鑑賞しながら歩き続け、8時35分に「櫛形山」と山頂標識のあるピークに着いた。


山頂標識



櫛形山からは富士山だけが唯一の展望


 日本二百名山70座目をハントできたと喜んでいたが、帰宅後調べると、櫛形山の三角点は更に500mほど進んだ奥千重にあるとのこと。昭文社の地図はこちらを櫛形山としている。ここで疑問になるのは、何をもって山頂と定義するかということ。三角点は測量上の都合で、必ずしも山の最高地点に設けられる訳ではない。櫛形山の場合、標高公称値は2051.7m。しかし山頂標識のある地点は実際にGPSで計測した結果凡そ2060m。つまり最高地点を山頂と定義するならば、山頂標識のあるピークが本当の山頂ということになる。ちなみに国土地理院よりは、「最高地点が三角点、標高点の表示されている山頂とは異なる峰に存在することが明らかになった場合、標高を改訂する」という指針が示されている。

 いずれにしても疑問の余地を残さないように、ちょっと足を延ばして三角点にタッチしておけばよかった。ハイキングの山となめ切って事前確認を手抜きしたせいで、後味の悪いピークハントになってしまった。

 ともあれ「山頂」らしき地点で大休止した後、次のマイルストーン、裸山へと向かった。樹林に囲まれた櫛形山とは異なり、名前からして展望が見込めそうだ。途中で学校行事の登山と思しき大パーティと遭遇。凡そ100人の少年達が元気いっぱい山頂を目指していた。しかし騒々しいことこの上ない。

 裸山には30分程で到着。期待通りの展望台で南アルプスの北部が一望の下にあった。大パノラマを満喫したら下山開始。季節外れでアヤメのアの字も無いアヤメ平を経由し、北尾根登山道へと向かった。


裸山からの白峰三山の展望 左から農鳥岳、間ノ岳、北岳



櫛形山最高点ピーク


 巨樹林立の中尾根とは植生が異なるのか、見上げると多くの木々がサルオガセを纏っているし、足元の林床は地衣類に覆われすっかり深山の雰囲気だ。さらに標高を下げると広葉樹が見事に色づいていた。


サルオガセの森



同上 アヤメ平にて





 櫛形山林道とクロスした後も更に北尾根を下山するのが当初の予定だったのだが、何を勘違いしたのか、これを朝方車で登ってきた高尾伊奈ヶ林道と思い込んでしまった。結果的には標高1400m前後に広がる見事な紅葉を心行くまで鑑賞することができたのだが、とても他人様には恥ずかしくて言えないとんだ怪我の功名だった。


展望台から甲府が一望の下






 結局、そんなルートミスのせいで伊奈ヶ湖まで再び中尾根を下山することになってしまった。しかも先ほどの大集団登山グループの最後尾についてしまったので、否が応でも騒々しい大名行列の一員としてだ。


中尾根登山口に帰着


 駐車場には11時50分に帰着。半日足らずとはいえ、中身の濃いショートハイクが楽しめた。櫛形山=ハイキングレベルの山というレッテルは撤回。次はアヤメの季節に再訪してみたい。


行動時間 5時間55分


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