小蓮華山BC    2766m 新潟・長野県        
   

201452日(金)

 一度は訪れてみたいと思っていた金山沢。栂池から船越ノ頭経由が定番らしいが、単独だと帰りの足が問題になってしまう。猿倉に車を置いて自転車で栂池に向かうのも一手。しかし、スキーやザックを一旦栂池にデポしたり、事後の自転車回収などロジスティックスがやはり面倒そうだ。ここは単純に猿倉ベースで金山沢をピストンすることにした。滑降する沢の様子を事前にチェックできるメリットもある。なお、滑降スタート地点は小蓮華山山頂とするつもり。

 早朝
6時前に猿倉に到着。先着の車は多数、身支度をしている間にもスキーを担いだ連中がどんどん出発している。6時丁度に私もハイクアップを始めたものの、すぐに手袋を忘れたことに気づき引き返す。戻ってきたところで今度は日焼け止めを忘れたことに気がつく。また引き返すのは面倒なので、こんがりローストを覚悟してハイクアップを続行。三度目の正直で、今日は何かトラブルに見舞われそうと嫌な予感。それがまさか現実になろうとは。。。


          駐車場は5割がた埋まっていた                    林道にはずっと雪がつながっている


 林道には雪はまだたっぷり残っていて猿倉からずっとつながっていた。暫く林道沿いをシール登行。長走沢を過ぎると、沢は大雪渓へ向かって左へ大きくドッグレッグしている。ここが金山沢との合流地点だ。沢に入るとすぐに土砂混じりのデブリが行く手を塞いだ。その先にも累々と全層雪崩の跡がある。右往左往しながら通行できそうなパスを見つけて登って行く。


                金山沢入口                             土砂混じりのデブリ


 杓子岳が背後に望めるようになると沢幅が広がり明るくなってきた。それにしても至るところデブリだらけ、こんなことで帰りはスキーになるのだろうかと心配になる。


           至るところ荒れている


 標高
2000mを越えると沢の中央部は表層雪崩の巣になってきた。破断面の厚さは20cmから40cm程度。数メータの幅で、50m程度滑り落ちた跡が無数に見られる。そのあとは地肌が綺麗にむき出しになっている。まるで巨人達が寄ってたかって尻セードしたかのよう。


               デブリだらけ                               表層雪崩の滑り台


 更に標高を上げるとデブリこそないものの、雪面は極めて不安定。ハードバーンの上に乗った30cmくらいの新雪がいつ剥げ落ちてもおかしくない状況だ。ストックを突くとズボッとリングまで埋まるが、その下はカチカチと言った具合。


斜度が増してきた


 キックターンの際に雪面を崩さないよう注意しながら、急斜面をジグザグ登行していく。湿ったシールに雪が付いて高下駄状態になってきた。重量の増した板の取り回しが大変だ。加えて照り返しの暑さと足首ラッセル。かなりバテバテになって稜線に出た。


            さらに傾斜が増して、                              よくやく稜線に


 アウターを着込むなど小休止してから小蓮華山を目指す。ツボ足の登山者が二人先行しているのが見える。小蓮華山には
12時に到着。デブリと悪雪との格闘に消耗させられて結局6時間近くかかってしまった。それでも山頂からの景色は全ての苦労を忘れさせるほどだ。


縦走する登山者



ド迫力の白馬岳



雪倉岳


 大パノラマを楽しんだ後は、滑降準備に入る。入れ違いで登ってきた単独登山者に挨拶して滑降開始。稜線に登り上げた地点まで一気に滑り降りた。稜線上のスキーは新雪が適度に締まっており快適だった。

 さて、ここからが本日の正念場。登ってきたルートは急傾斜で何かあれば遥か下まで落ちてしまう。雪の状態からして止めておいた良さそうだ。一方スキーヤーズレフトの斜面は
300m程度の落差があるが、その下は地図上2301ピークのある台地になっている。こっちにしよう。

 まずは落とせる雪は落としてしまおうと斜滑降でスキーカット。下には誰もいないことを確認してから、すっぱり雪面を切ってみたが何も起きない。次に一回ターンしてみたが、それでも雪は落ちない。これなら大丈夫そうだと軽く考えて、連続ターンで下降を始めた。

 重パウダーながら中々快適と呑気にスキーを楽しんでいると、いきなり足をすくわれて横倒しになった。気がつけば怒涛のように押し寄せるスラフに流されている。埋まらないようにもがき、態勢を立て直そうと必死になる。

 どの位流されたかわからないが、何とかスラフの流れから脱出することが出来た。私の両側にはスラフが音を立てて流れ続けている。運良く私の立ち位置はスラフが避けてくれている。まるで川の中洲にいるようだ。流れは中々止まらない。永遠にも思えた時間だが、帰宅後
GPSで確認するとせいぜい3分ほどのことだ。


長さ200mほど、盛大に雪崩た


 少し収まったところで雪の落ちた跡を滑り降りる。ところが、私より早い速度でまだスラフが落下しているので、あたかも自分が逆走しているかのような奇妙な感覚に陥る。台地の安全圏まで滑りおりたところでやっと人心地がついた。

 そこにはスキーヤーが一人。一部始終を目撃していたらしい。彼は船越ノ頭からスキーカットで落とせる雪は全部落としてから滑り降りたとのことだ。その後は傾斜も緩み、雪の落ちた斜面なので滑りにくさを別にすれば可もなく不可もなく大雪渓まで滑り降りた。


行動時間  
7時間25


あとがき

 ハードバーン上に新雪という不安定な状況を知りながら取った行動が甘かった。2度のスキーカットだけで判断して通常の滑降を行ってしまったこと。それに例え雪が落なくても斜滑降主体でいつでも安全圏に逃げることができるような手立てを考えなかったこと。こうした己の未熟さを猛省するとともに、まだまだ修行が必要だと痛感した一日でした。

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