甲武信ヶ岳  山梨・埼玉・長野県 2475m   百名山
   


  
2009年4月28日

 秩父の山々は丹沢と並んで首都圏に近いが、意外に懐が深く長いアプローチを要する場合もある。北面からアクセスする甲武信ヶ岳もその一つだ。埼玉県、山梨県、長野県の県境にある山だが、八ヶ岳の麓を掠めてぐるりと長野県側から回りこんで来なければならない。自宅を真夜中に出発し中央道へ。須玉ICで降りて野辺山高原方面へと向かう。山間の里、川上村を過ぎて目的地、毛木平には午前5時を少し回った頃到着した。広い駐車場には私が一番乗りである。朝食を摂ったり、靴を履いたり身支度をしているうち、ふと気がつくと隣にもう一台来ていた。愛媛ナンバーの車だ。彼の地からわざわざ秩父まで足を運ぶと言うことは百名山狙いだろうか。


 二週間前の八ヶ岳権現岳は異様に暑かったが、一転して今日は厳しい寒気だ。薄着で歩き出すが風が肌を刺すように冷たい。笛吹川沿いの緩い登り道を遡り徐々に高度を上げていく。所々に雪が現れそのうち登山道は完全に雪に覆われたので簡易アイゼンを装着した。残雪はよく締まっていて、踏みしめるたびにキュキュと心地よい音がする。権現岳とは比較にならないほど歩きやすい。千曲川の源流沿いの遊歩道の緩い登りをどんどん進むと2時間半ほどで千曲川源流に着いた。源流碑が雪に埋もれて頭だけ覗かせている。



千曲川源流の標識

 

 
千曲川は長野県側での呼称、新潟県では信濃川という。信濃川と言えば日本最長の川、その源流の一滴は有難みがありそうだが、今は一面の雪の下であり、残念ながら何の実感もない。ここでしばらく小休止し急登に備えた。アイゼンを利かせてやや勾配の増した斜面を登っていくと、あっけなく尾根筋に出ることが出来た。甲武信ガ岳山頂はすぐその先である。約3時間を要して山頂に立った。これまで人と行き会うことは無かったが、頂上には登山者二人が休んでいた。西沢渓谷の方から登って来たらしい。

 快晴の天気に恵まれて素晴らしい眺望である。早速デジカメを取り出すが、ローバッテリーと表示されてシャッターが下りない。そう言えばしばらく充電していなかった。加えて低い気温で性能低下が進んだのだろう。しばらく手の中で電池を暖めてやった。これでバッテリーもやや回復。スイッチをこまめにオン、オフしながら、だましだまし南北中央アルプス、八ヶ岳をカメラにおさめることができた。



頂上から八ヶ岳方面を望む


金峰山方面(のはず)


 往路を戻るのは面白くないし、時間も早いので殆どとレースがついていない十文字峠に向けて下山することにした。頂上にいたテント装備の若い人が同じルートを下って行ったが、しばらくするとなぜか途中から引き返して来た。トレースが殆ど無いのに嫌気がさしたのだろうか?私の方は身軽なのでそのままどんどん先を急ぐ。雪のついた鎖場がちょっと面倒であったが、ルートも比較的はっきりしていて不安はない。それよりも展望のない樹林帯のなかを何回となくアップダウンさせられて消耗する。それでもアイゼンが快適に利くのは有難い。ようやく十文字小屋に到着すると、小屋番のおばさんが「早いね〜。もう下りて来たの?まだ午前中だよ」と声をかけてくれる。聞けば朝の気温がマイナス6度だったそうで、なるほどアイゼンが利くわけだと納得した。ここから毛木平に向けて下る。雪解け水が氷点下の気温ですっかり氷結している。石と氷のミックスの下山路はアイゼンを履けば歩きにくいし、外せば滑るので始末に悪い。十文字峠から悪戦苦闘しながら、1時間15分ほどで駐車場に帰着した。隣の愛媛ナンバーの人が着替えをしていた。頂上をピストンして戻ってきたらしい。今日はこれから次の百名山を目指すのであろうか。

 当方も手早く着替えを終えて車を出した。川上村経由の長い帰路を避ける方法はないかと思い地図を眺めると金峰山神社から埼玉方面に抜けるルートがある。この道にトライしてみることにした。落石がそこかしこにある荒れ果てた林道を30分ほど行くと何と峠の頂上付近で崖が崩れて道路が完全に埋まっており通行止め!何故林道入り口に行き止まりの表示が無いのだとぼやきながら来た道を引き返す。これで1時間をロスしてしまった。山の中ではなく麓の林道で遭難したのでは笑えない。

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