北荒川岳  新蛇抜山   安部荒倉岳  2698m長野県、2667m長野・静岡県、2693m長野・静岡県       
 

2016年9月1日(木)

 新装なった塩見小屋は建物こそリニューアルされたが、土間の片側が蚕棚、もう一方はバックパック置き場とかなりコンパクト。その利用形態はいかにも南アルプスの古き良き山小屋スタイルで昔と変わらない。袋状の使い捨て簡易トイレの使用も徹底されていて環境保護には随分と配慮されている様子。そんな塩見小屋に別れを告げ、前日越えてきた塩見岳へと向かった。

 今日も長丁場なので早朝午前3時50分の出発だ。小屋を一歩でると、昨夜は天の川もくっきり見える程の満点の星だったのが一転して深い霧に閉ざされている。十分休養したにも関わらず、前日の疲れが残り足が重い。まるで鉛の足枷を引きずっているかのようだ。

 岩稜地帯に差し掛かった辺りでヘッドランプが突然フェードアウト。明らかに電池切れだ。暗闇の中での電池交換をどうしようか焦ったが、スマホに懐中電灯アプリがあることを思い出した。スマホで照らしながら電池を交換し一件落着。
 


荘厳な夜明け


 たっぷり1時間30分をかけ、塩見岳の山頂に着いた。日の出時刻を過ぎて明るくはなったものの、周囲には霧が流れ、残念ながら視界はすぐには回復しそうにない。山頂に留まる理由もないので蝙蝠岳をピストンするという青年と共に北俣岳の分岐へと下る。


仙塩尾根を下る


 分岐で青年と別れ、仙塩尾根を歩きだすと、左手の霧に虹色の輪が見える。その中心には何やら神々しい己の姿。ブロッケンの妖怪だ。山ではありふれた現象だが、日帰り山行の多い私には初めての体験。思わぬプレゼントをもらい、少し得をしたような気分だ。


御来迎


 ほどなくして視界も晴れ、うねうねと伸びる仙塩尾根の全貌が見えてきた。これから通過するはずの北荒川岳だけは見当がつくが、新蛇抜山や安部荒倉岳はさっぱり同定できない。気が付かずに通り過ぎる愚を犯さぬようにしなければ。


正面のハゲ山が北荒川岳


 相変わらず重い足取りで塩見岳から下り続け、北荒川岳との鞍部に着くと、そこは緑の絨毯にダテカンバの巨木が散在し、まるで人工的に良く手入れされたかような雲上の楽園だった。お蔭で少しモチベーションがアップ。


雲上の別天地


 鞍部から50mほど登り上げ、7時10分、北荒川岳に到着。山頂標識も見当たらない殺風景な頂だが、何はともあれ貴重な2座目の百高山だ。


北荒川岳山頂


 ここで一休みして次を目指す。暫くは見通しのきかない樹林帯。頻繁にGPSでチェックしながら進む。新蛇抜山の山頂直下と思しき場所に着いたが、道がない。カメラだけを手に藪の無い登りやすそうな急斜面を四つん這いで登り最高点へ。そこには「新蛇抜山」と明記された手作りの山頂標識があった。これで3座目の百高山を無事制覇。360度の眺望も百高山に相応しく素晴らしい。


             新蛇抜山山頂                         この案内板の50m手前で登ってしまった



新蛇抜山山頂からの景観 左から仙丈ヶ岳、間ノ岳、農取岳を望む


 さて次は今回最後の百高山、安部荒倉だ。下山にかかると何のことはない、薄い踏み跡が続いていたので帰路はそちらを辿る。再び樹林帯の中を登って行くと、安部荒倉岳山頂と書かれたプレートがあった。この山の頂は木々に囲まれ展望は無い。足元には古びた三角点標識があったのでタッチ。これで予定していた日本百高山4座全てを無事ゲットでき感無量だ。


            親切な案内板があった                           安部荒倉山山頂         


 後は本日の宿、北岳山荘へ向かうだけ。樹林の中をどんどん下っていくと峠にひっそりと佇む熊の平小屋があった。人の気配も無く静かな深山の宿だ。小屋の前のベンチに一人陣取りランチタイムとする。これから間ノ岳へ、標高差600mを登らねばならない。


          これから登る間ノ岳                                熊の平小屋   


 気合いを入れて縦走再開。間ノ岳への道は急坂だが、適当な勾配となるようジグが切られているのでそれほどきつさは無い。三峰岳で小休止したのみで歩き続け、間ノ岳の山頂に立った。時刻は午後1時25分。実に7年ぶりの山頂だ。ガスがかかり視界が閉ざされているのは残念だが致し方ない。


三峰岳(左)までもうひと頑張り



            ガスに覆われ始めた                              間ノ岳山頂


 視界がなければ単なる通過点。ここでも小休止したのみで北岳山荘へと向かう。既に10時間近く歩き続けているので前日同様、足が棒になりかけている。2時50分に北岳山荘に到着。今日も11時間、16Km、実によく歩いた一日だった。


2016年9月2日(金)

 宿泊申し込みの際、布団二枚に三人と申し渡され、がっくりきたが、幸い最終的には少し余裕が出て各自一枚の布団を確保することができた。二日間のハードワークで疲れ果てていたので、夕食後は寝床へ直行。朝4時半、周囲が起きだしたのに気がつかないほど、ぐっすり休むことができた。

 天気は今日も快晴。北岳に寄ってから下山するか最後まで迷ったが、百高山の目的を達してしまったせいか、今一つモチベーションが上がらない。結局、八本歯ノコルへのトラバース道の入り口でご来光を迎え、軟弱ながらもう十分という気になってしまった。




モルゲンロートの間ノ岳


 八本歯のコルからは、雪渓のせの字もない大樺沢を一目散に下る。途中過去に経験のないほどひっきりなしに登ってくる登山者とすれ違った。今日こそ北沢山荘の激込みは間違いないだろう。一日早くて良かったと秘かに思いつつ広河原へと下山を続けたのだった。

行動時間 3時間45分



 
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