2016年11月4日(金)
中央アルプス北部でずっと懸案になっていた山が二つある。その一つは、余りの混雑ぶりに嫌気が差してこれまで敬遠していた宝剣岳。二つ目は、二年前の残雪期にすぐ近くを通りながら山頂を踏みそこなった日本百高山の一つ、将棋頭山だ。今回はこれらの懸案解消と雪山トレーニングを兼ねて、木曽駒ヶ岳も含めた三山を歩くことにした。
アプローチはクラシックルートの起点となる桂小場から。お手軽なのは駒ヶ岳ロープウェイを使うことだが、トレーニングにならないので遠慮しておく。もう少し歳を重ねれば嫌でも利用せざるを得ないだろう。
早朝4時30分、まだ夜の明けやらぬ桂小場の駐車スペースに車をとめる。平日にも関わらず先行者の車が二台。どうやらこのロングコースを選ぶ物好きは私だけではないらしい。
東屋で登山届(下山時撮影) 登山口(同左)
5時きっかりに東屋に登山届を投函し歩き始める。見上げれば一面の星空。ヤマテンの予報によれば朝方は雲が残るとのことだったが、良い方向に外れてくれたようだ。
快適な登山道 すっかり夜が明けた
ヘッデンに照らされる登山道は、目立った起伏も無く一定勾配でとても歩き易い。それなのに私の足の運びは今一つ。雪道に備えて、いつもの軽登山靴から重い革製登山靴に履き替えたからだ。これも訓練のうちなので我慢せねばとは思うが。。。
少し斜度を増したちりめん坂を黙々と登っている間に夜が白々と明けてきた。2時間ほど休みなしで歩き大樽避難小屋に到着。いつの間にか標高2000mを越えて道には粉を蒔いたかのように白いものが混じるようになってきた。樹間から西駒山荘が望めるようになると愈々本格的な雪道となった。木々も樹氷を纏ってすっかり冬の装いだ。
この辺りから雪が出てきた 信大ルートとの分岐
西駒山荘が視野に
樹氷が美しい
西駒山荘へは稜線添いの冬道とトラバースする夏道の選択肢がある。少しでも楽をしようと後者を辿ったが、雪の重みでハイマツなど樹木の枝が垂れ下がり登山道はトンネル状態。しゃがんだり、四つん這いになったりで、かえって消耗させられた。
遮るもののない稜線に出ると流石に風が強い。周辺の岩にはエビの尻尾も付着し始めているが、まだ伊勢エビほどには成長していないようだ。
八ヶ岳を遠望
木曽駒も見えてきた
トンネル状態の登山道を抜けると、、、 間もなく西駒山荘へ
中岳や宝剣岳も登場
エビの尻尾成長中 宝剣山荘へのトラバース分岐
八合目の濃が池との分岐を過ぎると愈々山頂も間近、馬の背の急登にさしかかる。久しぶりの高山のせいか、標高2700mを越えた辺りから酸素不足がボディブローとなって効いてきた。息が上がり足枷を引きずっているかのように足が重い。ここで単独の若者に追いつかれたが、追随する間も有らばこそ、その後ろ姿はみるみる遠ざかってしまった。
御嶽山も冠雪
乗鞍岳はかなり白くなっている
馬の背を登る
10時45分、これまでの静寂が嘘のように多くのハイカーで賑わう木曽駒ヶ岳の山頂に立った。桂小場から5時間50分もかかっており完全に予定オーバーだ。山頂滞在を5分ほどで切り上げ、次の目標、宝剣岳へと向かう。
木曽駒ヶ岳山頂 たくさんのハイカーで賑わっている
宝剣岳へと向かう
中岳との鞍部まで下りたところで、少しでも遅れを取り戻そうと巻き道を選んだが、これは失敗。少し先に進んだところで登山道は鎖でクローズされていた。結局引き返す羽目となり急がば回れを地で行ってしまった。
中岳の山頂を越え宝剣山荘に着くと宝剣岳の険しいピークが目の前に聳えている。岩肌やスタンスには雪がついているので、鎖を手から離さずに慎重に登って行く。山頂直下の鎖場は足元がすっぱり切れ落ち、高度感たっぷりだ。
結構な迫力の宝剣岳
緊張する場面も
11時50分、宝剣岳山頂に立った。これで一つ目の懸案をクリアすることができた。長居をする場所も時間的余裕も無いので即刻Uターン。再び鎖に頼りながら下山する。
宝剣岳山頂 但しこの岩に登る勇気無し 檜尾岳には雪無し
宝剣山荘前のベンチでランチタイム。腹が満ちたところで下山を続行する。帰路は木曽駒ヶ岳への登り返しを避けて駒飼ノ池や濃が池を経由する巻き道へと進んだ。
カールを下る
途中で外国人カップルを追い抜いてからは、雪についた足跡も一人分だけと静かなもの。登山道には所々融けた雪や沢水が凍り付いており、この日最も気を使った区間だ。もう一降り雪が積もったらアイゼン必携となるだろう。
凍り付いた沢 濃ヶ池
八合目の分岐まで戻ってやれやれと一息ついたのも束の間、将棋頭山へのダラダラ登りは疲れた足には辛いものがある。西駒山荘の手前の分岐からは将棋頭山に向けて最後のひと登り。14時10分、将棋頭山の山の頂に到着。これでようやく二つ目の懸案を果たすことができた。
遭難記念碑 将棋頭山の頂に立つ
将棋頭山山頂から西駒山荘 背後は冠雪した南アルプス
西駒山荘に戻ったのは陽が大分傾いてきた14時40分。ここから桂小場までは、標準CTで3時間10分とある。ペースを上げないと日が暮れてしまいそうだ。幸い融けた雪が凍り付いているような箇所も無い。よく手入れされた登山道を小走りで快調に飛ばし、夕闇迫るなか、ヘッデン不要ぎりぎりの17時ちょうどに桂小場に帰着することができた。
殆ど休みなく歩き詰めの25Kmだったが、最高の天気に恵まれシーズン初の雪山ハイクを存分にエンジョイ。大満足の一日となった。
行動時間 12時間
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