金峰山  山梨・長野県 2599m   百名山
瑞牆山  山梨県 2230m  百名山


  
200962

 若い頃、冬の金峰山に登ったことがある。雪の稜線がだらだらと長かったこと、天気が冴えなかったこともあって展望もなく退屈な山というマイナスイメージしか残っていない。今回は初夏の晴れ間を狙い、季節も天気も正反対である。きっと好印象を与えてくれるはずだ。

 秩父の山々の6月は、石楠花を求めてハイカーが大挙して押しかけるらしい。少しでも静かな山歩きを楽しみたいので、平日に出かけることにした。夜明け前(AM3)に自宅を後にして、ガラガラの中央高速に乗る。須玉ICから国道23号線に降りた後は、カーナビに従って増富ラジウム温泉方面へと進む。温泉街を過ぎてからは、曲がりくねって狭いが、きれいに舗装された新緑の沢沿いの林道のドライブは快適だ。登山口の瑞牆山荘には5時15分に到着した。山荘周辺に人の気配はないようなので取りあえずは狙い通りかと期待する。

 身支度を整えて富士見平に向け歩き出した。新緑の林のなかはとても心地よい。しかし傾斜はそれほどでもないのに、やけに息がきれるのはどうしてだろうか。1500mの高度の影響はそれほどあるとは思えない。ひと月ぶりの山歩きで足がだいぶ鈍ったようだ。

 富士見平小屋を左手に見ながら、大日岩まで一気に歩いて小休止する。ここからしばらくは、だらだらした登りが続く。大日小屋を過ぎると水場が近くいかにも快適そうなフラットなテント場が何張り分かある。その先は展望のない樹林帯だ。ひたすら黙々と歩く。平日の静かな山歩きを期待していたが、どうやらその目算は外れたらしい。この辺りから続々と下ってきた登山者とすれ違う。その殆どが中高年、それもどちらかというと「高年」寄りの方々が圧倒的に多い。エブリデー・サンデーの方々にはかなわない。百名山行脚、それともこの山の多く自生する石楠花狙いなのだろうか。

 次第に傾斜がきつくなり、しばらく汗をかいて砂払いの頭に着いた。ここからようやく展望が開けて石だらけの稜線の向こうに五条岩が見えるようになった。目を西方面に転ずるとちょっと霞がかかっているが富士山や南北アルプス、八ヶ岳などのお馴染の峰々が展望できる。石の折り重なった歩き辛い尾根道を進み、8時50分に多くのハイカーで賑わう金峰山山頂に立った。しばらく休憩した後、五条岩に攀じ登ろうとするが、適当な手がかりが見当たらずちょっと手強かった。若い頃は腕力が強いと自負していたが、それは過去のこと、怪我をしては元も子もないので止めておく。頂上周辺の登山者は、どう見ても平均年齢は70歳を越えているようだ。しかし皆さん元気溌剌としていて中高年パワーを見せ付けられた思いだ。中のお一人に甲武信ヶ岳がどれかと聞かれたが一ヶ月前に登ったにも関わらず、確信をもって答えられなかったのは情けない。国士ヶ岳の背後に隠れていたのかしらん?



五条岩が見えてきた、小さく見えるがビルほどもある



富士山が遠望できる



五条岩




山頂から奥秩父方面

 頂上には30分ほど滞在した後、下山にかかる。気温がかなり上がってきたので砂払いの頭まで来たところでTシャツに着替えた。その際に帽子を案内板にかけたことをうっかり失念、急な下りを15分ほど降りたところで気づいた。3千数百円也で買ったばかりの帽子であるが、もう一度登り返すのは勘弁、悔しいが諦めよう。しかしこの後、頭の地肌を焼く強い日差しにえらく苦労することになってしまった。

 まだ昼前でもあるし、このまま下山してしまうのは勿体ない。瑞牆山にピストンすることにした。若かりし頃、比較的近場なのに登る機会に恵まれなかった山の一つである。 それにしても瑞牆とは何と難しい漢字なのだろう(ちなみに瑞牆とは神社の垣根を意味するらしい)。

 富士見小屋の脇を進むと一旦下って沢を渡る。ここから岩だらけの道の急登が始まる。瑞牆山は金峰山よりも、さらに登山者が多く、老若男女ならぬ、老老男女多数と行き違う。ロープのかかった急斜面が多く、こうした難所は大抵渋滞している。富士見平までは快調だったが、この辺りから大分疲れが足にきて金峰山への登りと比べると明らかにペースダウンしてきた。左膝も痛くなってきた。それでも嬌声をあげるおばさん軍団に追い立てられるようにして何とか頂上に立つことができた。時刻は午後1時ちょうど。頂上には数人のハイカーがいたが、そのうちの一人はいかにも年季の入った服装やザックに磨り減った登山靴という井出達、昔ながらの山屋として懐かしく何故か印象に残った。


高度感が半端ではない
(岩の上に人がいる)



瑞牆山山頂



シャクナゲがきれいだ


 金峰山や瑞垣山特有の奇岩の景観を楽しんだ後、下山を開始した。ダブルストックで膝への負担を上半身で肩代わりしてやるが、次第に膝の痛みが耐え難いものになってきた。しばらくの間、頂上にいたベテラン氏と一緒に下っていたが、ペースも速いし痛くてついて行けない。次第に引き離されてしまった。腰を下ろして休む誘惑にかられるが、ここで一旦歩みを止めると膝や体が冷えて歩行不能になるのではないかと心配になる。ゆっくりでもノンストップで行くことにした。痛みを堪えながら一定のペースで休まず歩き続けていると傾斜が緩くなり瑞垣山荘がようやく見えてきた。マイカーへの帰着は午後250分。休憩を除く総歩行時間は8時間50分。標高差合計は約1500mだった。標準コースタイムは10時間45分なのでまずまずのところか。しかし、百名山2座クリアの代償は小さくなかった、左膝激痛と両足親指のひどいマメ。今回のレッスンは歩行時間が8時間を越えると、現在の私の実力ではあちこちに故障が出るということ。大腿四頭筋が弱いのですぐ膝にくるし、歩きこんでいない足の皮もまだまだ薄っぺらだ。これでは上級コースへのチャレンジはまだ無理というもの。収穫はダブルストック、初めて使ってみたが、膝への負荷を上半身へ分散できるので随分助かった。これが無ければ膝の故障はもっと酷かったかも知れない。

 結論として静かな山歩きという訳には行かなかったが、眺望、花々、新緑などを十分に満喫した充実の1日だった。

 帰路は往路と同じコースを辿る。途中ちょっと早いが咲き始めた石楠花を楽しみつつひたすら下り、富士見平には出発してからちょうど6時間の11時半に到着した。

行動時間   9時間20分
歩行時間   8時間50分
標準CT    10時間45

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