2599m長野・山梨県、2592m長野・山梨県 | |
2016年9月10日(土) 秋雨前線と台風に翻弄される今シーズンの貴重な晴れ間。久しぶりに奥秩父の山を歩くことにした。秩父の盟主、金峰山へは瑞牆山荘を起点に往復したことはあるが、今回はその反対側、大弛峠からアプローチする。但し、標高の高い大弛峠からの単純往復では余りにイージーに過ぎるので、大弛峠から自転車でアコウ平へいったん下り、そこから破線ルートで金峰山へ登り、大弛峠へと周回することにした。 午前5時、車で登ることのできる日本一高い峠といわれる、標高2360mの大弛峠に到着。ドアを開ければ残暑厳しい都会とは別世界、暑さに開ききった毛穴に浸み込む初秋の寒さに思わず身震いする。 早速前輪を外して車に積み込んだバイクを組み立てる。ここからアコウ平へ向かって標高差、約400mのダウンヒルだ。サドルに跨り、いざ走り出すと、ウインドブレーカーを着ていても寒さが身に染みる。歯をカチカチいわせながら連続するヘアピンカーブを下り、10分少々でスタート地点となるアコウ平に着いた。ここから金峰山を目指す物好きは私だけではないようで、車2台の先客がいた。
バイクを木につなぎ留め、ハンドルをストックに替えて歩き出す。周囲は苔と針葉樹。いかにもフィトンチッドの充満していそうな深い森を下って行く。 最下点は標高1800m弱、ここから800mを登り上げるのだ。まずは荒川の渡渉がある。前を行くカップルに続いて固定ロープに縋りながらの渡渉。前日までの降雨で水量が多いせいか、足場の岩はかなり水没している。短足の私では次の石まで足の届かない箇所もあったが、思い切りよく飛び越え何とか濡れずに対岸へ渡ることが出来た。
ここから先の登山道は、踏み跡こそ薄いものの、ピンクのテープが要所要所、というより、これでもかというほど付けられているので迷うことはない。ネズコと呼ばれるヒノキ科常緑高木の原生林をしばらく登って行くと、開けた場所に全壊した小屋跡があった。御室小屋の名残だ。
帰宅してから知ったことだが、このルートはその昔修験者が入峰修行の霊山として通った古の表参道とのこと。この小屋も大いに栄えた時期があったのかも知れないと思うと感慨深い。 御室小屋跡を過ぎると道は一段と険しくなり、急峻な岩場も出てくるようになった。濡れた逆層の岩場を鎖に縋りつつ登るような緊張する場面もあった。樹高も低くなり、行く手には今にも転げ落ちそうな大岩(「片手回し」と言うらしい)、その先には五丈石も望めるようになってきた。
ずっとマーキングに従って登ってきたのだが、気が急いたのか、いよいよ五丈石が手の届く距離になったところで道を外してしまった。ハイマツを漕いで出たところは五丈石の直下。ちょうど通りかかったハイカーに不思議そうな顔をされてしまった。
アコウ平からここまで2時間35分の道のりだった。金峰山山頂は予想した通り大勢のハイカーで賑わっている。若い人達が五丈石の挑戦しようとするのを眺めているうちに、すっかり私もその気になって攀じ登ってみたものの早くも中段で手がかりを失い行き詰ってしまった。やはり歳を考えねば。
金峰山から大弛峠までは細かなアップダウンが続く整備されたハイウエイのような登山道。引きも切らず登ってくるハイカーとのすれ違いが忙しい。10時15分に大弛峠到着。未舗装の長野県側まで路駐する車の列が延々と続いていたのには驚いた。
ここで軽くランチをとり、今度は反対側の国師ヶ岳を目指した。登山口から山頂近くまで木製の階段が延々と続き、登山というよりはビルの非常階段を登っているようなものだ。途中で追い越した85歳のお年寄りが段差の大きい階段に悲鳴を上げていた。
40分で国師ヶ岳山頂に到着。休憩場所も無いほど、ともかく人が多いのですぐに頂を辞して次の目標、奥秩父最高標高の北奥千丈岳へと向かった。10分ほどで標高2601mの頂に立った。
アコウ平から金峰山までの険しさと、対照的に過度と言えるほど手の加えられた山域と両極端を味わうという、なかなか面白い体験ができた。少々時間は早いが高速の混雑を回避したいので速攻で下山する。手早く着替えを済ませ、すぐに車を出してアコウ平で自転車を回収。温泉もパスしてさっさと帰宅の途についたのだった。 行動時間 6時間20分 |