乾徳山  山梨県 2031m   二百名山 
  

2011219

 約1ヶ月半ぶりの登山になる。実は今年に入ってから30年のブランクを経てスキーを再開した。昨年の春山で散々見学させてもらったバックカントリーが面白そうだったので、まずゲレンデでスキーの特訓することにしたのだ。最初はどうなることかと心配したのだが、何とかなるものだ。昨今のカービングスキーは短いし簡単に曲がることができるせいか、長いブランクはあってもスキーのカンを多少取り戻すことができた。昔の扱いにくいスキー板とは雲泥の差だ。もっとも、やっとパラレルで滑れるという初歩的なレベルではある。例によって年を忘れてがんがん滑ったのはいいのだが、還暦過ぎの体にスキーは相当きつかったらしい。無理のしわ寄せが一番弱い所に集中したようで、すっかり腰をやられてしまった。幸い一時は身動きできないほどの腰痛も、しばらく安静にしているうちに、ようやく腰の痛みを意識せずに歩けるようになった。しかしスキーはちょっとトラウマ、山歩きに回帰してスキーはしばらく様子見ということにしよう。山歩きにカンバックするとは言っても、いきなりハードなコースにチャレンジすることには自信が無いのでまずは近場の半日コースから再開することにした。選んだ先は山梨県の乾徳山である。

 徳和集落の外れにあるパーキングスペースには朝6時半に到着。身支度を整え、645分に駐車場を後にした。しばらく林道を歩き熊に注意のカンバンを横目に登山道へと入る。雪道ではあるが、それ程の積雪量ではない上にほどよくクラストしているので歩きやすい。緩い登山道を息の切れないペースで進む。ひと汗かいた所で国師ヶ原に着いた。ここは樹林も少なく見晴らしの良いところだ。しばらく進むと登山路を横切って下山する獣の足跡あった。鹿の足跡はそこかしこに縦横無尽に付けられているのだが、それとは明らかに全く違っている。人間の手の平サイズの肉球と爪の跡がくっきりとついていた。これはどう見ても熊の足跡だ。それも雪の様子からして出来立てホヤホヤ。登山口には熊出没注意の警告があったものの、冬場なのでまさか熊がうろついていることは無いだろうと高を括っていた。しかし、とんでもない誤解だったようだ。帰宅後調べると、熊は「冬眠」はせず、ちょっと体温を下げて浅い眠りの「冬篭り」をするだけらしい。2月下旬には冬篭りを終え、餌を求めて歩きだす例もある。つまり冬だからと言って安心してはいけないのだ。思わず顔が引きつり周囲を見渡すが、熊の姿は無かったのでホッとする。



            登山口には雪は少ない                            次第に雪道に



       露出オーバーで分かりにくいが熊の足跡                       山を下っている



                乾徳山が姿を現す                           国師ヶ原



 やばい現場はさっさと離れよう。追われるようにガスで見え隠れしている乾徳山目指して歩を早めた。ひとしきり登ると尾根筋に出る。そこは明るい草原の扇平だ。ガイドブックによれば大菩薩嶺方面の展望が開けているとあるが今日はガスで何も見えない。道満尾根ルートとの分岐を過ぎて再び樹林のなかに入ると途端に雪が深くなった。積雪は大体足首から脛程度、吹き溜まりでは膝まで嵌る。勾配も増してきたのでペースが、がたんと落ちた。次第に尾根が細くなると最初の鎖場に到着、念仏岩だろうか。手がかり豊富で鎖に掴まらなくても大丈夫だが、所々凍結しているので慎重に登る。岩場が続くようになると再び鎖場に着いた。巻き道の案内があるので頂上直下の天狗岩だろう。岩の取り付き付近の雪が深いので左から回り込む。出発してから約
3時間15分、10時に乾徳山の頂きに立った。360度の景観が売りの山頂だが、あいにく周囲はガスに閉ざされていて、すぐ近くにあるはずの黒金山の姿さえ見えない。昼食を取りつつしばらく晴れ間を待つが、ガスは濃くなるばかり。予報では晴天マークだったのだが。諦めて下山することにした。



            扇平の月見岩                                  雪のついた鎖場



             ガスで視界の無い頂き                          牛首方面が少し見えた



 自分のトレースがあるので帰路はラクチンだ。重力に従ってどんどんと足を運ぶ。今日は熊とのニアミスだけで人と会うことはなさそうだなどと考えていたら扇平の手前で本日始めてで最後の登山者と行き会った。単独の、かなり年配の方だ。扇平からは登りと同じルートを下るのでは芸が無いので道満尾根経由にすることにした。ここから再びノートレース状態となり、所々膝までもぐりながら歩を進める。しばらくして日が差してきたので振り返るとガスはすっかり晴れて青空に山頂がくっきりと見える。右手には南アルプスが白銀に輝いている。悔しいがどうやら
1時間早すぎたようだ。ここで景色を撮ろうとしてデジカメの異常に気がついた。完全に露出オーバーだ。気がつかないうちに露出の設定が変わってしまったらしい。標準の設定に戻すとまともな写真になったが、残念ながらこれまで撮った絵はホワイトアウト状態で使い物にならないだろう(補正してもひどい画質だがあえて掲載)。左手方向は大菩薩嶺方面だろうか、雪を頂いた峰々が見える。尾根筋は、ほぼフラットでなかなか高度が下がらない。しかし道満山を過ぎた辺りから、いきなりの急降下となった。いったんは林道に出るが、熊出没注意の警告板のある箇所から再び登山路へ戻り、急勾配を下り続ける。雪が次第に少なくなってくるが、代わって雪解けの泥濘に足をとられそうだ。鹿除けのフェンスを左に見ながら下り続けると分岐があって徳和集落方面への案内が出てきた。ここは右手につけられた小道を進む。集落の家々が見渡せるところまで下ると獣害防止フェンスのゲートがあった。扉に付けられた開閉フックがやたらに厳重で外すのが一苦労。林道に降り立つと人家はすぐ傍なのでだいぶ下流に出たらしい。ここから再び山間に向かって進んでいくと再びフェンスのゲートがあった。ここを越えて林道を下っていくと、ようやく自分の車が眼下に見えてきた。1245分に駐車場に帰着。ちょっと心配していた腰痛も再発せず気持ちの良いリハビリ登山を楽しむことが出来た。せっかく担いでいったアイゼンは最後まで出番が無かった。



          道満尾根から南アルプスの峰々(露出変更後)



            道満尾根を振り返る                         この注意は本当なのだ



           獣害対策の厳重なゲート                          徳和の集落が見えた 



行動時間              6時間20分
歩行時間              5時間45

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