鹿島槍ヶ岳  長野県 2889m    百名山 
 


201176

 前回の燕岳での転倒の傷がようやく癒えたので、性懲りもなく北アルプスのロングコースを目指すことにした。今回の行き先は鹿島槍ヶ岳。事前にネットで調べると柏原新道から日帰りしている記録も沢山ある。しかし穏やかな山容ながら爺ヶ岳を越えて往復するのは、距離も半端ではないし、私にはとても無理そうだ。そこで選んだのは最短距離の赤岩尾根からのアプローチ。北アルプス屈指の急登とのことだが、天気に恵まれれば、鹿島槍の双耳峰のナイスビューを思う存分楽しめるコースのはずだ。

 例によって夕食後仮眠をとった後、家族が床に着くのとほぼ同じ頃に自宅を出る。登山口の大谷原に
4時過ぎに到着。飛行機雲が朝日を浴びて茜色に染まっている。これなら天気も申し分なさそうだ。車の中で朝食をぱくつきながら出発準備をして、435分に歩き出した。大冷沢沿いの林道をだらだらと登っていく。これでも200mほどの高度を稼げるので馬鹿にできないのだ。西俣出会で砂防ダム下のトンネルを抜けて対岸へと渡る。ここからすぐに本格的な急登が始まる。


    登山口からモルゲンロートに染まる峰々を見上げる                   砂防ダムのトンネル


 余り踏まれていないコースのせいか、露をたっぷり含んだ下草が登山道に被さっているのでズボンがびしょ濡れになってしまう。よく整備されているが、どこまで行ってもかなりの急坂だ。登るにつれて木製や金属製の階段が繰り返し出てくる。なかには垂直に近いと感じるほどの急勾配のものもあり、これがなかなかしんどい。

 やがて樹林が疎となって展望も開けてきた。歩き始めから
2時間10分ほどで高千穂平に着いた。ここからの鹿島槍の眺めは期待以上の絶景だ。布引山から南峰、北峰が屏風のように連なっている。山肌の緑と谷合の雪渓の白さのコントラストが、これぞ夏山と言った感じ。冷池山荘がそう高くない位置に見えるし、もう一息頑張ろうという気にさせてくれる。


        これが数えきれないほど出てくる                       次第に双耳が顔を覗かす



          さしもの急登も一段落                             痩せ尾根を登れば稜線



これが見たかった!

 次第に痩せて来た尾根を辿っていくと赤っ茶けた岩場やガレ場を通過する。赤岩尾根と命名した理由が納得できた気がした。鎖場や雪渓を慎重に通過しようやく稜線に出た。冷乗越に立つと目の前に剣、立山の大展望が一気に広がる。辛い登りの苦労が報われる瞬間だ。長い行程に備え、ここで第一回目のランチ。汗をたっぷりかかされたので、一本目のアクエリアス500mlが早くも空になった。

 冷池山荘へは再び樹林のなかに下り登り返す。黒塗りの立派な山荘だが人気が無い。夏山シーズンにはやや早いし平日ということもあるのだろう。山荘を素通りしてしばらく登るとテント場に着く。絶景に囲まれた環境には文句のつけようが無いが、小屋までしばらく下っていかねばならず、水とトイレがやや不便かも知れない。


       鎖の付いたガレ場のトラバース            手入れされた雪渓のトラバース


          立山連峰をバックに冷乗越から                        背景は黒姫方面   



剣岳立山連山


鹿島槍と冷池山荘


 テント場の先からは雪渓歩きとなる。厳しい陽光の照り返しに、むき出しの肌がじりじりとトーストされているのがわかる。布引山への登りで本日初めてハイカーと遭遇した。若い3人組だ。その後すぐにシニアの御夫妻とすれ違う。鹿島槍南峰への登りは、それ程斜度はきつくないものの、小石がザラザラして歩き悪い。945分に山頂に立った。

 
40年以上の昔、学生時代に一度登っているので2度目の登頂だ。しかしその時の記憶は殆ど無きに等しく初登頂のようなものだ。ずっと続く稜線の先には、五竜岳や唐松岳、そしてその奥には白馬岳の姿が見える。北峰をピストンする野望には下降する吊尾根をちらっと見ただけでさっさと見切りをつけ、ここで二回目のランチとする。2本目のアクエリアスをあっさり完飲。冷凍しておいた3本目に手をつけるが、まだ半ば氷状態で冷たくてうまいこと。


              立派な冷池山荘                               残雪歩きが続く



          布引山から                     やっと着いた!


どこにいても目立つ槍穂



妙高山、高妻山などをバックに北峰



五竜、唐松、白馬方面


 素晴らしい眺望を楽しんだ後は、課題の下山だ。前回の怪我に懲りたので、スピードは極力抑えて足運びに慎重を期すことを心に誓う。下山路を眺めると大町方面からかなりガスが上がってきているようだ。爺ヶ岳のピークが見え隠れしている。いくら高気圧に覆われていても、やはり夏場は
10時を過ぎるとだめだ。さっさと下ろう。でも慎重に。ゆっくり歩くと収穫もある。稜線の至る所にあるお花畑だ。


爺ヶ岳がガスに包まれる



               ハクサンイチゲ                              シナノキンバイ


 この時間帯になると柏原新道から登ってきたと思しき人達とすれ違うようになった。軽装なので日帰りだろうか、それともキレット小屋へ縦走するのだろうか。冷乗越で一息つく。ここで
3本目のペットボトルが空に。4本目も半分消費してしまった。そろそろ疲れが膝や太腿に来ているので、赤岩尾根は特に慎重に下った。なかなか近づかない沢音を恨めしく思いながら、ゆっくり下り続け、ようやく西俣出会いに降り立った。ここで温存しておいた最後のペットボトルを飲み干した。この調子だと盛夏では2リットル分の水分では不足かも知れない。熱中症を避けるには、最低2.5リットルが必要と感じた。

 トンネルを抜けて再び林道をテクテクと歩く。途中の湧水でタオルを冷やして顔や首筋を拭うと気持ちの良いこと。午後
2時に車に帰着。今回はかすり傷一つ負わず、高度差1900m、約20kmを無事歩き通すことが出来た。酸素運搬に頑張ってくれた傷だらけのマイ・ハートに感謝、感謝だ。

行動時間  9時間25
歩行時間  9時間(登り5時間、下り4時間)

Map
軌跡が飛んで有意なデータにならず(一応掲載)
 Track
軌跡が飛んで有意なデータにならず(一応掲載)
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