2015年12月20日(日)
2週間ほど前、時間切れと強風に怯んで頂上を踏めなかった唐松岳。悔しさを胸にリベンジの機会をうかがっていたが、待てば海路の日和あり。今冬2度目の寒波が去った後、待ち望んでいた冬晴れが訪れた。
午前7時前にゴンドラ駅前の駐車場に到着。前回は平日のため無料だったものが、今回は休日のため有料600円也。トイレを借りにゴンドラ駅に向かうと、驚いたことに運転開始1時間前にも関わらず、改札口前には早くも場所取りのスキーやボードがずらりと並んでいる。私も急いで取って返し、自分の板を置いておくことにした。
果たして運転開始時刻になると駅前の広場が埋め尽くされるほどの長蛇の列。のんびり構えていたらハイクアップ開始がえらく遅れるところだった。何しろゲレンデ下部に雪の無い暖冬の今シーズン、下りのゴンドラ運転終了時間の縛りがあるので出遅れは致命的になってしまうのだ。
ハイクアップの準備 八方池山荘
例によってゴンドラ、アルペンクアッドと乗り継いでゲレンデ上部へと移動。グラートクアッド乗り場の前には10名ほど、それぞれシールを貼ったり、スノーシューを装着したりと出発準備に余念がない。
私も8時35分にシール登行開始。今回は降雪直後だったのでお供にした板はセンター112cmのDPSだ。新雪は出発点で20cm、八方池山荘辺りで30cmほどだろうか。先行者の付けたトレースを有難く使わせて頂く。
左手は大学山岳部?の雪上訓練
ハイペースで登る若い衆
マイペースで歩いていると、後から来たスノーシューのボーダーやスーパーファットの連中がどんどん私に追いつき追い抜いていく。65才を境に体力がガクッと低下すると何かの解説本で読んだが、哀しいことにこれは紛れもない事実。どう頑張ってみても若い衆のスピードには全くついていけない。もっとも彼らの多くは下ノ欅辺りからドロップしていた。ファーストトラック狙いがハイペースの理由だったのかもと自らを慰めてみたが、、、(
ノД`)。
キレットを望む
左のダケカンバ辺りがドロップポイント
パウダー上に2本のシュプール
ここからドロップする外人組
やがて目の前には2361mのピーク。前回は直登して越えたが、今回はトレースに従って左側をトラバースして巻いていく。前方には扇雪渓の上部をラッセルしている先行者の姿があった。
トレースを有難く拝借
丸山を登り切ったところでクトーを装着。南側斜面は新雪でふかふか、北側斜面はかちかちにクラストと両極端だ。2554mのピークが目前に迫る地点でアイゼンに履き替えた。ちなみにここは前回の引き返し地点。他にも二三名の方がここにスキーをデポしていた。
しばらくクトーで登行 スキーをデポしアイゼンに
歩き出すとトレース上であっても新雪に足を取られてアイゼンが役に立たない。踏み抜きも数知れず。この日の状況ではワカンやスノーシューの方が余程効率的だったに違いない。八方尾根も最終局面、痩せて雪と岩のアルペンチックな様相を呈してきた。
尾根が痩せてきた
主稜線までもうひと頑張り
急な岩稜を慎重に越え、主稜線に出ると目の前は別世界。雪と氷を纏った剣岳と立山連峰の一大パノラマが広がった。稜線上は穏やかな天気と言っても流石は冬の北アルプス、吹き付ける風は半端ではない。頬にバチバチと雪礫の洗礼を浴びながら最後の一登りで唐松岳山頂に立った。時刻は12時43分。山頂には先行者が一人、彼はここまでスキーを外さずに登り上げてきた根性の山スキーヤーだ。
やっと剣岳を拝めた
唐松岳は指呼の距離
山頂からの眺望は文句なしに素晴らしい。この絶景を撮影しようとするが、デジカメが機能不全に陥る。シャッターが下りたのは1回だけ。その後は勝手にシャットダウンしてしまった。低温のためバッテリー性能が低下してしまったらしい。仕方ないのですぐに下山開始。カメラはアウター内に取り込んで温めておくことにした。
シャッターが下りたのはこれだけ 後ろは根性のスキーヤー氏
下山途中に行き交う登山者は皆、ワカンかスノーシューだ。どうやら早い人にどんどん先行されてスキーヤーとしては私が最後尾になってしまったようだ。唐松岳頂上山荘上まで戻ったところでカメラをチェックすると異常なし。無事生き返ってくれて何より。
下りにかかる この痩せ尾根をスキーで降りるのはかなり怖そう
剣岳の雄姿を今一度カメラに収め別れを告げる。痩せ尾根を慎重に通過し、午後1時45分、スキーをデポした2500m地点に帰着。私のスキー一台だけがポツンと残されていた。
白馬岳方面
火打、焼山はかなり白い 妙高、高妻はまだまだ
五竜岳にも別れを告げる
滑走を初めて間もなく先ほど山頂でお会いした強者スキーヤーと一緒になった。12月の雪質は一定しないので難しいと宣いながらも華麗な滑り。あっという間に彼の姿は見えなくなってしまった。確かに雪質は変幻自在。パウダーと思えば急に重くなってブレーキがかかったり、日が差さない北斜面はカリカリのクラストだったりと目まぐるしく変化する。私の足前では転ばずに降りるのが精一杯だ。
八方山ケルンまで降りてようやく一息つけると思いきや、その下はシュプールで無残に切り刻まれ荒れに荒れた雪面。さらに兎平のいつもの圧雪斜面はどこへやら、どこもかしこも大きなこぶだらけになっていて、私の疲労困憊した足は完全にとどめを刺されてしまった。
ゴンドラ駅帰着は午後3時5分。好天に恵まれ冬山を存分に堪能できたものの、山スキーの難しさと修行不足を痛感させられた今シーズン二度目のBCでした。
行動時間 6時間30分
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