観音岳   山梨県 2840m       百名山   
 

20131127日(木)

 先週に引き続いて新雪の山に出掛ける。行き先は毎年この時期になると何故か吸い寄せられるように足が向いてしまう南アルプス鳳凰三山だ。ヤマテンによれば、前日の低気圧通過に伴うこの山域の積雪量は30~40cmとのこと。単独ラッセル覚悟だったが、パワフルな助っ人に大いに楽をさせてもらった。

 青木鉱泉へのアプローチとなる小武川林道には余り良いイメージがない。道は狭く舗装は途切れ途切れだし、ダート区間は酷いデコボコ。そこかしこに深くて大きな水溜りがある。この日は何と一抱えもある落石が二つも道の真ん中に鎮座していた。どうにかこうにか道路脇に退けることが出来たが、朝っぱらからこんな重労働は勘弁して欲しいものだ。

 やっと青木鉱泉に辿りつくと、今度は橋の手前にバリケード。張り紙によると鉱泉は冬季閉鎖、ドンドコ沢も登山禁止だそうな。仕方が無い、計画を変更して中道をピストンすることにしよう。小武川沿いの林道をさらに上流に向かって進み、廃屋前の広場に車をとめた。

 身支度をして歩きだそうとすると、もう一台車がやってきた。車の主は
20歳台の若い男性。「お先に」と一言挨拶してから登り出す。時刻は620分。いきなり情け容赦のない急登が始まり、伸びきった脹脛が悲鳴を上げる。


              中道登山口                            しょっぱなから急な登りが続く


 
1時間ほどで荒廃した林道跡を過ぎると、さしもの急登も一段落。勾配が少し緩み、辺り一面はカラマツ林と笹の草原となる。足元には落ち葉の絨毯が敷き詰められている。私が最も気に入っている中道のスポットだ。


        カラマツ林と笹の生い茂る登山道                    すっかり冠雪した稜線が見えてきた


 この辺りで先ほどの若者が追いついてきた。半ば小走りのハイペースで、道を譲ると、あっという間に背中が見えなくなってしまった。尾根筋に出て見晴らしがきくようになると、行く手には真っ白に冠雪した薬師岳から地蔵岳への稜線が見えてきた。樹間から望む彼方の八ヶ岳も同様に白い衣を纏っている。

 標高
2000mを越えると、登山道に雪が交じってきた。前日降った湿雪が今朝の冷え込みで凍結し、まるでスケートリンク状態。若者は早くもアイゼン歩行に切り替えたようだ。


                御座石                              辺り一面クリスマスツリー


 御座石を過ぎると雪は益々深くなってきた。新雪の下の凍結斜面が滑るので私もアイゼンを装着することにする。降雪量に比例するように風が強くなってきた。遠目にも薬師岳付近には雪煙が激しく舞っている。予報によれば、この強風は時間とともに治まるはずだ。


           雪煙の舞う薬師岳山頂直下                       北岳をバックに薬師岳山頂


 樹林限界を抜けると雪は更に深くなるが、先行する若者のトレースのお陰で楽をさせてもらった。
1040分に薬師岳山頂に到着。期待通りに白峰三山が圧倒的なスケールと存在感で待ち構えてくれていた。しかし風が強いので余りゆっくりもしていられない。360度のパノラマ風景を写真に収めた後はすぐに若者を追って私も観音岳へと向かう。


白峰三山 これを見に来ました



薬師岳のバックには富士山


 強風の吹き荒れる稜線にも関わらず、かなりの積雪量がある。積もったばかりでクラストしておらず、どこを歩いても膝程度のラッセルが強いられる。吹き溜まりに踏み込むとずっぽり腿まで嵌ってしまう。


             観音岳へと向かう                          先行者のラッセルに助けられる


 先行する若者のラッセル跡があるので随分と楽をさせてもらったが、それでも一歩一歩雪に足をとられ、えらく消耗させられる。
1220分に観音岳の頂きに立った。先に到着していた若者はカメラ撮影に余念がない。ラッセルの感謝を伝え、ブルドーザーのような馬力を褒めると、松本に転勤してから良く山に登るようになったのだと言う。


            氷の衣をまとった木                              観音岳山頂にて



甲斐駒ケ岳 左奥は乗鞍岳 右奥は槍穂高岳



仙丈ヶ岳



北岳と間ノ岳クローズアップ


 行動食を摂りながら絶景を思う存分堪能した後は、彼と共に下山を開始。二人分の足跡がついた雪面は随分と歩き易くなった。不思議なことに観音岳周辺では風が穏やかだったのに、薬師岳が近くなるにつれ再び強風が吹きすさぶようになってきた。どうやら地形的にこの辺りは風の通り道らしい。

 途中で若者に先行してもらった後はマイペースの一人旅。ゆっくり歩けばいいのだが、陽がどんどん傾いてくるとどうしても気が急いてしまう。アイゼンをひっかけてヘッドスライディングをしたり、濡れた木の根に滑って尻もちをついたりと身体のあちこちに痣を量産しながら、何とか日の入り前の午後
4時に登山口に帰着できた。

 もし単独だったら、観音岳へは行きつけなかったか、登頂できても下山はヘッドライトを点けてということになっていただろう。松本の若者に心より感謝する次第。


行動時間  
9時間35

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