木賊山  釜ノ沢東俣  2467m 山梨・埼玉県      
 

2019年7月31日(水)

 長かった梅雨もようやく開けて夏本番。群馬のKさんのお誘いをうけて一番遡行価値があると言われる奥秩父の名溪、釜ノ沢東俣を日帰りした。どこまでも続くナメや碧い渕など、沢の美しさに魅了されながらも、入渓以前の段階で道間違いを犯したり、魚留の滝では別パーティ(登美の会のお二人)にロープを出してもらったり、沢上部で雷雨に見舞われたりと、忸怩たる思いも含め盛りだくさんの沢歩きとなった。今回の山歩記は写真を主体とし、文章編は自戒の念を込めて初っ端の道間違いだけにフォーカスしてみた。

 まだ漆黒の闇に包まれた午前4時、ヘッデンを点けて西沢渓谷の無料駐車場をスタート。最初の行程は、鶏冠尾根を二度登って少しは土地勘があると自負する私が道案内することに。これがそもそもの間違いの始まりだった。吊り橋を渡ったところで何を勘違いしたか、遊歩道を三重の滝方向へと進んでしまった。幸いすぐにミスに気が付き引き返したので実害無し。

 しかし、次に犯したルートミスは致命的だった。過去の記憶が定かではないにも関わらず、鶏冠尾根コースの途中でゴルジェの高巻ルートへ分岐があると思い込んでしまったのだ。その背景となったのは参考にした遡行図には山の神まで左岸を大きく高巻くようにと書かれていたことがある。年寄りの思い込みは不揮発性メモリー。オレオレ詐欺ではないが一度そう信じてしまったら、疑わずとことん突き進んでしまうから怖い。

 鶏冠尾根をかなり登ったのに一向に巻き道が現れないのはおかしいと確信が揺らぎ始めたその時、間の悪いことに「出合い」と書かれた標識を発見、さらにそこから下っている踏み跡があったので、てっきりここが下降点と信じてしまった。

 最初は緩やかでも次第に容赦のない急斜面となってきた。踏み跡らしきものはいつの間にか消えて辺りは草付きの急斜面。立ち木や根っこなど、しっかりしたホールド支点がとれないところもあり、さらに悪いことにフェルト底の沢靴なのでグリップが十分に効かないのだ。一瞬のスキが滑落につながってしまうと、緊張で胃が痛くなるような激下りが続く。こうしたヒヤヒヤもののクライムダウンを続け、やっとのことで、本来の登山道に出たときは心底ほっとした。

 実は昨年、同じところでルートミスをした単独の遡行者が、沢近くまで降りたものの滑落して骨折の重傷を負い、ヘリで運ばれたという記事があった。今回は何事も無く済んだから良かったものの、下手をすればこの人の二の舞を演じるところだった。

 この一件だけに絞ってみても、いくつもの反省点がある。その第一は、何と言っても下調べが不十分であったこと。生半可な情報を鵜呑みにした思い込みを排してしっかりルートを確認しておくべきだった。第二はやはり登山の鉄則通り、明らかにおかしいと思った時点で、引き返して正しい道筋を確認すべきであった。第三に初級者向けの沢といっても、今回のように正規のルートから一歩外れればグレードは一気に上がってしまう。止む無く下降せざるを得なかったとしても、ロープやお助け紐などの沢装備をフル活用するなどして安全を担保すべきであった。

 また、一つのミスはそのミスだけには終わらない。つまりミスが別のリスクを呼び込んでしまうことにもなる。今回の例で言えば、初っ端の道間違いのロスタイム1時間が、結果的に沢上部で雷雨に見舞われてしまうことにつながったのだ。道間違いが無ければ、沢の突然の増水や鉄砲水に怯えることも無く、甲武信小屋でコーヒー片手に優雅に雨宿りできていただろう。

 いずれにしても同行のKさんにはえらく迷惑をかけてしまった。何卒ご容赦の程。これに懲りず、またお声がけして頂けると幸甚です。また、ロープを出して頂いた登美の会のお二人にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。


行動時間  13時間45分 


吊り橋からの鶏冠山



鶏冠谷出合い近くを渡渉



ここから東沢へ下降



これを踏み跡と見誤った



泥の急斜面をクライムダウン ダブルウイペットが欲しかった



やっとのことで登山道まで降りてきた



巻道を行く



ホラノ貝 水量多いので突破は難しそう



渡渉して、、、



山の神に到着



渡渉を繰り返しながらゴーロを行く



西?のナメ沢



逆層スラブ



トライはしたものの滑って無理 左岸のトラバースは諦め右岸を行く



魚止ノ滝 私の実力と身長ではクリアできず ずっと左手から回り込めば巻きも出来そう



結局、登美の会の方にロープを出してもらい何とかクリア



吸い込まれそうな渕



千丈のナメは圧巻



延々と続くナメ



岩から岩へジャンプ まんざらでもない爺の身のこなし



両門ノ滝の滝壺を泳ぐKさん



高巻きでアスレチックの連続 でも楽しい



ホールド無く、ここは怖かった 落ちて水流にさらわれれば滝壺へ真っ逆さま



両門ノ滝を高巻いた上部の様子



ヤゲンの滝を高巻くと、、、



そこは広河原 キャンプ適地



いつの間にか伏流となった 空はガスに覆われている



こんな面白い造形があった まるでインフィニティ・プール



愈々終盤 ナメと小滝が続く ヌメッているのでフェエト底がやっと奏功



雨が強くなったので雨具を着る 水勢が増してきた



源流域に入ってきた



左にガレ場を見るとポンプ小屋は指呼の距離



ポンプ小屋 これで遡行は終了 甲武信小屋はすぐこの上にある



ここで軽登山靴に換装



甲武信ヶ岳へ向かったKさんと別れ一足先に下山する 雨が上がり国師ヶ岳と金峰山が視界に



今日ハントしたピークはこれだけ  それにしても14時間近くのハードワークはきつかった。。。


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