常念岳   長野県 2857m       百名山   
 

20131119日(水)

 雪化粧した槍穂高を見ようと最高の展望台、常念岳に登ってきた。晩秋の北アルプス、おそらく今回が今年最後のチャンスだろう。百名山でもあるし、人気の山なので他人様のトレースがあるものと想定していたが大間違い。前日に降った雪に単独ラッセルを強いられ、ルーファイにも苦労して久々に11時間を越えるキツい山歩きになってしまった。

 午前
5時半に一ノ沢の登山者用Pに到着。いつもは私のような物好きが二三人はいるものだが、先着の車は一台も見当たらない。他力本願のあてが外れ、厳しい一日になりそうとの予感。。。

 手早く身支度してまだ薄暗いうちに出発する。時刻は午前6時。陽射しはまだ届いていないものの、行く手にはすっかり冠雪した横通岳の頂きが白く輝いている。今日は絶好の登山日和になりそうだ。


         ヒエ平への林道(正面は横通岳)                       常念岳が頭を覗かせた


 ヒエ平登山口には地元と東京ナンバーの車が
2台とまっていた。どうやら私一人きりではないことがわかり勇気百倍。。。だが、すぐに糠喜びに代わることになる。

 沢沿いの林の中を登っていると、登山道には雪が混じり始め、いつの間にか辺り一面はすっかり銀世界となった。雪に付けられた足跡から見て3人先行している
ようだ。


          完全に銀世界となった                            青空の下に常念岳


 標高
2000mを越えた辺りで若いカップルが降りてきた。雪が深いし、初めての山でルーファイ困難なので引き返すことにした由。もう一人の単独女性も引き返したとのことだが、どこですれ違ったのか姿は見かけなかった。これで当てにしていた他人様のトレースは期待できなくなってしまった。悪い予感はいつも的中してしまうのだ。

 少し先に進むとラッセル跡はブッシュの中に迷い込んで途絶えている。
GPSをチェックすると、もう少し下流で左岸に渡渉しなければならなかったようだ。膝ラッセルをしばらく続けて渡り易すそうな個所を捜す。流れの中にある河原の石はどれもこんもり綿帽子を被っているので迂闊に足が下せない。ストックで念入りに雪を払って足場を確認。四苦八苦して対岸に渡ると、果たして夏道と思しきうねうねと続く凹みがあった。この凹みを外さなければ、せいぜい足首から脛程度のラッセルで済むことがわかった。


        こんな状態なので渡渉にひと苦労                       ここから急登が始まる


 黙々とラッセルを続け胸突き八丁に到着。これから始まる急登に備えて念のためアイゼンを装着しておく。急な山腹をトラバース気味に登って行くと再び沢沿いとなる。お粗末なことに、最終水場で小尾根に取り付くべきところを見過ごして、小沢を
50mほど上流に登ってしまった。凹みを追ってはいるものの、ラッセルが太股になったのでこれはおかしいと思い、再びGPSを見てルートを外したことに気がついた。

 小尾根を直登してショートカットしようかと思ったが、下手をすれば傷を深くしそうなので諦め、大人しく引き返して夏道に復帰した。


        ちょっと嫌らしい急斜面のトラバース                      第一ベンチを過ぎた


 標高が上がって陽が差すようになると、雪質も変化してきた。乾いたサラサラの雪が次第に重くまとわりつくようになってきた。数歩歩くたびにアイゼンに雪が付着して高下駄状態となる。これをストックでたたき落とすことを繰り返しているので、遅々として捗らない。

 常念乗越を目前にした所でまたもや障害物。最後の
20mほどが稜線から飛ばされてきた雪の吹き溜まりになっている。腰まで重い雪に嵌ってしまい、悪戯にもがくだけで中々前に進めない。木立の枝につかまり身体を引き上げてようやく脱出することができた。時刻は既に1115分、日暮れまでに下山できるか微妙なところだ。


            常念乗越まで後わずか                    この吹き溜まり突破に難儀(先には雪庇)


 せっかく槍穂高を眺めに来たのに目の前に広がる大パノラマをゆっくり鑑賞している余裕がない。手早くエネルギー補給をするに止めてさっさと山頂を目指すことにする。

 山頂へと向かう登山道は、かなりの部分が吹き溜まりになっているので、出来るだけ岩の露出した個所を選んで登って行く。それでも、膝ラッセルを強いられる場面も多く、気ばかり急いてペースは上がらない。途中で前常念岳からの道と合流するが、人の歩いた形跡は見られない。本日常念岳を歩いているのは私だけ、つまり貸切ということだ。


       強風の通り抜ける乗越には雪が無い                         山頂を目指す


 山頂到着は
1315分。私にとっては例外的に遅い山頂到着時刻だ。しかし苦労の甲斐はあった。山頂からの眺望は絶品。槍穂高を始め、雪を頂いた北アルプスの名峰が勢ぞろい。南には過去経験の無いほど富士山がくっきりと見えていた。残念ながらのんびりしている時間は無い。


これが見たくて遥々やってきました



大天井岳の先に一際真っ白な立山



              穂高連峰                          乗鞍岳、その先には噴煙を上げる御嶽山


 
360度の景色を一通り網膜とデジカメに納めてすぐに下山を開始する。アイゼン無しの方が効率が良いのでスリップよりも時間優先。滑って尻もちを何度もつきながらもペースを上げてどんどん下っていく。自分のつけたトレースがあるので気は楽だ。

 王滝ベンチを過ぎる頃には夕闇が迫ってきたので気が気ではない。一度も休むことなく、車に帰着したのは殆ど暗闇の午後
510分。それでも、ぎりぎりヘッドランプを使わずに済んだ。それにしても暗闇のなかでスタートして暗闇のなか戻った山歩きは始めてだ。

 例によって疲労困憊しているのに脳内にドーパミンが多量に分泌されているのか、ランナーズハイ状態。不思議な高揚感に包まれ、それほど疲れを覚えない。しかしそれは帰路中央高速の大渋滞に巻き込まれるまで。長時間のドライブに疲れ果てズタボロ状態となって深夜に帰宅したのだった。


行動時間  
11時間15

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