常念岳  長野県 2857m   百名山
   


  
 2009年10月4日

 3週間前の鳳凰三山では転んで酷い目にあってしまった。そのときの打撲傷がようやく癒えた。秋雨前線が停滞して毎日雨模様のなか、4日の日曜日はピンポイントで晴天の予報が出ている。これを逃す手はない。時折チェックしていた山小屋のHPによれば涸沢辺りの紅葉が真っ盛りとのことなので、35年ぶりに北アルプスを目指すことにした。但し日帰りが前提なので上高地を経由する山歩きはとても無理な相談だ。アクセスが比較的容易で涸沢が望める百名山というと常念岳しかない。ということで今回は安曇野側にある一の沢からこの山をピストンすることにした。問題はいつもながら中央高速の大渋滞である。特に天気に恵まれた休日の夕刻は凄まじく、山を歩きに行くのか、車を運転しに行くのかわからなくなってしまう。中央高速の帰宅ラッシュのピークは何としても避けたいので思い切って早出することにした。

 日付が変わって間もなく自宅を出発、中央高速に乗る。長野自動車道を経て豊科ICで降り、安曇野GCにはナビの予想時間よりやや早い4時に到着することができた。ナビの案内はここまで、これから先は舗装された九十九折の山道を登っていく。登山口手前1kmの指定駐車スペースには既に10台以上が駐車していた。車のなかで朝食と身支度を済ませて450分に出発。ここからヒエ平の登山口まで15分ほど林道を歩くが、後から来た車が次々に私を追い越していく。皆、指定駐車場を無視して登山口近くの路肩に停めているようだ。ちょっと損をした気分になるが大した距離ではない。ヒエ平の小屋で登山者カードを提出し、山道に入る。今回のルートは沢沿いの緩やかな登りとガイドブックに書かれていたが、実際その通りだった。勾配が一定に保たれていてとても歩きやすい道だ。先日の鳳凰三山では古い登山靴を履いてスリップしまくり大いに苦労したので、余計そう感じるのかもしれない。今回は登山靴も新調、グリップはしっかりしており、足との相性も悪くなさそうだ。心地よい沢音を聞きながら、シラビソ林のなかをどんどん進む。やがて朝日が射してきて周囲の景観がモノクロからカラーの世界に変わってきた。




一の沢沿いの紅葉


赤い稜線が次第に近くなってきた

常念乗越でいきなり大展望が開ける


槍穂高の峰々

 沢沿いの紅葉は事の他見事だ。体調は申し分なくこれなら今日は快調なペースでいけると思い始めた矢先、左足のふくらはぎに鈍痛を感じた。歩き続けると次第に痛みが増してきた。ペースダウンして様子を見るが、多少の痛みはあるものの、何とか歩けそうだ。胸突き八丁を過ぎた辺りで、大きなストライドで飛ばしてきた長身の若者に追いつかれ、あっという間に抜き去られた。しばらくして逆に一人追い抜くが、小生より一回りシニアと思われる方。今回は足の痛みというハンディキャップがあるものの、やはり脚力は年齢に相関している証左なのだろうか。若い衆と張り合っても仕方ないが、ちょっと悔しい。 

 森林限界を過ぎると、あっけなく常念乗越しに到着である。目の前には、槍穂高連峰の大屏風絵が一気に広がってきた。パッとしない樹林帯での景観から劇的な変化である。誰が書いたシナリオか知らないが、この演出は見事と言うしかない。稜線の向こう側に隠していた大パノラマを一気に開帳してくれた。盟主槍ヶ岳の穂先はあり得ないほど急峻に天にそそり立っている。穂高連峰の岩稜もすごい迫力だ。期待していた涸沢方面の紅葉は残念ながら盛りを過ぎてしまったようだ。全体的にくすんでグレーのモノトーンになっている。一方、常念小屋の周辺の紅葉は今が盛りのようなのがせめても。小屋の近くに聳えるピークが常念岳と思ったが、これはとんでもない間違いだと気がついた。乗越からさらに
400mの高度を消化しなければならない。

 ここでしばらく休憩しコンビニのお握りと林檎を食べてエネルギーを充填する。最後の登りにかかるが、穂高側から冷たい風が強く吹きつけている。バランスを崩さないように注意しながら、既に
1100mの高度差を歩いて乳酸の溜まった重い足を引き上げ、一歩一歩、歩きづらいゴーロを登って行く。稜線に出てから登山者が湧き出たように増えてきた。表銀座を縦走してきたのであろうか、常念岳をピストンする空身の人達が多い。

 最後の急登にしばらく喘いだ後、920分に常念岳の頂きに立った。素晴らしい快晴に恵まれ、山頂からの展望は見事の一言に尽きる。近くは梓川の向こう側に広がる槍穂高連峰、笠ヶ岳、黒部五郎等の北アルプスのオールスターズ、遠くには富士山や白山など本州における主要な山々がくっきりと展望できる。若い頃に足跡を残した山々もあるが、40年近い時を経ていずれも新鮮に見える。次はどれにチャレンジしようかとワクワクしながら絶景を満喫した。  
 頂上には
20分ほど滞在し、そろそろ下山にかかる。乗越から再び樹林帯へ入り絶景とはお別れである。前回に懲りて、ころばぬように足元に神経を集中し慎重に歩を運ぶ。単調な下りについ毎度同じ思いが過ぎる。実際の所要時間は登りに3割〜5割多く要しているにも関わらず「体感時間は辛い登りよりも楽な下りの方が長い」のは何故だろう。沢沿いの道はそれでも変化があり楽しめるのが何より。途中、10人近い大パーティに追いつく。大きなザックを背負って遅々と歩みがのろい。思わず「ちっ」と舌を鳴らしてしまったところ、最後尾の方が気づいて道を譲ってくれた。我ながら品が無かったとマナーを反省、丁重にお礼して先に行かせて頂いた。

 ヒエ平到着は
1245分。小屋を素通りして駐車場まで歩き続け、目標としていた午後1時前にマイカーにたどり着いた。登山靴を運動靴に履き替え、すぐにハンドルを握る。帰路はやや早い時間帯だったので中央高速の渋滞のピークは避けられたものの、例によって笹子トンネル、小仏トンネルで数キロの渋滞に巻き込まれてしまった。それでも自宅帰着は予定よりも早く5時半頃であった。

行動時間   7時間35分

歩行時間   登り4時間、下り3時間 合計7時間

標準CT    9時間30分

西穂高岳方面


常念岳山頂


ヒエ平の登山口

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