石転び沢BC    山形・新潟県        
      

2013523日(木

 そろそろ夏日の日が続くようになって、山スキーのシーズンも終わりを告げつつある。北アの立山や白馬岳周辺、富士山や鳥海山等々、まだまだ楽しめそうなところは沢山あるが、今シーズンの滑り納めに選んだのは、渋いところで飯豊連峰の石転び沢。

 何しろ首都圏からはえらく遠いので一山では高速代がもったいない。帰りがけにもう一山、二王子山にも足を伸ばすことにした。夕食後、
2時間ほど仮眠をとり、日付が変わった頃に自宅を後にする。睡魔と戦いながらハンドルを握り続け、午前5時に飯豊温泉のゲート前に到着した。先着の車は無し。平日、なおかつアプローチの長いこのコースに今日入山するもの好きは私だけかも。

 早速出発の準備に取りかかった。まずは自転車。外してあった前輪を取り付け、ぺっちゃんこのタイヤに空気を入れる(一旦空気を抜かないと着脱できない仕組みなので)。次はスキー。ブーツをステップインしてザックに
Aの字にセット。最後は自分の足回り。今日は足場の悪い歩きが長そうなのでスニーカーは止めて登山靴とした。

 
550分にゲートの脇を通り抜けてからサドルにまたがる。いつもながら朝一番の重労働はきつい。延々と続く坂道と背中の重荷に喘ぎながら玉川沿いを漕ぎ進んで行く。新緑が目に入るが、ゆっくり愛でるのは後回し。


           ゲートを越えて漕ぎ出す                           梅花皮荘を振り返る


 飯豊山荘から再び立派なゲートをくぐってダート道に入る。ガタゴトとしばらく揺られて温身平に到着。ここまで
40分弱。徒歩ではこの倍はかかる道程だろう。


               飯豊山荘                            ゲートを越えて温身平へと向かう


 目立たないところに自転車をデポして歩き始める。すぐ先に
MTBを一台発見、どうやら今日は一人きりではないらしい。ちょっと心強い。途切れ途切れに雪の残る梅花皮沢沿いを歩く。天気は上々。ブナ林の新緑と稜線の残雪のコントラストが息を呑むほど美しい。


             ここに自転車をデポ                               MTBを発見


 左岸に付けられた階段を登って堰堤を越えると、ようやく沢歩きらしくなってきた。沢幅がぐっと狭くなり大きく
S字状に蛇行している。下つぶて石の手前まで行ってみたものの、大きく雪割れしていたので引き返して夏道を利用することにした。


             ブナの新緑が見事                               堰堤を越える



新緑と残雪のコントラストに思わずため息が


 ところが、この左岸のへつり道の怖いこと。斜面に付けられた踏み跡の足場が悪くてえらく緊張させられた。おまけに背負ったスキーが上部の枝に引っかかる。ヘコヘコと何度もお辞儀をしながら通過する。


      ろくな手がかりもないこのへつりが怖かった                   枝にスキーも引っかかるし


 
S字を抜けると見上げる沢は一面の雪。ここで登山口をスキーブーツに替えてシール登行に切り替えた。登山靴は袋に入れて流木の根元にデポしておく。ここまで来て遥か前方に先行者の姿が見えた。まだゴマ粒のようで歩きなのかスキーなのかは判然としない。


ここからシールでハイクアップ


 9
時に石転びの出合いを通過。ここから標高差1000mを登らなくてはならない。左岸に落石が目につくようになってきた。さらに高度を上げていくと今度は大きな雪塊がごろごろしている。


石転びの出合(右は門内沢、左が石転び沢)



石転び沢を詰めていく



           落石が目に付き始め、、、                         今度は雪塊がごろごろと


 勾配がきつくなってくると先行者の姿が一段と大きくなってきた。ずっとアイゼン歩行をしているようだ。スキーも担いでいない。ほん石転び沢の出合いを過ぎると勾配は一段と急になる。シール登行がそろそろ苦しくなってきたので、高度
1325m地点でアイゼンに切り替えた。ピッケルとストック一本を両手にスキーを背負って歩く。

 先行者のステップは、歩幅が大き過ぎて短足の私には合わないようだ。少し固くなってきた斜面にアイゼンの前歯を蹴り込んで足場を確保しつつ高度を上げていく。いよいよ大詰め、斜度
45度はあろうかという急斜面になってきた。

 ここで早くも先行者が下山してきた。私よりかなり年配と思われる御仁。いかにも雪慣れしていて急な斜面を危なげなく下ってきた。聞けば地元の方で毎年この沢を歩いている由。今年は例年よりも残雪が多くデブリも少なくて雪面がきれいだそうな。

 しばしの歓談後、最後のひと頑張り。稜線を目前にした高度
1750m辺りに大きなクラックがあった。幅もあるし、底も見えず、とても越えらる代物ではない。先行者のトレースに倣ってクラック端まで回り道して登行を続けた。


           先行者のトレースを追って行く                     そこの見えない深いクラック


 時折乾いた音が響き渡って驚かされる。音の方角に目をやると北股岳の山頂付近から発生した落石が山腹に激突して左岸一帯に破片を撒き散らせていた。滑降時には余り左側には近寄らないようにしないと地雷原に突入してしまう。


北股岳からは落石が頻発


 梅花皮小屋が見えてからが長い。何でこんな苦しい思いをしているのかと毎度山で発する愚問を口にしつつ、辛抱の歩きを続け
12時丁度にようやく稜線に立った。


             梅花皮小屋が姿を現す                     北股岳はガスに飲み込まれてしまった



         梅花皮岳の展望はあるが、、、                       大日岳の山頂はガスの中


 あいにく天気は下り坂ですぐ近くに聳える北股岳の山頂はガスのなか。稜線の反対側に回っても大日岳などの山頂部分はすっかり雲底に飲み込まれている。ガスもどんどん下って来るはで、モチベーションも今ひとつ。予定していた北股岳山頂往復案は却下して、ガスが濃くなる前に下山することに決めた。

 滑降前に腹ごしらえと梅花皮小屋の内部を偵察。なかなかきれいで快適そうな様子。ここに一泊して飯豊連峰全山縦走という案も悪くないななどと今夏の山行プランを思い描いてみる。

 
1225分に滑降開始。北股岳寄りのきれいな斜面にターンを刻む。雪が適度に緩んでいて極めて快適なザラメだ。しかし、このまま滑り降りると先ほどの落石の巣に突入してしまうので、適当なところで右にトラバースして回避。後は登りのトレースから大きく外れないように滑る。


            小奇麗な梅花皮小屋                          最初は急だがナイスザラメ



落石を避けて右にトラバース


 斜面には先ほどよりも雪塊の数が増えているし、真新しい滑落痕もいくつかある。足休めを我慢して危険地帯を一気に通過、その後はのんびり消化試合だ。門内沢との出合まで滑り降りたところで先のベテラン氏に追いついた。しばらくお喋りし、お先に失礼する。

 稜線から
4時間近くかけて稼いだ高度を30分足らずで滑り降りて登山靴のデポ地点に帰着。再び重いスキーとブーツを背負って必死のへつり。


            あっという間に滑り降りて                         デポした登山靴を回収


 残雪で道をロストしたりしながらも、温身平に無事帰着。デポした自転車をピックアップして楽チンサイクリングの始まりだ。一部に登り返しがあるものの、ペダルを漕がなくとも済むので快適そのもの。

 飯豊山荘からの舗装道路ではスピードが出過ぎないようセーブしながらどんどん下って行く。途中でハイキングの一団を追い越して午後
250分にゲートに帰着。温身平から25分。歩けば往復3時間の行程を1/3に短縮できるのだからスキーといい、自転車の機動力は大したものだ。かくして大満足のうちに今シーズンの滑り納めは無事に幕を閉じた。今日は新発田市内の宿に泊まって明日は二王子岳に向かう。


行動時間  9時間

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