2014年6月29日(日)
日本百名山の踏破には、今から思うと随分と気合が入っていた。精力的に日本各地を廻り、同じ日にふた山をこなしたりして3年で完登。それに比べると二百名山の方は遅々として進まない。ちょうど一年前の中ノ岳の145座目を最後にぱったり止まっている有様だ。名山なるものに意気込みが低下していることもあるが、日帰り圏内に魅力的な二百名山が残されていないことも理由の一つ。それでも一念奮起、今回はずっと気になりながらも手つかずだった、日帰り圏内ぎりぎりの池口岳を歩くことにした。
いつものように深夜に自宅を出発。夜道に雨という悪条件の下、ハンドルを握って300Km強の道程は流石に年寄りには堪える。しかもやっと辿り着いた遠山林道では登山口の標識を見落として行き止まりまで行ってしまい、方向転換できずに狭い山道をバックで引き返すというおまけ付き。そんなこんなでスタート前からかなり消耗してしまった。
ようやくたどり着いた登山口近くの駐車スペースには、週末というのに他の車は一台も見当たらない。やはりかなりマニアックな山なのだろうか。雨の降り止むのを待って午前5時半に歩き始める。薄暗い杉林の急坂をのっけからぐいぐいと登っていく。
分かり易いガイド 登山口 これを見落としてしまった
杉林を歩く ちょっとメルヘンチックな森
黙々と歩いているうちにいつの間にか雨雲は去って薄日が差してきた。実はこの展開は想定のうち。と言っても私の気象予報力ではなくてヤマテンのおかげ。毎度のことながらピンポイントの予報精度は大したものだ。
晴れ間が広がってきた コバイケイソウの群落
やがて急登も一段落して平坦地を歩くようになる。ここは面切平だろうか。木漏れ日にスポットライトを当てられた下草の緑が眩しい。
伐採跡地に広がる下草の緑が眩しい
休まずに2時間近く歩き続け、1838mピークに到着。ここで展望が一気に開けた。真正面に見えるラクダのこぶのような山はツインピークの池口岳だろう。その右隣にあるのは鶏冠山。面白いことに池口岳と同様に、鶏冠山も北峰、南峰を持つ双耳峰なのだ。
どちらも双耳峰の池口岳(左)と鶏冠山(右)
崩壊著しい黒薙の縁を慎重に通過して先へと進む。地図で見ても小さなピークが連続する尾根だが、実際歩いてみると帰路の登り返しを考えるとうんざりするほど結構なアップダウンが連続している。そんな地形のせいか、高度計の表示は増減するだけで中々2000mを越えてくれないのがもどかしい。痩せ尾根には崩落地や岩場もあるが、トラロープも固定されていたりして危うい個所は一つも無かった。
黒薙の崩壊地 南アルプスらしくなってきた
加加森山方面
一旦下りきったところからが本日の山頂に向けての正念場、450m弱の急登が始まる。登山道わきのイワカガミに癒されながらどんどん高度を上げていく。残念なことに山頂付近はいつの間にか湧いてきたガスに包まれて、すっかり視界が閉ざされてしまった。
シダの緑が美しい
単独登山は注意と書いてある だいぶ近くなってきた
山頂かと思うとその先にまだピークがあったりして、何度か期待を裏切られながらも、出発から4時間20分で山頂に立った。標高差から判断して4時間程度と予想していたものの、想定以上のアップダウンもあって目標タイムに届かなかった。
いつの間にかガスが湧いてきた トラロープのかかった岩場
地味な山頂標識 原生自然環境保全地域の説明
南峰(標高2376m)往復も計画していたが、ガスが濃くて展望が期待できないので断念。ランチを終えた後は長居は無用と回れ右し、下山にかかる。
急登、転じて激下りとなった急坂を下っていると、体格の良い若者が早いピッチで登ってきた。頭上にいた私に直前まで気がつかなかったようで、出会いがしらに熊と遭遇したかと腰を抜かさんばかりに驚かれてしまった。その後、やはり単独の男性三人とすれ違ったので、本日の入山者は、私を含め5人ということになる。
痩せ尾根を戻る 降りてくるとガスは消えるいつものパターン
新緑を愛でつつマイペースで往路を辿って下山していると、山頂直下で出会った若者がもう追いついてきた。小気味良いペースで軽快に駆け下り、あっという間に姿が見えなくなってしまった。その後はまた静かな一人旅。黙々と下山を続け、午後1時30分に登山口に帰着した。
駐車スペースには車が4台。何れも関西圏のナンバーばかりで、関東から遥々やってきたのは私だけだったようだ。ともあれ、梅雨の合間に南アルプス最南部で狙い通りの静かな山歩きを楽しむことができた。しかし試練はそこから。帰路、渋滞に嵌ってしまい、往復で合計11時間、缶詰め状態でハンドルを握ることになってしまった。やはり日帰りの池口岳は遠かった。
行動時間 8時間
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