2840m 山梨県 | |
2020年9月28日(月) 秋になると無性に訪れたくなる鳳凰三山。アプローチが容易な上、花崗岩で白化粧したこの山はとてもユニークで美しい。しかも北岳を始め、奥深い南アルプス連山の絶好の展望台でもあるのだ。 その北岳も毎年登りたくなる麻薬のような山。コロナ禍で今年はパスせざるを得なかったが、せめてひと目眺めておこうと今年も鳳凰三山に向かったのだった。例年のお決まりは、青木鉱泉からドンドコ沢を登り中道を下山するという周回コース。今回は趣向を変えて逆コースを歩いてみた。 今日は長丁場ということで、午前3時過ぎに青木鉱泉を出発。暗闇の中、薬師岳の登山口へと小武川沿いの林道を緩々と登っていく。漆黒の闇の中、何となく気配を感じて振り返ると後方にライトが二つ見えた。こんな早い時間に同じコースを歩く物好きはどうやら私だけではないらしい。 尾根に取り付くとアキレス腱が悲鳴を上げる急登が始まる。黙々と足を運び続けるうちに後方のライトはいつしか見えなくなった。呼吸を乱さない程度のスローペースで歩き続け、御座石で初めての休憩。行動食を摂って更なるハードワークに備えておく。
8時ちょうどに第一座目の薬師岳に到着。お目当ての北岳とそのお仲間、白峰三山が眼前に迫る圧巻の眺望だ。振り返れば富士山が甲府盆地から沸き立つ雲海で見えたり隠れたり。逆光気味ということもあり残念ながら初冠雪は確認できなかった。
広々した薬師岳の山頂を辞したら、次は第二座目となる観音岳。緩やかな稜線を鞍部まで下り、100mほど登り上げて鳳凰三山の最高峰に立った。いつも大勢のハイカーに占拠されている頂だが、今日は独り占めだ。景色を眺めたり、二度目の行動食を摂ったりして寛いでいると、鳳凰小屋からと思しき老若男女が続々と山頂を目指してくる。密になること必至なので、さっさと席を譲ことにした。
最後の地蔵ヶ岳へは赤抜沢ノ頭を越えていかねばならない。疲れた脚にはこれがなかなかこたえるのだ。鳳凰小屋へのショートカットの誘惑を断ち切り、地蔵ヶ岳に到着。オベリスクが本当のピークだが、私には登れないことがわかっているので、その基部の賽の河原でお茶を濁しておく。
賽の河原からは蟻地獄。ここを下りに使うのは初めてだ。一歩進んで半歩ずり落ちる登りとは対照的に、下ってみるとまるで富士山の砂走のようで重力が味方してくれる。一歩で二歩分進み効率が良い。
鳳凰小屋は小屋番の方に挨拶したのみでスルー。給水で立ち止まる以外は休みなしで下り続ける。ドンドコ沢に入ると、その荒れ様は予想以上だった。一年経過しても昨年の台風19号の爪痕が生々しく残されている。どこが登山道か判然としない区間もあり、ピンクのマーキングを忠実に追っていかないとルートを外しかねない。 更には土砂で崩落した箇所を大きく高巻いたり、フィックスロープに縋って荒れた沢に降りたり登ったりとえらく消耗させられる。青木鉱泉に帰着したのは14時10分。今回は所要時間、実に11時間5分と随分な長丁場となってしまった。
8年前の記録を振り返ると、同じコースを逆回りながら8時間半で歩いていたのが嘘のようだ。歳は取りたくないのは山々ながら、加齢の現実は如何ともし難い。とは言え、この日の記録は、標準CTの12時間50分よりは幾分下回っているのが多少の救い。体力気力の維持に努めていれば、一つ歳を重ねた来年も再チャレンジできるのではと希望が持てた。 |