火打山BC  新潟県 2462m   百名山    
   

2012428

 以前火打山に登った際に、この頂きからのスキー滑降はさぞかし楽しかろうと夢想したことがある。その時は考えもしなかったが、山スキー10回目にして、ようやくこの夢を現実にすることができた。

 ゴールデンウィーク初日の深夜に自宅を出発。都内の環状
8号線でいきなり渋滞に嵌る。都内を抜けるのに1時間以上を要したものの、幸いその後はスムーズだった。午前5時、笹が峰に到着。連休なので満車状態を心配していたのが嘘のように2か所にある駐車スペースはどちらもガラガラ。駐車場は高さ3mはあろうかという雪壁で囲まれている。

 朝食やら身支度やらでぐずぐずしているうちに、つぼ足の単独とスキー二人組が出発していった。
520分、登山ゲートから雪壁を登って私もハイクアップ開始。朝の冷え込みで雪面はかちかちだ。恐らく一週間前のものと思われるトレースは、汚れた雪に紛れて、あるような無いような感じで頼り無い。


          登山ゲートは深い雪の下                            広々した林の中を行く


 疎林のなかを緩やかに登って行くが、広すぎて方向感覚がおかしくなりそうだ。黒沢に近づき過ぎて、えらく回り道をしてしまった。仕方なく黒沢を見下ろす左岸沿いを進む。次第に谷幅が狭くなってきた。そろそろ右岸へ渡るはずと目を凝らして辛うじて雪に埋もれた橋を見つけることが出来た。


         十二曲がりの尾根が見えてきた                           黒沢を渡る橋


 このまま黒沢を遡行しても良いのだが、状況が分からないので今回は無難に尾根ルートから行くつもり。橋を渡ったところで板を担いで対岸の急峻な壁をよじ登った。さてここからの足回りをどうするか。十二曲がりは急坂が連続するので途中で行き詰りそうだし、不安定な急斜面でアイゼンに履き替えるのが、いかに大変かは過去学んだこと。軟弱ではあるが、ここからアイゼンを履いてシートラーゲンで行くことにする。

 ずっしりと重い板を背に急斜面を歩きだすと汗がどっと噴き出てくる。ここで今回初登場のアイテムが、
Ospreyの「ハイドラフォーム レザヴォア 2.0リットル」。ザックを下ろすこと無く、ちゅぱちゅぱと何やら幼き頃の懐かしい感覚で水分補給できる優れものなのだ。うがい薬のような臭いが気になるが、そのうち慣れるだろう。


             十二曲がりの急登                       見返りは展望、高妻山が見えてきた


 先行者のトレースは斜度を無視して容赦なく一直線に上へ上へと向かっている。陽の当らない西斜面なのでアイゼンが快適に利いてくれるので助かる。大汗をかいてようやく稜線に出たが、そこからがまた胸を突く急登だ。黒沢の流れを真下に見ながら殆ど垂直にも思える斜面を四つん這いになって登った。


           ようやく尾根筋に出たが、、、                    輪をかけて厳しい急登が待っていた


 急登が一息つくとそこは富士見平。ここからシール歩行にしても良かったのだが、黒沢岳のトラバースが控えているので、そのままシートラーゲンを継続する。

 この辺りから北側の眺望が一気に開けてきた。青空の下で真っ白な火打山が美しい。目を凝らして見たが山頂からの斜面にシュプールは付いていないようだ。


              富士見平                                 帰りは快適そうな斜面



火打山が見えた


 黒沢岳のトラバースは、朝は陽が当らないせいか、完全なアイスバーン。スキーのトレースが残っていたので有り難く使わせてもらう。このトレースは夏道通りに付けられていたので、途中からちょっと高度のロスはあるものの高谷池ヒュッテに向かってショートカットする。


             黒沢岳のトラバース                             天気は最高


 小屋の前にはテントが二張。小屋番が除雪に精出していたので、下山予定のサクラ谷の様子を聞くと、へつりが厳しくなっているかも知れないがよくわかないとのこと。結局行ってみるしかない。小屋の前のベンチで大休止、残る400mの登りに備えてエネルギー補給を行う。


           高谷池ヒュッテ            大した標高差が無いように見えるのですが、、、

 この頃になるとクラストしていた雪面がザラメに変化してきた。足首辺りまでもぐるのでシール歩行すべきであったろうが、面倒なので今日は担ぎ屋に徹することにした。先行するスキーヤー二人は雷鳥平を巻いて直接火打山へと向かっている。私は夏道に近いところを進んだ。スキーだと、かなりの傾斜でクトー無しでは苦闘間違いなしと言った感じ。雷鳥平に着くと正面に火打山が思ったより高く聳えていてちょっとゲンナリする。


            高妻山を眺めながら登る                      雷鳥平からの火打山最後の登り


 気温上昇に伴って雪面はいよいよ緩み、脛から膝ラッセルになってしまった。四苦八苦しながら
1045分に山頂到着。霞がかかっているのが残念だが、360度の眺めが素晴らしい。スキーヤー二人組が影火打へ向かってちょうどドロップするところだったので見学に行く。どうやら惣兵エ落谷へ滑り込むらしい。


焼山、背後は雨飾山



妙高山、左は私のスキー



高妻山


 彼らを見送った後、再び山頂へと戻り、私も滑降の準備をする。そうこうしているうちに単独二人が相次いで到着。どちらも地元の方らしい。聞けば一人は私の予定しているサクラ谷を下るとのことなので心強い。彼は手早く滑降準備を終えて火打山の南面を颯爽と滑り降りて行った。続いて私もエントリー。斜度は強いが、快適なザラメで気持ち良く板が回ってくれる。転びもせず標高
2050m辺りまで一気に滑り降りた。


               この斜面を滑降                           滑り降りた跡を振り返る


 単独氏はサクラ谷と
2019mピークを挟んで反対側にある鍋倉谷?に滑り込んでいった。私は、余り下り過ぎないように気を付けながら高谷池ヒュッテ方向へとトラバース。せっかくなので100mほど登り返してからサクラ谷へ滑り降りることにした。

 雪のプールと化した高谷池の縁を回り込んでサクラ谷にドロップ。雪は重いザラメになって板が引っ掛かる上、縦縞があって滑りにくい。現在地を確認しながらゆっくりと滑り降りる。標高が下がると雪が大きく割れてマンホール状になっているところが幾つもある。中にはゴーゴーと雪解け水が渦巻いており、落ちたら一巻の終わりだ。


        サクラ谷にエントリー                 滑り降りた跡を振り返る


 途中で彼の単独氏が追いついてきた。どこの沢を滑り降りたのか、結局聞きそびれてしまった。惣兵エ落谷との出合いを過ぎた辺りで単独氏と一緒に左岸をよじ登る。彼は手慣れたものでテキパキと板を着脱してどんどん先に行ってしまった。


          次第に沢筋が狭まり、、、                           デブリもあったりして



           そろそろ潮時と沢を離れる                        緩い林間コースの下り


 林の中の緩いスロープを下っていると先ほどのスキーヤー二人のトレースも合流。それでも途中でトレースを見失ってしまい、
GPSの手助けも借りながら林道に出た。

 ここから笹が峰までは、だらだらとした登り道。シールはせずヒールを固定したままバタバタと歩いていたが、疲れるばかり。試しにヒールフリーにしてみたら、この方が格段に具合が良かった。雪を選べば逆走することもないことを発見。誰に教わる訳でもないので効率が悪いものの、
BCの度に実地で何かしら身に着くようだ。


               林道に出た                                  除雪最終地点


 除雪最終地点からは板を背負って乙見湖を眺めながらてくてく歩いた。駐車場帰着は
1410分。8時間50分のロングハイクになってしまった。今回は板の重さも加えて15kgを越える荷物を背負って登りの大部分を歩いたが、いたいけな年寄りにはやはりかなりの重労働だった。あらためてクトーも駆使したシール歩行の重要性を認識した次第。そんなこんなで汗を沢山かかされたが、今回も完全燃焼で存分に山スキーを楽しむ事が出来た。この日は長野市内泊まり。翌早朝帰途につき、渋滞が始まる前に余裕で帰宅した.


後記
黒沢は、高谷池ヒュッテのHPによれば1週間前ですら以下のようなオソロシイ状況。無謀なチャレンジをせずに正解でした。


             高谷池ヒュッテ便りより

 

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