火打山  新潟県 2462m    百名山
妙高山  新潟県 2454m  百名山



2010102


  長かった酷暑の夏もようやく終わって汗まみれの山歩きをしなくてもよい季節になった。体力的に少しは楽になったので今回は妙高連峰に残る百名山の二座をいっぺんに登ってしまうことにした。山と高原の地図の標準CTでは14時間10分となっていてかなりのロングコースだ。下山が遅くなるかもしれないので、念のため長野市内のホテルを予約しておいた。

  
深夜に自宅を出発して登山口の笹ヶ峰には午前5時に到着した。妙高高原ICで高速を降りたが、IC近くにはコンビニは見当たらない。自宅近くのコンビニでお弁当を買っておいて正解だった。駐車場は既に満杯に近い。空いたスペースに車を停めて身支度を行う。車中泊の皆さんもそろそろ起き出して準備を始めている。

  5時15分に登山口にあるちょっとした小屋のようなゲートをくぐって歩き出した。まだ暗いのでヘッドランプをつけて行く。しばらくは平坦な道で、かつ立派な木道の上を歩けるので楽ちんだ。次第に傾斜が強まるにつれて木道の一区間が短くなり、ついには階段のようになってきた。ステップが自分の歩幅と合わないときはリズムが崩れて、ちょっと苦痛。木道は時々途切れることもあるが、ずっと続いている。やがて黒沢にかかる橋をわたると十二曲がりの急坂になる。この辺りで先行していた登山者を何人か追い抜くが、今日はなぜか息切れ気味。こんな調子で長丁場に耐えられるのか不安になる。高度が上がるにつれ展望も開けてきた。うっすらと雪化粧をした北ア後立山連峰が木々の間から姿を現してきて気分も盛り上がる。



       北アの後立山連峰           この辺りの紅葉はまだのようだ



            合目表示が有難い              黒沢池との分岐



  富士見平で黒沢池方面との分岐を過ぎると黒沢岳を巻く平坦な道となり息切れも一段落。左手に高谷池小屋の三角屋根が見えてきた。小屋を通り過ぎて緩やかに一頻り登っていくと天狗の庭に到着。紅葉はまだ始まったばかりで盛りにはちょっと早いようだが、それでも見事な色づきだ。池塘の渋く枯れた草との絶妙な組み合わせでため息が出るほど美しい。自然が長い時間をかけて作り上げた芸術作品。いくらお金をかけても人工的にこうした庭を速成で創造することは絶対に不可能だろう。なんという贅沢だろうか。山歩きを始めたおかげでこうした素晴らしい景色に出会えるようになった。こうして山を楽しむことが出来るのも、健康と時間的余裕を持てたからで、とても幸せなことだとつくづく思う。もう一つの要件、金銭的余裕にはあいにく恵まれていないが。



     次第に紅葉が現れる                          木々の合間から火打山


木道には霜が降りていてすべるすべる                    高谷池小屋に到着




うっすら雪化粧の後立山連峰




        言葉を失う風景の連続なのだ




天狗の庭の池塘に映る火打山


 道は次第に天狗の庭を下に見下ろすようになり、どんどん高度を上げていく。正面に大きな崩壊が見えるが、これが雷稜であろうか。この頃になると小屋泊まりの人達がどんどん下山してきて賑やかになってきた。雷鳥平から傾斜の強まった坂道を上り詰めて山頂に到着。笹ヶ峰から3時間半を要した。山頂からの眺めも最高だ。北アルプスの屏風のような峰々、すぐ手前に水蒸気を噴出している焼山、左回りに眺めると高妻山、これから向かう妙高山が見える。北側には日本海が広がっている。




天狗の庭をぐるりと回りこんでいく                      頂上まで後わずか




       バックは日本海                           妙高山は近いようで遠いのだ




北アルプスの絶景


 しばらく景色を楽しんでいるうちに山頂には人が増えてきたのでそろそろ下山することにする。高谷池小屋まで来た道をそのまま戻るが、天狗の庭を見下ろす形になるので、再び芸術作品の鑑賞だ。高谷池の分岐を今度は黒沢池方面へと向かう。ここで小休止している間にハイペースの若人に追いつかれた。この人とは妙高山山頂で一緒になるが、火打山を3時間きっかりで登ったらしい。かなりの健脚だ。茶臼山までは緩い登りでその後は黒沢池ヒュッテまで一気に下っていく。眼下には紅葉と地塘の眺めが広がって来た。ヒュッテは8角形のユニークな姿をしている。



              黒沢池を望む                            黒沢池ヒュッテの周囲の紅葉



 小屋の前のベンチで一息を入れた後は、外輪山の大倉乗越への登りが始まる。ここは緩い坂なので、それほどきつくはない。乗越からは、ガスに半ば隠れた妙高山が目の前に迫力ある姿で迫ってきた。どこを登っても相当に急峻そうだ。外輪山の底へはロープを伝って一気に下っていくが、そのうち山腹を巻くように下っていき、水場に着いた。このすぐ上に燕温泉との分岐があるちょっとした広場がある。ここからの狭い溝のなかの登りがきつかった。もうすでに乳酸がかなり蓄積されている上に手を使って這い登るような急登である。背後の外輪山の高さをなかなか越えないので余計に疲労感が増すようだ。それと下ってくる人が引きも切らないので道を譲ったり譲られたりで煩わしい。ごろごろした石だらけの足元ばかりに目がいって頭上にせり出した岩に気がつかず思いっきり頭をぶつけてしまった。思わず「痛ってぇー。クソー」と大声を出したら、そのすぐ上に人が居た。お里が知れる恥ずかしい思いをしてしまった。今度は上にも注意しながら一歩一歩慎重に足を前に運び、
1210分に妙高山の山頂に立った。燕温泉など他の登山口からもハイカーが大挙して登って来ているので頂上は大盛況である。山頂からの眺めは全体的にガスが上がってきているので今ひとつになってしまったのは残念。しばらく休憩して南峯の妙高大神の方にも足を運んでみた。北峰より若干高いような気がしたが実際はどうなのだろう。帰宅後カシミールでチェックすると7mほど南峰の方が高かった。



         大倉乗越から妙高を仰ぎ見る                       ガスに包まれ幻想的な長介池




           岩だらけの妙高山への登り道                       たくさんの人で賑わう山頂




妙高山から見た火打山と焼山



 
これで今回の目標2座はクリアできたので下山を開始する。時間的に遅くなってきたので行き交う人達は格段に少なくなったが、先ほど火打山の登りで見かけた顔ぶれが何人かいる。顔を完全に蚊帳で包んだお姉さんとのその連れ、拾ったデジカメの持ち主を探していた若い女性3人組など。ふた山を連荘する健脚は結構いるようだ。黒沢ヒュッテからは富士見平へと向かう。池塘と周辺の紅葉を楽しみながら緩やかな下り道を行く。人通りの少ない静かな高原歩きだ。富士見平の分岐に着くと火打山からの下山する人、また人。夕刻が迫ってきたので少しスピードアップして木道を下った。笹ヶ峰の駐車場には午後3時35分に帰着。凡そ28km10時間20分かけての山歩きであった。天候にも恵まれ、百名山2座クリアの充実感にも浸ることができた。今日は慌ただしく東京へ戻るのは止めよう。帰路、最寄の「苗名の湯」に立ち寄って汗を流し、満ち足りた気分で長野市内の宿泊先へと向かった。


行動時間     10時間20分
歩行時間     9時間30分
標準CT      14時間10分


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