燧ヶ岳BC  福島県 2356m   百名山    
   

20164月9日(土)

 毎年この時期恒例にしている道路開通前の尾瀬詣で。どうしてもアクセスが容易な至仏山界隈が活動の中心になってしまうのだが、今年は趣向を変えて群馬県側から燧ヶ岳を日帰りしてみることにした。

 問題は長いアプローチ。鳩待峠は論外で、唯一可能性があるのは沼田街道から尾瀬沼、ナデッ窪を経由して山頂に至る往復
40Kmのルートだ。

 それと実は懸念材料がもう一つ。途上国で生水を飲んだ訳でもないのに細菌性胃腸炎とやらで、ここ一週間のたうち回っていたのだ。大暴れした胃腸は治まったものの、まだ回復途上なので長丁場にどこまで耐えられるか心配だ。しかし、翌週には通行止めが解除され、この時期限定の人気のない静かで「遥かな尾瀬」が益々遠のいてしまう。山は逃げないがチャンスは有限。落ちた体力は山のフィトンチッドがカバーしてくれるだろう。


 まだ夜の明けやらぬ午前
4時半に尾瀬戸倉に到着、第一駐車場の片隅に車をとめた。早速薄明りの中で前輪を外したクロスバイクを組み立てる。スキー板にブーツを固定しザックに括り付けて準備完了。5時ちょうどに肩と尻にずっしりと重いザックを背にペダルをこぎ始めた。


               無人の大清水                         ここから先は雪道 バイクをデポ


 沼田街道の冬季閉鎖のゲート脇をすり抜け、片品川沿いを息を切らしながら登って行く。大清水には
50分ほどで到着。ここから先、雪がついていればシール登行に切り替えるつもりだったが、雪は路肩に申し訳程度あるだけだ。行けるところまでバイクで進むことにする。

 勾配の増したダート道を登ること
40分、路面は一面の残雪に覆われこれ以上の前進は無理となった。標高は既に1300mを少し越えている。バイクをデポしシートラーゲン開始。ちなみに足元はスニーカーのままだ。

 朝の冷え込みで雪面は固く締まって歩き易い。
20分ほどで一ノ瀬休憩所に着いた。ここから車道を離れようやく山道となる。兼用靴に履き替えていると中年男性が追いついてきた。地元群馬の方で、尾瀬沼を散策するとのことだ。スノーシューを背にえらく足が速い。あっという間に後姿が視界から消えてしまった。


              登山道入り口                           雪がつながったのでシール登行に


 急坂をジグザグに刻む登山道には相当部分に木道が敷かれているが、その上に中途半端に残雪が乗っているので始末に悪い。雪の緩む時間帯は悲惨なことになりそうだという予感は、帰途見事的中することになる。。。


           雪に埋もれた三平峠                              尾瀬沼湖畔に降りる


 急登が一段落したところでシール登行に切り替えた。三平峠からは標高差
100mほどの下り。シールのまま尾瀬沼湖畔へと滑り降りた。尾瀬沼はまだ一面氷のようだが、よく見ると岸部近くは明らかに解氷が進んでいる。中央突破は無謀極まりないので、左手の湖畔沿いに進む。雪が切れている個所は山側を迂回したりするので思いの他時間がかかってしまった。


燧ヶ岳を対岸に見る


 遥か遠くに見えた燧ヶ岳もいつの間にかもう目前。ナデッ窪への急登に備え標高
1700mの地点で小休止をとった。カロリー補給とともに自作のヒールリフター&クトーを装着し急登に備えておく。


ナデッ窪の様子


 寡雪のせいか、ブッシュの目立つナデッ窪を登り始める。ものの本に依るとナデとは雪崩を意味するらしい。特に残雪期は要注意ともある。だからという訳でも無いが、沢地形の両サイド上部を念入りにチェックしておく。少ない積雪量が幸いしたのか崩れ落ちそうな雪庇やブロックは見当たらず、まずは一安心。


ブッシュが目立つ



斜度のある上部にはデブリが出ていた


 高度が上がるにつれ斜度が増してシール登行が苦しくなってきたが、キックターンを小刻みに繰り返して何とか乗り切った。ナデッ窪を登り切って正面のピークの右手に出る。ここでお恥ずかしい勘違いをしてしまった。俎
嵓を目指していたのに、何を血迷ったのか、正面のピークを柴安嵓と思い込んで嵓と赤ナグレ岳との中間に位置するピーク(御池岳?)に登ってしまったのだ。


                嵓                          山頂


 ただでさえ乏しいエネルギーを無駄使いしてしまった。すぐにシールのまま滑り降りて改めて
嵓を右から巻いて登る。岩場の手前でスキーをデポし踏み抜きを繰り返しながら最後の一登りで山頂に立った。時刻は1250分。戸倉から8時間近くも要してしまったが、体調不十分にも関わらず、引き返しのデッドライン、午後1時には辛うじて間に合ったので良しとしよう。


尾瀬沼全景



巻機山、平ヶ岳方面


 無人の山頂を想定していたのに、山頂には
5名ほどのスキーヤーや登山者がいて意外にも賑やかだった。聞けば彼らは福島県側の七入から入山したそうな。時間が押しているので余り長居は出来ない。証拠写真を撮ったらすぐに回れ右。スキーのデポ地点に戻り滑降の準備にかかる。


山頂から北斜面にドロップするスキーヤー バックは会津駒ケ岳



尾瀬ヶ原と至仏山


 
115分、滑降開始。少々重いが久々のザラメ雪の感触を楽しみながらどんどん下る。標高差600m20分で滑り降り、お楽しみタイムはあっけなく終了。


尾瀬沼に向かってまっしぐらに滑降


 再びシールオンし、うんざりする程長い道程の帰途につく。燧ヶ岳と尾瀬沼に別れを告げ、三平峠の登りにかかる。時間が気掛かりなので休まず先を急ぐ。峠からジグザグの急坂にかかると雪が切れ出したのでシートラーゲンに。朝方は締まっていた雪が緩み、恐れていた通りの踏み抜き地獄となった。木道の隙間に嵌ると太ももまで突き抜け、抜け出すのも容易ではない。やっとのことでバイクのデポ地点に帰着した頃には大分陽も傾いてしまった。


燧ヶ岳に別れを告げる


 帰りはペダルをこぐ必要もないので横着しブーツのままサドルにまたがる。重力任せで
11㎞の道程を一気に下った。戸倉帰着は午後530分。12時間半に及ぶ行動時間のうちスキーは僅か20分足らず。その他の時間はひたすら無心の境地で歩き、ペダルを漕ぐという山歩き。特に危険な個所が有る訳でもなく、人と出会うことも稀で自然をより身近に感じる、こんなまったり系の山スキーもたまには悪くない。


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