燧ヶ岳  福島県 2356m   百名山
 
  



2010
521

燧ケ岳は尾瀬側からのアプローチが非常に長い。最短コースは会津側の御池登山口からのルートである。御池と沼山峠のバスが本日開通するので、早速この便を活用させてもらうべく、燧ケ岳登頂後は長英新道から尾瀬沼を経て沼山峠へと下るルートを計画した。

 東京の自宅を午前2時に出発。尾瀬の南、片品村はそれほど遠いというイメージは無いが、北側の檜枝岐村はえらく遠く感じた。東北自動車道の西那須塩原ICを降りてから、国道352号線を延々と走り続けるためか。自宅からおよそ4時間半をかけて御池に到着、有料駐車場に車を停めた。平日とあって広大な駐車場には数えるほどしか車が無い。

身支度を整え645分に出発。いきなりの雪道となるが、しっかりした固さで踏み抜きの心配はないようだ。すぐに急登となるがキックステップで快調に歩を進める。しばらくして先行していたスキーヤーに追いついた。スキー用のブーツで歩きにくそうだ。展望が広がると広沢田代に着く。ここでもう一人のスキーヤーが休憩していた。どうやらここは山スキーのメッカらしい。




            スキーヤーに追いつく                            残雪がいっぱい






広沢田代の木道



また一頻りの急登となるが、ここでかなりご年配の登山者に追いついた。百名山を目指しているが、雪山は2回目とのことで雪の急斜面に不安を隠せない様子だった。しばらく一緒に歩くが、ペースが合わないので先行させてもらう。熊沢田代の手前でさらに別のスキーヤーの一団に追いついたが、連中は赤布のマーキングから離れて左手方向に進んでいる。しばらくして熊沢田代から振り返るといつの間にか追い越していた。気の毒にも彼らはルートを外したために藪漕ぎを強いられている。雪山なのでどこでも歩けるとは言え、マーキングはそれなりに尊重した方が良さそうだ。ここで先頭ランナーになってしまったようで、雪面には踏み後が無い。時折GPSを参照しながら、ルートを外さないよう慎重に歩く。





           背後に会津駒ケ岳が見えてきた                    かなり急な頂上直下の雪渓




 無雪期には歩きにくいと言われる岩礫帯の急斜面にも締まった雪がしっかりついているので歩きやすい。スキーであれば下りはあっという間だろう。しかし一度こけたら止まりそうもない。それは登山者も同じなので気を引き締める。クランク状に一旦東側へ回り込んでから最後の急勾配を登りきると俎ー(まないたぐら)の頂である。文字通り一山終えた気になってしまうが、燧ケ岳の山頂標識があるのは、向かい側に見える柴安ー(しばやすぐら)である。余談になるが「ー」をネットで検索すると「切り立った岸壁」を意味する漢字とのこと。百名山を目指していると体力だけでなく少しは知恵もつくらしい。さて、一旦鞍部に下ってから柴安ーへ登り返すが、山頂直下が雪のナイフリッジになっていて、しかも胸を突く急斜面。左側は赤ナグレ岳へ向けて一気に落ち込んでいるが、右側は俎ーとの鞍部があって万一滑落しても、はい松に引っかかって何とか止まりそうだ。右側に寄り気味に行こう。つま先を雪面にしっかり蹴りこみ、一歩一歩確かなステップを作りながら登りきった。帰宅後ネットで調べると案の定、残雪期にここから滑落した人の記録があったが、さもありなん。ちなみにトラックレコードをチェックすると俎ーから柴安ーへの高度差は約
50mあった。





俎ーから柴安ー、上部の雪稜が厳しい








         貧弱な山頂標識もあるかと思えば。。。                  こんな墓石みたいなのも




柴安ーの頂上には墓石のような?立派な標識があった。素晴らしい天気に恵まれて、眺望も申し分ない。眼前の至仏岳のどっしりした山容が印象的であるし、のっぺりした平ヶ岳もすぐそれとわかる。地図と見比べながら、日光や那須の山々や先日登った越後駒ヶ岳などを同定して楽しんだ。さてお楽しみの後は問題の下山ルート。先ほどのナイフリッジを滑落すれば50mとは言え垂直落下に近い初速で落ちる故、おそらく無事では済まないだろう。軟弱かも知れないが、君子危うきに近寄らず、予定を変更して見晴新道を降りることにした。南向きとあって、しばらく雪の無い岩稜を下る。赤ナグレ岳を正面に見ながら沢に下りていくが、ここから再び雪道でしかも急斜面。本日初めて軽アイゼンを履いたが、とてもではないが斜面には背を向けては歩けない。後ろ向きになってステップを切りながら慎重に下った。沢に出てからは、踵落としのキックステップで一気に行く。途中で小規模ながらデブリがあった。ここを通過直後、ザザザッツという音とともにこちらに向けてスーツケース大の雪塊が落ちてきたので肝を冷やす。残雪期の山はどこを通ってもリスクがあるということか。





            落ちてきた雪のブロック                       沢沿いの歩きやすい雪道




 ブナ林のなかをどんどん下っていくとそのうちに傾斜が緩み尾瀬沼からの道と合流した。この辺りから木道が現れ始めるが、雪をかぶっているので落とし穴状態、木道を外すと踏み抜いて太腿まではまったり、木道に向こう脛を嫌と言うほどぶつけたり散々であった。尾瀬小屋から尾瀬ヶ原を見渡すが、まだ半ば雪をかぶっており、水芭蕉には若干早そうである。それでも元湯山荘までの道すがら、雪の合間そこかしこに顔を覗かせている水芭蕉を楽しむことができた。段吉新道、燧裏林道と進むが、徐々に登り勾配となる。見事ではあるが単調なブナ林のなかを延々と歩き、いくつかの小沢を越えると再び湿原が出てくる。美しい御池田代をフィナーレに8時間半を要して燧ケ岳を終えた。





              閑散とした尾瀬小屋                             尾瀬ヶ原





            水芭蕉がかわいい





燧裏林道から燧岳を仰ぎ見る




今晩は宿代を浮かすために檜枝岐村のミニ尾瀬公園で車中泊である。燧の湯で露天風呂を楽しんだ後は、公園周辺の美しい新緑をつまみにビールを飲んだ。暮れ行く里の景色の変化を眺めながら軽い夕食を摂る。わが愛車は後部座席を倒すと狭いながらもフルフラットになるので寝心地は悪くない。全開にしたスカイルーフから満天の星を眺めながら早めに就寝した。


行動時間                      8時間30
歩行時間
                       7時間45
標準コースタイム          12時間20


Map     Track
  トップ     山歩き 
inserted by FC2 system