福島県 2356m | |
燧ケ岳は尾瀬側からのアプローチが非常に長い。最短コースは会津側の御池登山口からのルートである。御池と沼山峠のバスが本日開通するので、早速この便を活用させてもらうべく、燧ケ岳登頂後は長英新道から尾瀬沼を経て沼山峠へと下るルートを計画した。 東京の自宅を午前2時に出発。尾瀬の南、片品村はそれほど遠いというイメージは無いが、北側の檜枝岐村はえらく遠く感じた。東北自動車道の西那須塩原ICを降りてから、国道352号線を延々と走り続けるためか。自宅からおよそ4時間半をかけて御池に到着、有料駐車場に車を停めた。平日とあって広大な駐車場には数えるほどしか車が無い。 身支度を整え6時45分に出発。いきなりの雪道となるが、しっかりした固さで踏み抜きの心配はないようだ。すぐに急登となるがキックステップで快調に歩を進める。しばらくして先行していたスキーヤーに追いついた。スキー用のブーツで歩きにくそうだ。展望が広がると広沢田代に着く。ここでもう一人のスキーヤーが休憩していた。どうやらここは山スキーのメッカらしい。
また一頻りの急登となるが、ここでかなりご年配の登山者に追いついた。百名山を目指しているが、雪山は2回目とのことで雪の急斜面に不安を隠せない様子だった。しばらく一緒に歩くが、ペースが合わないので先行させてもらう。熊沢田代の手前でさらに別のスキーヤーの一団に追いついたが、連中は赤布のマーキングから離れて左手方向に進んでいる。しばらくして熊沢田代から振り返るといつの間にか追い越していた。気の毒にも彼らはルートを外したために藪漕ぎを強いられている。雪山なのでどこでも歩けるとは言え、マーキングはそれなりに尊重した方が良さそうだ。ここで先頭ランナーになってしまったようで、雪面には踏み後が無い。時折GPSを参照しながら、ルートを外さないよう慎重に歩く。
柴安ーの頂上には墓石のような?立派な標識があった。素晴らしい天気に恵まれて、眺望も申し分ない。眼前の至仏岳のどっしりした山容が印象的であるし、のっぺりした平ヶ岳もすぐそれとわかる。地図と見比べながら、日光や那須の山々や先日登った越後駒ヶ岳などを同定して楽しんだ。さてお楽しみの後は問題の下山ルート。先ほどのナイフリッジを滑落すれば50mとは言え垂直落下に近い初速で落ちる故、おそらく無事では済まないだろう。軟弱かも知れないが、君子危うきに近寄らず、予定を変更して見晴新道を降りることにした。南向きとあって、しばらく雪の無い岩稜を下る。赤ナグレ岳を正面に見ながら沢に下りていくが、ここから再び雪道でしかも急斜面。本日初めて軽アイゼンを履いたが、とてもではないが斜面には背を向けては歩けない。後ろ向きになってステップを切りながら慎重に下った。沢に出てからは、踵落としのキックステップで一気に行く。途中で小規模ながらデブリがあった。ここを通過直後、ザザザッツという音とともにこちらに向けてスーツケース大の雪塊が落ちてきたので肝を冷やす。残雪期の山はどこを通ってもリスクがあるということか。
今晩は宿代を浮かすために檜枝岐村のミニ尾瀬公園で車中泊である。燧の湯で露天風呂を楽しんだ後は、公園周辺の美しい新緑をつまみにビールを飲んだ。暮れ行く里の景色の変化を眺めながら軽い夕食を摂る。わが愛車は後部座席を倒すと狭いながらもフルフラットになるので寝心地は悪くない。全開にしたスカイルーフから満天の星を眺めながら早めに就寝した。
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