飛龍山    2077m 埼玉・山梨県        
      


2020年6月9日(火)

 奥秩父山塊は首都圏に近いにも関わらず山が深い。二百名山の和名倉山がその典型。日帰りするには相当な長丁場で、たっぷりと汗をかかされる。都県またぎ自粛を意識して出来るだけ首都近郊、かつ和名倉山同様、歩き甲斐のありそうな山を物色していると東京都の最高峰、雲取山のすぐ隣に更に標高の高い山が目に留まった。

 それが今回歩いた飛龍山。稜線に連なる竜喰山も然り、地味な山容にしては勇まし過ぎるネーミングが印象的な山だ。色々なアプローチルートがある中で今回は稜線上のピークハントに拘り、将監峠経由としてみた。将監峠から飛龍山へはトラバース道を使い、尾根にあるピークを全て巻いてしまうのが一般的。しかし、それでは余りに単調で面白味に欠ける。

 登山道の無い尾根筋はどうなっているのだろう?山行記録を調べて見ると同好の士がいるとみえて、意外にこのバリエーションルートは歩かれているようなのだ。それなら、ある程度の踏み跡は期待できそうだし、それに藪漕ぎを強いられても都会に渦巻くコロナリスクよりずっとマシ。フィトンチッドを振りまく木々との三密や濃厚接触ならむしろ歓迎したい、、、とは言い過ぎか。

 青梅街道からの最短林道が通行止めのため、大きく迂回し犬切峠を越えて三ノ瀬へ。予定より少し遅れて登山口最寄の見晴らし荘のパーキングに到着した。早速身支度を整え、午前5時50分、車を後にする。


ここからスタート


 30分ほど歩いたところで林道を離れ、牛王院平へと向かう尾根道に入った。行き帰り同じ林道歩きでは興が無いし、多少遠回りとなっても尾根道の方が、断然景色が楽しめるからだ。


グリーンカーペットを歩く


展望も期待通り


富士山の残雪は随分と縮小


 1時間半で将監峠に到着。飛龍山へと向かうトラバース道を右手に眺めながら笹薮へと分け入った。踏み跡らしきものがすぐに出てきたので迷わず使わせてもらう。この踏み跡のおかげで藪漕ぎは免れたものの、情け容赦無く急斜面を直登しているため伸びきったアキレス腱が悲鳴を上げる。急登に耐えること小一時間で本日最初のピーク、竜喰山の頂に立った。


将監峠 将監小屋は閉じられていた


竜喰山を直登する


将監小屋が真下に


二年前に歩いた唐松尾山を展望


立派な山頂標識があった


 水分補給だけして次のマイルストーン、大常木山へと向かう。踏み跡は細々ながら続いているのでルーファイに悩むことも無い。1999mピークへの登りで私と同年配二人組の先行パーティに追いついた。このルートでは獣とはともかく人との遭遇は無いだろうとの予想は見事に外れてしまった。彼等は大常木山まで行き、大ダルからトラバース道で引き返すとのとこと。「こんなところを歩く物好きがいるのですね。お互い様ですが」と笑い合ったのだった。

 二人組に別れを告げ、先を急ぐ。尾根は次第に狭く岩峰も出てきた。不鮮明な踏み跡を追っているうちに、どうやら大常木山ピーク直下を巻いてしまったようだ。せっかくなので尾根上を戻ってみたが、山頂標識らしきものが見当たらなかった。


尾根筋には石楠花が満開


大常木山を振り返る


ツツジも


 次は愈々本命の飛龍山。さらに先へと進むと100mほど急下降し大ダルに着いた。ここでトラバース道と合流。このままトラバース道を歩くのは楽だが、それでは今回の目的が果たせない。意を決して再び笹原に分け入り、あくまで尾根筋を進む。しかし、これまでとは明らかに様子が違う。踏み跡が全く見当たらないのだ。しかも容赦なしの急斜面で両手もフル動員しての四駆登高が強いられた。トラバース道が飛龍山の山頂を直接目指さず、緩やかなミカサ尾根へと迂回している理由が納得できた。


飛龍山


踏み跡はない


 超のつく急斜面に加えて山頂が近くなるほどに石楠花の密生に阻まれるようになってきた。少しでも疎の空間を探して身体をねじ込み、枝を掴んで体を引き上げるアスレチック体操の連続だ。それでも開けない夜は無いのと同様、終わりのない登りも無い。斜度が緩んでくれば山頂間近。大ダルから1時間掛かりで、ようやく山頂に立つことが出来た。


石楠花のジャングル


目標達成!


 苦労して辿り着いた山頂は生憎樹木に囲まれ展望は無い。しかしそこから少し下った禿岩は一級の展望台。秩父の山々や今日歩いてきた尾根を振り返り感慨を新たにすることが出来た。


山頂付近は石楠花の群生地


石楠花のトンネルもある


禿岩から歩いてきた道程を振り返る 右奥は和名倉山


トラバース道はお気楽と思ったら、、、


こんなところもあり気が抜けない


 帰路は安直にトラバース道を辿った。しかし後は消化試合、気楽に流せると思っていたら大間違い。細かなアップダウンが続く上、トラバース道の宿命か、沢を横切る箇所が二ヵ所で大崩落しており高巻きを強いられ、ここでも汗を絞られた。将監小屋からは今度こそ鼻歌交じりのお気楽な林道歩きで、午後2時30分、三ノ瀬に無事帰着した。


行動時間 8時間40分



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