2015年6月10日(水)
大天井岳と常念岳というメジャーな山を結ぶ縦走路にありながら、登山道は何故か山頂を避けているので気がつかなければ通り過ぎてしまう不遇な山がある。それが今回ターゲットにした東天井岳と横通岳。これらは痩せても枯れても日本百高山にランクされる立派な高山。頂きに足跡を残さない手はないのだ。
いつものように深夜に自宅を出発。眠い目をこすりながら中央道をひた走り、午前4時に一の沢に到着。広い登山者用駐車場に車をとめると、他には関西ナンバーの車が1台だけと寂しいものだ。
身支度を整え、まだ薄暗い4時20分に車を後にした。暫くは林道歩き。今日はさぞかし静かな山歩きになりそうだと思いきや、何のことはない、ヒエ平までの道路脇に10台ほどの車があった。そこから歩きだした長身の若者が一人。彼とは抜きつ抜かれつしながら常念乗越まで行動を共にすることになる。
新緑が美しい(下山時撮影) 一の沢の様子(同左)
前日の雨のせいか、白濁するほど水量の多い一ノ沢の流れを左に見ながら石だらけの道を登って行く。エボシ沢、笹原沢を過ぎると遥かな高みに常念岳の稜線が見えてきた。青空をバックに残雪と新緑のコントラストが美しい。振り返れば近隣の山々は雲海に浮かび、かいた汗に見合うだけ高度を上げてきたことがわかる。
素晴らしい新緑と残雪のコントラスト
胸突き八丁の手前、約100mは雪渓歩き。そのまま雪渓を詰めるトレースも残されていた。その方が楽そうだが、ピッケル、アイゼン無しでは途中で進退窮まるかもと無難な夏道を行くことにする。
雪渓上を先行する若者
胸突き八丁から夏道に 下界には雲海が広がっている
登れそうだが落石多数 薄くなり危なっかしい雪渓を渡る
最終水場からはジグザグの急坂。ベンチを三つ数え、斜度が緩むと程なくして常念乗越に出た。目隠しが外されたかのように、槍穂高の屏風絵が目の前に広がる様は圧巻。毎度ながら涙がでるほど感激させられる展開だ。
常念乗越 槍穂がお出迎え
小休止の後、常念岳に背を向けて横通岳へと向かう。乗越から見えるピークは二つ。手前のピークへは高度差200mほどの急な登りだ。そろそろ疲れの出て来た足には堪える。登り切った最初のピークから観察すると、左を巻く縦走路から分岐して横通岳山頂へと向かう薄い踏み跡がついている。この分岐から山頂へ向かうと、ものの15分で山頂に到着。かくして日本で72番目の百高山ピークハントはあっけなく終わった。
右手のピークが横通岳
薄い踏み跡を登る 山頂にはこれだけ
風が冷たいので余り長居はしていられない。証拠写真を撮った後は早々に次の目的地へと向かう。踏み跡はあるような無いようなで頼りない。植生を傷めないように岩の上を選んで慎重に歩き、縦走路へと復帰した。
頭を覗かせる大天井岳、その手前のポコが東天井岳
この先、地図上では殆どフラットと思えた縦走路は意に反してだらだらと100mも下っていく。ボトムから今度は150mの登り。東天井岳は、どこが頂きかわからないような縦走路上の瘤のようなものだった。踏み跡も見当たらないので、適当なガレ場から雪渓を登って山頂へアプローチした。最後はハイマツを少々漕いで山頂に立つ。それとわかる標識は何もないので、念のためGPSで現在地を確認しておく。間違いなくここは東天井岳の山頂だ。これで日本標高ランキング58番目の高山をゲットできた。
右のピークが東天井岳 このガレ場から雪渓を登り山頂へ
目の前には存在感たっぷりの大天井岳。かつて一度だけ訪れたことがあるが、その時はガスで全く景色は楽しめなかった。遠望する限りアップダウンはそれほど無さそうだし、この際、寄り道してみようかという気になりかけたが、、、往復3時間を越えるという標準CTを見て思いとどまった。
東天井岳より大天井岳を望む
下山を始めようとすると、何と登って来た雪渓の反対側には、明瞭な踏み跡が縦走路までずっと続いているではないか。どうやら私は少々手前をショートカットしてしまったようだ。鞍部に下り、名残惜しく大天井岳に別れを告げる。
文句無しの大パノラマ
天気良すぎて雷鳥おらず 代わりにこれ 涸沢ではまだ山スキーが楽しめそう。。。
既に天候のパターンは夏山モードに入っているのか、午前10時を境に少し天気が変化してきたようだ。安曇野側からガスがどんどん湧いてきて、常念岳が見え隠れしている。
下り坂の天気に背を押されたのか、水分補給で立ち止まる他は休むこともなく一気呵成に下り続け、午後1時55分に駐車場に無事帰着した。足腰など身体のいずれかのパーツの故障が当たり前になってしまった昨今、久々に9時間を越える苦行だったが、梅雨の晴れ間に気持ちの良い山歩きを楽しめた。
行動時間 9時間35分
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