2016年4月26日(火)
白馬鑓には昨年も同じ時期に登っている。その時は体調が思わしくなく、いつになくヘロヘロのバテバテ、さらに滑降中ツリーホールに落下して手酷い打撲傷を負うという無念の結末だった。私のホームページの表紙を飾る山の絵は大雪渓から見上げた杓子岳なのに、その隣の白馬鑓に対しては、そんなことでネガティブなイメージしか思い浮かばない。こうした忌まわしき記憶は上書きして消し去るしかないと、今回改めて同じコースを辿ることにした。
まだ夜の明けやらぬ午前4時半に猿倉に到着。身支度を整えていると群馬ナンバーの単独女性が一足先に出発していった。ひょっとしてと声を掛けると案の定、ヤマレコでレポをよく目にさせて頂いているJunpieさんだった。きびきびといかにも活動的な方。今日は大雪渓に向かわれるそうだ。
駐車場にはまだ雪がある 鑓温泉への登山口
5時ちょうど、猿倉荘に登山届けを提出。部分的に残る雪を踏みしめシートラーゲンを開始する。大雪渓との分岐から20分ほど登ったところで完全に雪が繋がったのでシールに替えた。右手に小蓮華山、正面に杓子岳の雄大な景色を眺めながらの雪原ハイク。体調は上々、気分は最高だ。
ここからシール登行 杓子岳が見えてきた
金山沢の様子 下部はかなり黒くなっている
杓子岳
デブリだらけの雪原を越え、尾根を回り込むように左右にドッグレックした急坂に一汗かいたところで小日向のコルに着いた。ここでシールオフし湯ノ入沢まで約200mの高度差を滑り降りる。酷い縦溝に加え、朝の冷え込みでまだ日の差さない斜面はガリガリだ。板の振動で足の裏がむず痒くなってくる。
小日向のコルへと登る その手前はデブリランド
小日向のコルから白鑓
湯ノ入沢源頭へ滑降するが、、、 最下降点で土手が遮る
最下降点では雪が繋がっておらず、スキーを手に遮っている土手を乗り越えた。再びシール登行を継続。気温上昇とともに程よく雪が緩み、シールがよく効いてくれる。
ここからシール登行再開
中々近づいてこない鑓温泉を恨めし気に眺めながら歩いていると、単独スキーヤーがゆっくり滑り降りてくる姿が見えた。聞けば白馬大雪渓から周回し、昨夜は鑓温泉にテントを張ったそうだ。貸し切り温泉付とは何と贅沢な。。。
鑓温泉泊まりのスキーヤーとすれ違う
8時10分、鑓温泉に到着。残る高度差は900m。前回はこの辺りから足が上がらなくなったので、しっかりエネルギー補給をしておく。15分休んで登行再開。帰路滑降予定の斜面をよく観察しながらシール登行する。
鑓温泉の湯 登行を続ける
雪面は標高2000mを越えても適度に緩み、シールのジグザグ登行で対処できるのでアイゼンの出番は無い。給水以外は休まずに歩を進め、稜線に到着。山頂方面を展望すると昨年同様、富山側は大きく地肌が見えている。山頂へ至る登山道もほぼ露出しているようだ。
稜線までもう一息
富山側の残雪は少ない
ここからはスキーを背にシートラで山頂を目指した。穏やかな日とは言え、流石は3000m近い高山。時折吹き付ける強い西風にスキーが振られるので慎重に歩を運ぶ。
ライチョウがお出迎え 山頂到着
11時35分、1年ぶりの白馬鑓ヶ岳山頂に立った。本日一番乗りと思っていたが、そうではなかった。山頂には真新しいシュプールが一本。その行先を追うと、どうやら杓子沢へ滑り込んだらしい。
杓子沢はきれいなもの
寡雪の年とは言え、標高の高い山頂付近での残雪は昨年より豊富のようだ。山頂から俯瞰する限り、杓子沢、中央ルンゼともに雪のつき方は昨年より随分と多い。滑降予定の東面カールも、昨年は山頂から50mほど標高を下げねばならなかったが、今年は山頂直下からドロップ可能だった。
白馬岳が立派
清水谷も宿題の一つ
12時5分滑降開始。中央ルンゼを左に見ながら際を慎重に滑り降り、東面カールのドロップポイントへ移動する。いざ滑り出すと申し分の無い上等ザラメ。気持ちよく小回りを繰り返して大出原へと滑り込んだ。
中央ルンゼの際からドロップッポイントへ
東面カールの右端(下から見て)を滑り降りた
残念ながら高級氷菓子もすぐに賞味期限切れ。標高が2500mを切るとザクザクの重雪となり、スキーの取り回しが重く余り快適とは言えない状態となった。
クレバスと散乱する落石に気を付けながら滑降を続け、滑降開始から30分ほどで鑓温泉に帰着。そこには先客のスキーヤーが二人いた。聞けばハイクアップはここで打ち止めとのこと、どうやらスキーは二の次で温泉目当てのようだ。
文句なしのゴージャスな露天風呂
鑓温泉で30分ほど休憩し、足湯で疲れを癒す。ゆでタコの様に真っ赤になった足をブーツに押し込んで滑降再開。重い雪も、慣れてくればそれなりに楽しい。
朝には無かったブロックがあちこちに 同左
湯ノ入沢源頭まで下ってから小日向のコルへの登り返し。本日3回目のシール登行だ。約200m標高を上げ、滑降を続ける。猿倉へと続く尾根は下るほどに藪が凄まじい。昨年のように怪我はしたくないので、潔くスキーを脱ぎシートラで下山することにした。
午後2時50分、猿倉に帰着。前回難儀したのが嘘のように、疲労困憊することもなく至極快適に春山スキーを楽しめた。かくして忌まわしきトラウマはもくろみ通りきれいに上塗りされ、消え去ったのだった。メデタシメデタシ。
行動時間 9時間50分
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