権現岳  長野・山梨県 2715m       
   

2020年4月3日(金)

 新型コロナの影響で私の身の回りでは「ソーシャル・ディスタンシング」が具体的な形になって表れてきている。行きつけのジム通い自粛、ゴルフや飲食の付き合い自粛、離れて住む子供達や孫との接触自粛等々、何とも味気ない日々。愈々残された唯一の楽しみは山歩きだけということになる。お上から不要不急の外出を止められても、これだけは自粛できそうにない。

 かくして好天が約束されたこの日、久しぶりに春の権現岳を歩くことにした。先週西丹沢から眺めて感動した八ヶ岳が無意識下で手招きしたのかも知れない。

 まだ夜の明けやらぬ午前4時30分、天女山入口に到着。路肩の空きスペースに駐車する。この時期天女山駐車場へと通じる県道はまだオープンしていないためだ。さっさと朝食と支度を済ませ5時きっかりにハイクアップをスタートする。

 天女山への標高差150mは身体機能チェックには丁度良いウォーミングアップ。体調は申し分ないし、体も程よく暖まった。登山道は霜柱でふかふかの絨毯。周囲の木々は朝日を浴びて茜色に染まりだした。やはり山は最高の癒し。自粛ストレスから解放されていることがふつふつと実感できるのだ。


朝日に染まる権現岳への道


 前三ッ頭への登りに差し掛かると一段と積雪量が増してきた。新雪が以前のトレースを全てリセットしてくれている。スキーに限らずファーストトラックは何とも心地良いものだ。その一方でアイスの上の新雪なのでスリップ多発。たまりかねてまだ早いとは思ったがアイゼンを装着した。


雪が出てきた 前日降ったらしい




中央アルプスと御嶽山



三ッ頭



ファーストトラックは楽しい


 前三ッ頭のピークに立つと、目の前には主峰赤岳を筆頭に南八ツのお歴々がいきなり登場する。辛い登りの苦労が報われる瞬間だ。暫くはこの大パノラマを眺めながらの稜線漫歩。一旦鞍部の樹林帯まで下りて最後の登りにかかる。ずっと続けている足首ラッセルがじわじわとボディブロー、それに鬼門の標高2500mを越えたことも手伝って足取りが重い。


赤岳と阿弥陀岳



権現岳



編笠山 乗鞍岳や北アルプスも遠望



スキーが楽しめそう



トラバース開始


 愈々本日一番の難所、急斜面のトラバースに差し掛かる。ヤマレコの記録を見る限り、最近同じところで何人も滑落している。気を引き締め、ピッケルとシングルウイペットの二刀流でトラバース開始。

 雪面を何度も蹴り込んで足場を慎重に作るが、陽当たりが良いせいか雪がグズグズに緩み過ぎて頼りない。それでも道を何とか開通させ、最後はややオーバーハング気味の灌木を攀じ登ってクリアした。

 そこに居合わせたのは、追いついてきた中高年の単独氏。彼は私の苦闘を目の当たりにして戦意を喪失したらしい。前進を諦めて引き返していった。


後続の方はトラバースを断念


 10時20分、狭い権現岳の頂に立った。正確には山頂にそそり立つ岩峰に寄り掛かったというべきか。風が冷たいし、先程のトラバースが気になり山頂で寛ぐ気分にはならない。水分補給だけしてすぐに下山を開始することにした。


権現岳山頂から赤岳を望む



同ギボシ


 山頂直下の氷化した急斜面は安全を期してクライムダウン。トラバース地点まで戻ったところで攻略方法を思案する。登りと同じ方法では、見えない足場を探りながら体を宙に乗り出すことになる。これはかなりリスキーなので却下。上部からクライムダウンすることも考えたが余りにも雪が緩み過ぎ、確保が不安なのでこの方法も断念。結局一旦ダテカンバ伝いに少し下ってからトラバースすることにした。


トラバースを無事終えてやれやれ


 緩んだ雪面にピッケルの石突きを根元まで打ち込んでホールドを確保。足場が崩れないかヒヤヒヤしながら渡り切り、やっと緊張から解放された。雪が固すぎても緩み過ぎても、この時期のピークハントはやっかいだ。


いつの間にか空は高曇り



長い道程を無心に下る 正面は秩父連山


 後は往路を戻るだけ。途中単独氏2名、カップル一組の4人と行き会った。更なる昇温下、彼等は無事山頂を極めることができただろうか。高曇りとなり景色も精彩を欠いてきたため、脇目も振らず黙々と下山。2時20分に無事車に帰着した。


行動時間 9時間20分


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