2019年5月17日(土)
富士山頂からの滑走は2012年に始めて以来、怪我で断念した2015年を除いて毎年続けており、今や年中行事。身に着いた習慣はそう簡単には変えられない。そんな訳で、立山が今シーズンのフィナーレなどと言った舌の根が乾かないうちに、富士山に向かうことになった。例年定番は吉田大沢。しかし一週間前に遭難事故があったため見送り、3年ぶりに須走からスタートする。
午前5時5分、スキーとブーツを背負い、駐車場を後にした。標高が2300mを越える富士宮口や吉田口では富士山を目前に仰ぎ見るが、標高1950mの須走口から見る富士山はミニチュアサイズだ。つまりそれだけ遠いということ。
モルゲンロートに染まる富士山
前回、雪不足で崩れやすい足元にえらく苦労した下山道を敬遠し、今回は夏道からハイクアップする。森を散策するような登山道で気持ちが良い。小一時間ほど歩くと窪みに雪が繋がりだした。
夏道を行く
30分も歩かないうちに雪が出てきた
山頂部にかかった雲は次第に晴れてきた
標高2400m地点で、履いてきた軽登山靴を兼用靴に替える。ここからシール登高。軽登山靴は状況次第では同じところに下山するとは限らないので、デポせず担いでいくことにする。
この雪渓からシール登高
一時間ハイクアップすると雪が途切れてしまった。しかたなく板を背に暫く夏道を行くが、歩き辛い上、踏み抜き多発で音を上げる。本六合辺りで夏道に見切りをつけ、ガレ場をトラバースし雪渓に降り立った。
藪でシールを断念 夏道にエスケープ
長田山荘?
溶岩の夏道は兼用靴の敵
再びシール登高再開。七合目を過ぎると一段と斜度が増してきたのでクトーを装着し、繰り返しジグを切りながら広大な白い斜面を登って行く。
やっと大雪原へ
山頂はまだ遥か彼方
いつの間にか雲海の上に
九合目が目前に迫ってくる頃になると登頂を済ませた登山者が尻セードで降りてきた。かなり緩んだ雪面でスピードが出ないので安心して見ていられる。昨年目撃したスキーヤーの滑落シーンが瞼に焼き付いているので、そのリプレイは見たくない。
もう一息
山頂直下の狛犬 左の片割れは?
何処の山もそうだが、特に富士山は山頂が見えてからが遠い。九合目を過ぎてからの富士山は、低酸素状態での心肺機能が試されるからだろうか。吉田口から登ってきた登山者も何度も立ち止まり息を整えている。
それでも亀の歩みでも前進し続けていればいつか高みに着けるもの。11時40分、外輪山山頂に到着。所要時間6時間35分。3年前よりも20分余計にかかっているのは老化の証。それでも、頭痛やふらつきなど高度障害は現れていないので良しとしよう。
御釜に落ちるシュプール
山頂にいた登山者と山談義しながら滑降の準備を行う。微風、ポカポカ陽気の山頂だが、空気が薄いので長居は無用。12時20分、登山者に別れを告げ滑降を開始する。
須走下山道入口 ここからドロップイン
少し御殿場方面へトラバース
至高のフィルムクラスト
少し下ると極上ザラメ
こんなスロープが延々と続く
雪面は最近の降雪ですっかりコーティングされて真っ白、しかもすべすべ美肌。それが適度に緩んだフィルムクラストと化しているのだ。ターンの都度、削り取られた薄氷がザァーザァーと音を立てて追いかけてくる。
至高のフィルムクラストが終わると、今度は極上ザラメだ。しかも広大なスロープは貸し切り状態。これほどの好条件は富士山では初めてかも知れない。
休み休み滑降してもスキーは早い。30分ほどで標高差1000mを滑り降りてしまった。流石に雪面は荒れ始め、凸凹で色も黒ずんできた。雲海に突入したため視界も不良。GPSでこまめに現在地を確認しながら滑降を続ける。
雲海のガスに飲み込まれる
雪渓がいくつにも分岐し始めたが、視界が無いので最良のルートを選ぶことが出来ない。夏道の下山道を外さないようにスキーを継続。雪切れで隣の雪渓まで歩いて乗り換えたりしながらの殆ど藪スキー状態。標高2370mまで頑張ったが、藪と雪切れに阻まれ、そこが終点となった。再び軽登山靴に履き替えシートラで下山。30分ほど砂走状態の夏道を下って駐車場に帰着した。
そろそろ終盤 ここはスキーのまま突破
ここでギブアップ 降りてきた雪渓を振り返る
大満足の富士山滑降で、今度こそ板納め。これで心残りなく解脱出来た。石を踏みまくった板も良い雪に恵まれ成仏できそう。。。
行動時間 9時間5分
使用Gear Dynafit Cho Oyu / Scarpa F1 Tr
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