富士山BC    3776m 山梨・静岡県        百名山
      

2017年6月3日(土)

 富士山は今回で18回目を数える。いい加減飽きても良さそうなものだが、毎年この時期になるとつい足が向いてしまう。やはり山スキーの〆は、日本最高峰の富士山に限るのだ。

 午前5時、富士スバルライン終点の5合目に到着。群馬から駆けつけてくれたKさんと共に雪の緩む時間に合わせてゆっくりと支度。三々五々歩き出した登山者やスキーヤーに交じり車を後にした。時刻は6時ちょうど。足元は火山礫の長い歩きに備えて軽登山靴だ。


 厳重に封鎖されたゲートを越え、富士精進線をだらだらと下って行く。空は青く澄み切り、眼下には勾玉のような河口湖が朝日に輝いている。二つ目のゲートを突破すると、愈々登山道。落石の防護壁を縫うようにして高度を上げて行く。


ゲートに向かう私



要塞のような落石防護壁



雪渓末端 ここまで滑降



吉田大沢下部


 7合目辺りで先行していたカップルをキャッチアップした。彼等は太板を背に兼用靴といういで立ち。ただでさえ苦しい富士登山、重荷に加え、歩行に難のある兼用靴とは。。。私にはとても真似出来そうにない。


幾重にも連なる防護壁


 砂礫の歩き易い道から岩場の急登になると、ここまで快調だったKさんに異変。明らかにペースが落ちてきた。標高は大気中の酸素分圧が平地の2/3となる標高3000m。他の山域でもそうだが、やはりこの辺り、高所が苦手のKさんにとって鬼門になるようだ。

 七合三勺から登山道に雪が現れてきた。出来るだけ雪道を避ける作戦で、ここからブル道に転進。須走り口登山道までジグザグに登る。高度馴化に苦しむKさんは、更にペースダウン。マイペースで歩いているうちに、いつしか離れ離れになってしまった。


ブル道を歩く私



須走りルートから吉田ルートを眺める


 相前後して歩いていた登山者達は、申し合わせたように皆アイゼンを装着し始めた。私もそろそろ観念して兼用靴+アイゼンに替えねばと思いつつも、億劫なので軽登山靴のままで登り続ける。


すっかり雪道になったが、キックステップで頑張る



前を行く登山者達


 高度が上がると共に強風が吹き荒れるようになった。板が風に煽られるので、バランスを崩さないよう突風の度、耐風姿勢をとって踏ん張らねばならない。これも一つの体力消耗要因になった。


キックステップはそろそろ限界


 九合目を過ぎると、表面は緩んでいてもすぐ下はカチンコチンのアイスとなり滑りまくる。愈々キックステップも限界だ。仕方ないので雪のついていない岩場を拾いながら直登。結局最後まで横着を決め込み、ノーアイゼンで浅間大社に登り上げた。時刻は11時30分。要した時間は5時間30分。


山頂までもう一息



やっと山頂到着



剣ヶ峰


 Kさんの到着を待つ間にカロリーを補給し、兼用靴に履き替えておく。ところが待てど暮らせどKさんが現れない。心配になって電話すると、酸欠に苦しみまだ九合目辺りとのこと。寒風吹きすさぶ中で待つこと1時間20分。いつもペアを組んで頂いているKさんには誠に申し訳ないが、帰宅後所要のある私はタイムアップ。一足先に下山させてもらうことにした。


後続が続々と来るが、その中にKさんの姿が無い


 標高3756mの白山岳の山頂に移動し、山頂直下に伸びる雪渓でスキーを履いた。午後1時5分、今シーズン最後となる滑降を開始する。多少凸凹はあるものの、完璧なフィルムクラスト。気持ち良くシュプールを刻める。


白山岳(左手)に向かう



白山岳山頂にある何かの観測機



山頂直下の雪渓 ここからドロップイン



自分のシュプールを振り返る



吉田大沢の広大なスロープ


 しかし、快適だったのはほんの一時。標高3500mを切ると濃いガスに包まれるようになった。面ツルの快適なザラメになのに残念だ。一瞬の晴れ間をついて更に150mほど滑降すると再び視界不良となった。5分ほど待っても視界が回復しないのに痺れを切らし、手探り、足探りで滑降を続行する。

 やがて縦縞が深くなり試練の滑りに。更に下降すると辺り一面に落石が散乱、石の間を縫うように降りていくが、落石の密度は増すばかり。板を傷つける位は、もとより覚悟の上だが、これは酷すぎる。白旗を上げ、この地雷原はスキーを背負って降りた。しばらく歩くと落石が落ち着いてきたので再びスキーを履いた。


地雷原を下降


 標高2760mで雪渓の末端まで来たところでスキーは終了。山頂からちょうど1000m滑り降りたことになる。折しもKさんから無事登頂との連絡が入りホッとした。


雪渓末端まで滑って終了


 ここで軽登山靴に換装、スキーとブーツを背負い、往路を辿って観光客で溢れる富士スバルラインの五合目へと戻った。3時10分に駐車場に帰着。

 シーズン中28日間楽しんだ山スキーに、今度こそ心置きなく幕を引くことが出来た。申し訳なかったのは最後までご一緒できなかったKさん。これに懲りず来シーズンも宜しくお願いします。


行動時間  9時間15分


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